認知症の人が自宅や介護施設から外出し、帰り道が分からなくなったり、遠くまで移動して行方不明になったりするケースがあります。警察庁によると、2025年に届け出られた認知症またはその疑いによる行方不明者は1万7,345人で、前年より減少したものの、依然として高い水準にあります。
こうしたリスクを減らすため、「玄関に鍵を追加する」「ドアセンサーを設置する」「GPS端末を持ってもらう」といった対策が検討されます。しかし、本人が開けられない鍵で外出を一律に制限すると、尊厳や行動の自由を損なう可能性があります。
徘徊防止で重要なのは、本人を閉じ込めることではありません。外出したい背景や生活習慣を理解し、安心して外出できる環境と、万が一の際に早期発見できる見守り・SOS体制を整えることです。
本記事では、認知症の人が外出する主な理由、玄関でできる対策、鍵を使う際の注意点、GPSや見守りグッズの選び方、地域や介護施設での取り組みを解説します。さらに、BeacappHereを活用し、施設内の所在確認を支援する方法も紹介します。

徘徊防止とは?認知症の外出を安全に支える考え方

徘徊防止というと、認知症のある人を外へ出さない対策が想像されがちです。しかし、本人は買い物や通勤、家族との約束など、本人なりの目的を持って歩いている場合があります。
重要なのは、行動を一律に止めることではなく、外出の背景を理解し、行方不明や事故を防ぎながら、安心して外出を続けられる環境を整えることです。家族や施設の負担だけを基準にせず、本人が望む生活と安全の両方を守る視点が欠かせません。
「徘徊」という言葉の意味と注意点
一般に「徘徊」は、認知症のある人が目的地や帰り道を把握できないまま歩き続ける状態を表す言葉として使われています。しかし、本人は「家へ帰る」「仕事へ行く」「買い物をする」など、何らかの目的を持って行動していることが少なくありません。
厚生労働省の見守り・SOS体制づくりガイドでは、「徘徊」という言葉が誤解や偏見につながり、行方不明になった背景や具体的な改善策を見えにくくするとして、基本的に用いない方針が示されています。
SEO上は「徘徊防止」を使用しつつ、本文では「一人歩き」「外出」「帰宅困難」「行方不明」などの表現を併用し、本人の尊厳に配慮することが大切です。
徘徊防止と行方不明防止の違い
徘徊防止を「外へ出さないこと」と捉えると、玄関の施錠など行動制限に対策が偏りやすくなります。一方、行方不明防止は、本人が安心して外出し、無事に帰宅できるよう支援する考え方です。外出前の声かけ、家族の同行、連絡先カードやGPSの携帯などでリスクを下げます。
さらに、外出に早く気づく仕組み、行方不明時に捜索へ移れる連絡網、発見後に原因を振り返る支援までを一体で設計します。
厚生労働省も、普段の見守り、SOS時の早期発見・帰宅支援、本人と家族へのアフターサポートを連動させる体制を示しています。単に行動を止めるのではなく、「安全に外出を続けること」を目標にしましょう。
本人の安全と尊厳を両立することが重要
行方不明や交通事故を防ぐ安全対策は必要ですが、本人の意思や行動の自由にも配慮しなければなりません。家族や介護職員の不安だけを理由に外出を制限するのではなく、生活歴、希望、よく行く場所を確認し、「なぜ外へ出たいのか」を考えることが出発点です。
例えば、定期的な散歩に同行する、本人が落ち着ける日課や役割をつくる、地域の見守りを利用するといった代替策があります。
厚生労働省の手引きでは、身体拘束は本人の行動の自由を制限することだとされ、在宅で家族が行う制限も該当し得ると説明されています。家族だけで抱え込まず、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの専門職へ相談しましょう。
認知症の人が外出し、行方不明になる主な背景

