大規模な地震が発生すると、鉄道やバスなどの公共交通機関が運行を停止し、勤務先や外出先から自宅へ帰れなくなる可能性があります。特に多くの人が働く都市部では、大量の帰宅困難者が一斉に移動することで、駅や道路の混雑、転倒事故、火災や落下物による被害などが拡大するおそれがあります。
また、道路が人で埋まれば、救急車や消防車の通行、救援物資の輸送を妨げる可能性もあります。
帰宅困難者対策では、災害が起きてから対応を考えるのではなく、企業と従業員が平常時から行動ルールや連絡手段を共有しておくことが重要です。
本記事では、帰宅困難者の定義や発生原因、災害時に取るべき行動、企業に求められる備蓄やBCP対策について解説します。

帰宅困難者とは?

帰宅困難者とは、地震などの災害によって公共交通機関が停止し、勤務先や学校、買い物先などから自宅へ帰ることが難しくなった人を指します。単に電車が遅れている人ではなく、交通手段を失い、安全に徒歩で帰宅することも困難な状態にある人を意味します。
災害発生時は、帰宅を急ぐのではなく、安全な場所にとどまることが基本です。
帰宅困難者の定義と帰宅困難になる人の特徴
帰宅困難者について全国一律の距離による定義が設けられているわけではありませんが、一般的には、災害時に外出している人のうち、公共交通機関の停止によって徒歩で帰宅することが難しい人を指します。
帰宅困難になる可能性は、勤務先や学校から自宅までの距離だけで決まるものではありません。長距離通勤者に加え、高齢者、障害のある人、妊産婦、乳幼児を連れている人、持病やけががある人などは、比較的短い距離でも徒歩での移動が難しい場合があります。
道路の損壊や火災、天候、混雑、履いている靴なども帰宅の可否に影響します。
大規模地震で帰宅困難者が発生する原因
大規模地震が発生すると、線路や駅舎、道路、電気設備などに被害がなくても、安全確認のために鉄道やバスが長時間停止することがあります。運転再開の見通しが立たなければ、通勤や通学、出張、買い物などで外出していた多くの人が移動手段を失います。さらに、停電や通信障害が重なると、運行状況や被害情報を確認できず、どこで待機すべきか判断しにくくなります。
首都圏のように鉄道利用者と昼間人口が多い地域では、一つの路線の停止がほかの路線や駅周辺にも影響します。帰宅困難者は長距離通勤者だけでなく、旅行者や土地勘のない出張者などにも発生するため、企業は外出中や休日の発災も想定する必要があります。
一斉帰宅によって起こる混雑や二次災害のリスク
災害直後に多くの人が一斉に帰宅を始めると、駅前や幹線道路、橋などに人が集中します。激しい混雑のなかでは、集団転倒や将棋倒しが発生するほか、余震による看板、窓ガラス、外壁などの落下物に巻き込まれる危険があります。停電で街灯や信号が消えた夜間や、火災が発生している地域を徒歩で移動することも危険です。
一斉帰宅は、帰宅する本人だけの問題ではありません。道路の混雑によって消防、救急、警察などの活動が妨げられれば、救える命を救えなくなるおそれがあります。
また、地域住民が利用する避難所に徒歩帰宅者が集中すると、水、食料、トイレなどが不足し、避難所運営にも影響します。
帰宅困難者になったときに取るべき行動

