テレワークの普及によって働く場所の選択肢が広がる一方、近年はオフィスへの出社回帰を進める企業も見られます。そこで重要になる指標が「出社率」です。
本記事では、出社率の意味や計算方法、企業における出社率の実態を解説します。出社率を把握するメリットや、自社に適した水準を考えるポイント、位置情報データを活用した可視化についても紹介します。

出社率の意味と計算方法

出社率を働き方やオフィス運営の改善に活かすためには、まず言葉の意味と計算条件を正しく理解する必要があります。
ここでは、基本的な計算式に加え、混同しやすい指標との違いも整理していきます。
出社対象者に占めるオフィス出社人数の割合
出社率とは、一定の期間や時点において、出社対象となる従業員のうち、実際にオフィスへ出社した人の割合です。「本日の出社率」「営業部の月間出社率」のように、対象期間や組織を決めて算出します。
ただし、統一された計算基準はありません。休暇、出張、外勤などの従業員を母数に含めるかでも数値は変わります。複数の拠点や部署を比較する場合は、「誰を対象者とするか」「いつ出社と判定するか」といった社内ルールの統一が必要です。
出社率の計算式と具体的な計算例
一般的な出社率の計算式は、次のとおりです。
出社率(%)=実際に出社した人数÷出社対象となる人数×100
たとえば、出社対象者が200人で、そのうち120人がオフィスへ出社した場合は、「120人÷200人×100=60%」となり、出社率は60%です。
月間出社率は、期間中の延べ出社人数を延べ出社対象者数で割って求められます。20営業日の延べ対象者数が4,000人、延べ出社人数が2,400人なら60%です。
全社平均だけでなく、曜日・部署・拠点・時間帯別の数値も確認しましょう。同じ平均値でも、出社が均等な場合と特定日に集中する場合では、オフィスの課題が異なります。
出社率・在席率・座席稼働率・テレワーク率の違い
在席率は、特定の時点でオフィス内にいる人の割合です。出社後に外出する従業員もいるため、出社率とは一致しない場合があります。
座席稼働率は用意した座席の利用割合、テレワーク率は対象者のうちテレワークを行った人の割合です。休暇や外勤もあるため、「出社率60%ならテレワーク率40%」とは限りません。目的に応じて複数の指標を組み合わせましょう。
企業における出社率の実態と出社回帰の背景

コロナ禍をきっかけにテレワークが普及しましたが、近年は出社機会を増やす企業も現れています。ただし、すべての企業が完全出社へ戻っているわけではなく、出社とテレワークを併用する動きも定着しています。
コロナ禍を契機としたテレワークの普及と出社率の変化
コロナ禍以前は毎日のオフィス出社が一般的でした。しかし、感染拡大防止を目的にテレワークが急速に導入され、出社率は一時的に大きく低下しました。
その後は出社率が回復する一方、通勤負担の軽減や育児・介護との両立といったテレワークの利点も定着しました。そのため、出社とテレワークを業務に応じて使い分ける企業も少なくありません。
業種・企業規模・地域によって異なる出社率の実態
出社率は業種や職種によって異なります。製造、医療、物流、小売など、設備操作や対面対応が必要な仕事では高くなりやすく、情報通信や企画などではテレワークを取り入れやすい傾向があります。
企業規模や地域、通勤時間、取引先との関係なども出社頻度を左右します。平均値をそのまま自社の基準にせず、業務特性や従業員構成を踏まえて判断しましょう。
企業が出社回帰を進める主な理由
出社回帰の背景には、対面コミュニケーションの再評価があります。Web会議やチャットは効率的ですが、雑談から得られる情報や非言語情報、偶発的な交流まで代替できるわけではありません。
新入社員の育成や組織文化の継承も理由の一つです。日本生産性本部の「第17回 働く人の意識調査」では、2025年7月のテレワーク実施率は16.8%でした。出社率そのものではありませんが、対面勤務の広がりを捉える参考になります。
企業の出社方針と従業員が望む働き方のギャップ
企業が交流や人材育成を重視する一方、従業員は必ずしも毎日の出社を望んでいません。通勤負担の軽減や育児・介護との両立など、理由はさまざまです。
国土交通省の「令和6年度テレワーク人口実態調査」でも、継続意向のある雇用型テレワーカーの多くが出社との併用を希望しています。業務の目的と従業員の希望をすり合わせる必要があります。

出社率を把握するメリットと企業経営への活用方法

出社率は、従業員を管理するためだけの数値ではありません。オフィスコストの見直しや、働きやすい環境づくり、ハイブリッドワーク制度の改善など、経営判断に活用できる指標です。
オフィスの広さと座席数の適正化
出社人数に対して座席数が多すぎる場合、使われていないスペースにも賃料や光熱費、維持管理費がかかります。反対に、座席が少なすぎると、出社しても席を確保できず、従業員の生産性や満足度が下がる可能性があります。
平均出社率に加えて、ピーク時の出社人数や座席稼働率を把握すれば、必要な座席数を検討しやすくなります。固定席の一部をフリーアドレスへ変更する、利用率の低いエリアを打ち合わせスペースへ転換するなど、実態に合ったレイアウト改善にもつなげられます。移転や増床、縮小といった大きな投資判断においても、出社率は有効な基礎データになります。
曜日・部署ごとの混雑と出社の偏りの把握
月間の平均出社率だけでは、日々の混雑状況は分かりません。たとえば平均出社率が60%でも、火曜日と木曜日には90%近くまで上がり、ほかの曜日は空席が目立つケースがあります。また、営業部は出社が少なく、開発部は特定エリアに集中するなど、部署ごとの違いも考えられます。
曜日・部署・時間帯・エリア別に出社状況を分析すれば、混雑の原因を具体的に把握できます。出社推奨日を分散させる、利用が集中する場所の座席を増やす、空いているスペースへ誘導するといった改善策を検討できるため、同じオフィス面積でも快適性を高められます。
ハイブリッドワーク制度の見直し
ハイブリッドワークでは、「週2日出社」といった回数だけでなく、出社によってどのような業務や交流が生まれたかを確認することが大切です。部署内の情報共有を目的とするなら、メンバーの出社日がそろっているかも重要になります。出社率が高くても、関係する社員同士の出社日が異なれば、期待した効果を得られない可能性があります。
実際の出社率と従業員アンケート、業務成果などを組み合わせれば、制度の課題を多角的に検証できます。全社一律のルールではなく、職種や業務内容に応じて出社頻度を設計するなど、柔軟な見直しにも役立ちます。
適正な出社率を実現するためのポイント