帰宅困難者になったときは、すぐに自宅へ向かうのではなく、まず自分の身を守り、周辺の安全を確認します。そのうえで、家族の安否、交通機関の運行状況、自治体による支援情報などを集め、安全な場所で待機することが重要です。
むやみに移動を開始せず安全な場所に待機する
地震発生直後は、建物の倒壊、火災、道路の陥没など、周囲の状況が十分に把握できません。まず机の下に入る、頭を守る、家具や窓から離れるなど、その場に応じた方法で身の安全を確保します。
揺れが収まった後も、慌てて屋外へ飛び出さず、建物の管理者や館内放送の指示に従いましょう。
勤務先の建物に倒壊や火災の危険がなく、電気やトイレなどを利用できる場合は、社内で待機するほうが安全なことがあります。
自治体の案内では、施設が安全であれば発災後3日間は勤務先などにとどまることが示されています。これは、発災直後の救助・救命活動を優先し、一斉帰宅による道路の混乱を抑えるためです。
ただし、火災や津波、建物倒壊などの危険がある場合は、施設管理者や自治体の指示に従って安全な場所へ避難します。「移動しない」とは、安全を確認できない段階でむやみに長距離移動を始めないという意味です。
家族の安否と交通機関・災害情報を確認する
帰宅を急ぐ大きな理由の一つが、家族や自宅の状況に対する不安です。しかし、大規模災害の直後は電話が集中し、固定電話や携帯電話がつながりにくくなる可能性があります。災害用伝言ダイヤル171や災害用伝言板web171、携帯電話会社の災害用伝言板、SNSなど、複数の連絡手段を使って安否を確認しましょう。
情報収集では、テレビ、ラジオ、自治体のホームページや防災アプリ、鉄道会社の公式情報など、信頼できる発信元を利用します。SNSは現地の状況を知る手がかりになりますが、災害時には根拠のない情報や過去の画像が拡散されることもあります。一つの投稿だけで移動を決めず、自治体や公共機関の情報と照合することが大切です。
一時滞在施設や災害時帰宅支援ステーションを利用する
勤務先や学校などにとどまれず、帰宅することも難しい場合は、自治体などが開設する一時滞在施設を利用します。一時滞在施設は、行き場のない帰宅困難者を一時的に受け入れ、施設によって食料、飲料水、ブランケット、トイレ、休憩場所、災害情報などを提供する場所です。
ただし、指定施設でも被害状況によって開設されない場合があります。自治体のホームページや防災アプリなどで開設状況を確認してから移動しましょう。また、一時滞在施設は地域住民が生活する避難所とは目的や対象が異なります。
災害時帰宅支援ステーションは、救助活動などが落ち着いた後、安全を確認しながら徒歩で帰宅する人を支援する施設です。コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、ガソリンスタンドなどが対象となり、水道水やトイレ、道路情報などを提供します。一時滞在施設と同じ役割ではないため、発災直後から必ず休憩や宿泊ができる場所だと考えないよう注意が必要です。

企業に求められる帰宅困難者対策

企業には、従業員を災害直後に一斉帰宅させず、安全な場所に待機させるための準備が求められます。待機スペースや防災備蓄品を確保するとともに、外出者や来訪者を含めた対応手順をBCPや防災マニュアルに定めておくことが重要です。
従業員や来訪者が施設内に待機できる場所を確保する
従業員を施設内に待機させるには、建物の安全確認と滞在場所の確保が必要です。企業は、発災後に建物や設備を点検する担当者、確認項目、判断基準をあらかじめ決めておきましょう。執務室をそのまま待機場所として利用するのか、会議室や休憩室を開放するのかを整理し、通路や非常口をふさがない配置も検討します。
帰宅困難になるのは自社の従業員だけではありません。来訪者や取引先、委託先の作業員などが滞在している場合も想定し、受付記録や入退館情報を確認できる体制が必要です。
女性、高齢者、障害のある人、妊産婦、持病のある人などへの配慮に加え、体調不良者を一時的に休ませる場所やプライバシーを確保できるスペースも考えておくとよいでしょう。
水・食料・簡易トイレなどの防災備蓄品を準備する
施設内待機を継続するには、水、食料、簡易トイレ、毛布などの防災備蓄品が欠かせません。備蓄量は従業員数だけでなく、来訪者や外部スタッフなど、発災時に事業所へ滞在する可能性がある人数も踏まえて算出します。自治体の方針や条例、建物の立地条件などを確認し、一般的には少なくとも3日間の待機を想定して準備することが重要です。
食料は調理せずに食べられ、保存期間が長いものを選び、アレルギーなどにも配慮します。断水に備えた簡易トイレや衛生用品、停電に備えた懐中電灯、ラジオ、モバイルバッテリー、寒暖差に対応する毛布なども必要です。
備蓄品は購入して終わりではありません。保管場所、使用期限、数量、配布方法を台帳で管理し、定期的に点検します。倉庫の奥に詰め込むと災害時に取り出せないため、品目や使用場所に応じて分散保管することも有効です。
担当者が不在でも必要な物資を見つけられるよう、棚や箱の表示、保管場所の共有まで行いましょう。
一斉帰宅抑制を含む対応マニュアルとBCPを整備する
帰宅困難者対応を確実に実行するには、災害時の行動をマニュアルやBCPに明文化する必要があります。発災直後の身の安全確保から、建物の点検、従業員の安否・所在確認、施設内待機の指示、備蓄品の配布、帰宅判断までを時系列で整理します。
指揮命令者が不在の場合に備え、代行順位も決めておくことが大切です。
帰宅の判断は、鉄道の運転再開情報だけで行うべきではありません。周辺の火災、道路の損傷、夜間の危険、混雑状況、本人の体調、自宅までの距離などを総合的に確認します。全員を同時に帰宅させるのではなく、安全が確認できた後に時差帰宅や方面別帰宅を行う方法も検討します。
帰宅困難者の発生に備えて平常時に行うこと