出社率は、高ければ高いほどよいとは限りません。自社が出社に期待する効果を明確にし、従業員の働きやすさと両立できる水準を探る必要があります。
自社にとって適正な出社率の定義
すべての企業に共通する「理想の出社率」はありません。顧客対応や専用設備の利用が必要な業務では高い出社率が求められる一方、個人で集中する業務が中心なら、テレワークを組み合わせたほうが効率的な場合もあります。
まずは「部署間の連携」「若手社員の育成」「オフィスコストの適正化」など、把握の目的を定め、部署・職種ごとに必要な出社機会を考えます。数値の達成自体を目的にせず、業務成果の改善につながっているか確認しましょう。
出社の目的とメリットの社内共有
従業員に十分な説明がないまま出社日数だけを増やすと、「テレワークでもできる仕事のために出社させられている」という不満につながりかねません。出社回帰を進める際は、対面で行いたい業務や、出社によって得たい効果を具体的に伝える必要があります。
「毎週水曜日は企画会議と交流の日にする」など、出社日の目的を明確にします。アンケートやヒアリングも実施し、通勤負担や家庭事情を踏まえて調整すれば、納得感を高めやすくなります。
従業員が出社したくなるオフィス環境の整備
出社する価値を高めるには、業務の内容に合わせて働く場所を選べる環境づくりが重要です。一人で集中するための席、Web会議用の個室、チームで議論できるスペース、気軽な会話が生まれる休憩エリアなど、複数の選択肢を用意します。
出社しても席や会議室を確保できなければ、満足度は下がります。予約や空席情報を活用し、必要な場所を利用できる環境を整えましょう。オフィスを対話や学習、共創の場として設計する視点も必要です。
曜日・部署・時間帯別の分析と継続的な改善
出社率は、組織変更、繁忙期、採用、オフィス移転などによって変化します。一度計測して終わりにせず、月次や四半期ごとに推移を確認することが大切です。全社平均だけでなく、曜日・部署・時間帯・エリア別に分析すれば、平均値の背後にある混雑や偏りを発見できます。
施策後は出社率や座席稼働率、従業員満足度を確認し、効果が不十分なら出社ルールやレイアウトを見直します。「分析・改善・検証」を繰り返すことが重要です。

出社率の正確な把握と位置情報データによる可視化

出社率をオフィス改善に活かすには、継続的にデータを収集し、部署やエリアごとの傾向まで分析できる仕組みが必要です。代表的な把握方法と、位置情報データの活用について解説します。
アンケートや入退館記録だけでは捉えにくいオフィスの実態
出社状況は、自己申告、アンケート、勤怠システム、入退館記録などで把握できます。ただし、毎日の回答や集計には負担がかかり、回答漏れによって実態とずれる可能性もあります。
入退館記録だけでは、利用したフロアやエリア、滞在時間まで分からない場合があります。オフィス改善には、入館人数だけでなく人とスペースの動きも捉えることが重要です。
位置情報データによる出社人数とオフィス内行動の可視化
ビーコンやセンサーの位置情報データを活用すると、出社状況を継続的に記録し、曜日・時間帯・部署・エリアごとの利用傾向を把握できます。
特定エリアへの集中や利用されていないスペースも発見しやすくなります。出社率と稼働状況を組み合わせれば、座席数の調整、レイアウト変更、出社日の分散につなげられます。
取得目的や範囲、閲覧権限を従業員へ説明し、個人の監視ではなく環境づくりに利用することを明確にするなど、プライバシーに配慮した運用も欠かせません。
Beacapp Hereによる出社状況とスペース利用の可視化
Beacapp Hereは、ビーコンとスマートフォンまたは受信機などを使い、オフィス内の人やモノの所在地を可視化するサービスです。リアルタイムの居場所確認に加え、検知ログを利用状況の分析に活用できます。
「Beacapp Here Pro」では、検知情報をダッシュボードでグラフ化し、日付・部署単位などで分析できます。社員の利用割合やオフィスの稼働率を可視化し、出社傾向や混雑エリアの把握に役立てられます。
スペース予約機能「ホテリング」を使えば、座席予約と出社状況の確認を組み合わせられます。位置検知は機器を設置した施設内に限られ、現在地の一時的な非表示や公開範囲の制限にも対応しています。
実際の利用データに基づくことで、オフィスコストと従業員の働きやすさを両立した改善を進めやすくなります。

まとめ
出社率は、出社対象者のうち実際にオフィスへ出社した人の割合です。重要なのは、単に出社率を高めることではなく、自社の業務や従業員に適した水準を見極めることです。全社平均だけでなく、曜日・部署・時間帯・エリア別の利用状況を継続的に確認しましょう。Beacapp Hereを活用すれば、出社状況やスペース利用を可視化し、データに基づくオフィス運営の改善につなげられます。
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