帰宅困難者対策を災害時に機能させるには、平常時の教育、訓練、連絡手段の整備が欠かせません。計画を作成するだけでなく、実際に従業員が行動できるかを確認し、訓練で見つかった課題を継続的に改善しましょう。
従業員への防災教育と帰宅困難者対応訓練を実施する
防災教育では、発災直後にむやみに移動しない理由や、社内の待機場所、備蓄品の保管場所、安否報告の方法を伝えます。「電車が止まったら会社に残る」という説明だけではなく、建物に危険がある場合の避難先や、外出中に被災した場合の行動まで具体的に共有することが重要です。
訓練では、安否確認、建物の安全確認、備蓄品の搬出などを実際に行います。責任者が不在の状況も想定し、訓練後は連絡や所在確認で生じた課題を検証して、役割分担や手順を見直します。
複数の安否確認手段と家族への連絡方法を決めておく
災害時には、電話、メール、インターネットのいずれかが使えなくなる可能性があります。そのため企業は、安否確認システム、メール、ビジネスチャット、災害用伝言サービスなど、複数の連絡手段を用意しておくことが重要です。
従業員から収集する情報も、本人の安否、けがの有無、現在地、家族の状況、出社や帰宅の可否など、必要な項目をあらかじめ定めておきます。
連絡先は人事異動や電話番号の変更に合わせて更新し、定期的なテスト配信で連絡できることを確認します。従業員にも家族との連絡方法を決めてもらえば、不安による無理な帰宅を防ぎやすくなります。
位置情報を活用して従業員の所在を把握できる体制を整える
安否確認では、「無事かどうか」だけでなく、「どこにいるか」を把握することも重要です。特にフリーアドレスやハイブリッドワークを導入している企業では、誰が出社しているのか、どのフロアやエリアにいるのかを紙の名簿だけで即座に確認することは困難です。外出予定や入退館記録だけでは、実際の所在と一致しない場合もあります。
屋内位置情報システムを活用すれば、災害発生時にオフィス内の従業員の所在を確認し、安否確認や避難誘導に役立てられます。たとえばBeacapp Hereでは、ビーコンとスマートフォンなどを利用して、オフィス内にいる従業員の位置を可視化できます。緊急地震速報との連携も活用することで、地震発生時の通知から所在確認までを支援し、初動対応の迅速化につなげられます。
位置情報システムの利用目的や閲覧権限を明確にし、停電や通信障害時の代替手段も用意します。訓練で実際に使用し、誰が情報を確認して安否情報と照合するかまで決めておくことが重要です。

まとめ
帰宅困難者とは、災害による公共交通機関の停止などによって、外出先から徒歩で自宅へ帰ることが難しくなった人です。大規模地震の直後に一斉帰宅が始まると、駅や道路の混雑、転倒、火災や落下物による二次災害が発生し、救助・救命活動を妨げるおそれがあります。そのため、まずは身の安全を確保し、むやみに移動を開始せず、安全な場所で正確な情報を集めることが基本です。
企業には、従業員や来訪者が施設内で待機できる場所を確保し、水、食料、簡易トイレなどの防災備蓄品を準備することが求められます。
さらに、安否・所在確認、一斉帰宅の抑制、時差帰宅、外出中の従業員への対応などをマニュアルやBCPに定め、定期的な防災訓練で実効性を確かめる必要があります。
位置情報を活用して従業員の所在を把握できる仕組みを整えておけば、災害時の確認作業や避難誘導をより迅速に進められます。
帰宅困難者対策を単独の防災施策として考えるのではなく、安否確認、防災備蓄、事業継続、オフィスの安全管理を一体化し、いつ災害が起きても行動できる体制を整えておきましょう。
▶︎株式会社ビーキャップ
https://jp.beacapp-here.com/corporate/
▶︎Beacapp Here|ホームページ
https://jp.beacapp-here.com/
▶︎Beacapp Here|Facebook
https://www.facebook.com/BeacappHERE/
▶︎Beacapp Here|Youtube
https://www.youtube.com/channel/UCSJTdr2PlEQ_L9VLshmx2gg
▶︎Beacapp Here|note
https://note.com/beacapp_here