認知症のある人が外へ出る背景は一人ひとり異なります。記憶や見当識の変化だけでなく、不安、長年の習慣、本人なりの目的、生活環境、支援体制などが影響します。
「徘徊だから」と行動だけを止めても、根本的な解決にはつながりません。いつ、どこへ、何をしようとして向かうのかを観察し、その人の事情に応じた対策を考えることが重要です。記録と対話を通じて、行動が生じる条件を具体的に捉えましょう。
記憶や見当識の変化によって帰り道が分からなくなる
認知症では、最近の出来事を覚えにくくなったり、時間や現在地を把握しづらくなったりすることがあります。外出した時点では目的地を理解していても、移動中に目的を忘れたり、帰り道が分からなくなったりする場合があります。
以前暮らしていた家を現在の自宅だと思い、その場所へ向かおうとすることもあります。また、工事や建物の建て替え、日没、体調不良などによって、歩き慣れた道でも景色を認識しにくくなる可能性があります。
ただし、症状や程度には個人差があり、認知症があるから必ず迷うわけではありません。本人が迷いやすい状況や時間帯を記録し、必要な見守りや同行方法を個別に考えることが大切です。
本人なりの目的や生活歴が行動に影響する
一人歩きには、本人なりの理由が隠れている場合があります。長年勤めた職場へ行こうとする、子どもを迎えに行こうとする、毎日の買い物や散歩を続けようとするなど、過去の生活習慣が現在の行動として現れることがあります。
また、「家へ帰らなければならない」という思いや、家族に会いたい気持ち、不安や寂しさが外出につながることもあります。トイレ、食事、睡眠などの要求をうまく言葉にできず、移動として表現している可能性もあります。
行動をすぐに制止するのではなく、本人の言葉を否定せず、生活歴や普段の過ごし方を確認しましょう。目的が分かれば、同行、日課の再現、居場所づくりなど、より具体的で本人に合った支援につなげられます。
環境・時間帯・支援体制が外出を誘発することもある
本人の状態だけでなく、周囲の環境や職員配置が外出行動に影響する場合があります。玄関や靴が常に目に入る配置、騒音や人の多い空間、落ち着いて過ごせる場所や役割がない環境では、不安が高まり外へ向かうことがあります。
夕方になると落ち着かなくなる、職員の交代時間や夜間に外出しようとするなど、決まった時間帯に行動が集中する人もいます。引っ越しや施設への入所直後は、環境に慣れておらず、以前の家へ戻ろうとする可能性もあります。
外出の時刻、直前の出来事、進む方向、職員配置を記録すると、行動パターンが見えやすくなります。家具配置、活動内容、声かけの時間、見守り体制まで含めて調整しましょう。

認知症の徘徊防止|玄関でできる対策

自宅や介護施設で行方不明を防ぐには、外出の起点となりやすい玄関周辺の対策が重要です。ただし、鍵を増やして本人を出られなくするだけでは、不安や混乱を強めたり、緊急避難を妨げたりするおそれがあります。
生活動線の見直し、ドアセンサー、声かけ、見守り担当者の設定を組み合わせ、外出の兆候へ早く気づける仕組みを整えましょう。通知後の確認担当と対応手順まで決めておくことで、対策が実際に機能します。
玄関周辺の環境や生活動線を見直す
玄関が居室から常に見える、靴や上着、外出用バッグが目立つ場所にあると、それらが外出のきっかけになる場合があります。玄関だけを隠すのではなく、本人が室内で目的地へ迷わず移動できるよう、トイレや居室への表示、照明、家具配置を見直しましょう。
落ち着いて過ごせる場所や、本人ができる家事・作業などの役割を設けることも有効です。外出したい気持ちが強い場合は、決まった時間に家族や職員と散歩することで、希望を尊重しながら安全を確保できる可能性があります。
玄関対策だけで問題を解決しようとせず、本人がどこへ行こうとしているのか、どの時間帯に外へ向かうのかを把握し、生活全体から整えることが大切です。
ドアセンサー・チャイム・通知機器を設置する
ドアセンサーや開閉チャイムは、本人の外出を物理的に止めるのではなく、家族や職員が玄関の動きに早く気づくためのグッズです。扉が開くと音が鳴るもの、スマートフォンへ通知するもの、玄関マットを踏むと作動するもの、人感センサーやカメラと連携するものなどがあります。
選ぶ際は、夜間だけ通知できるか、通知先を複数設定できるか、停電や通信障害時にどう動くかを確認しましょう。
通知が届いても、誰も確認しなければ早期対応にはつながりません。家族や職員のうち誰が現場を確認し、どのように声をかけるか、本人がすでに外へ出ていた場合は誰へ連絡するかまで決めておくことが重要です。
認知症の徘徊防止で玄関の鍵を使う際の注意点
補助錠や暗証番号式の鍵は、玄関からの外出を防ぎやすい一方、本人が自分で開けられない状態は行動の自由を制限することになります。さらに、火災や地震の際に本人や支援者が避難できない危険もあるため、鍵だけを第一の対策にしてはいけません。
厚生労働省の手引きでは、身体拘束を行わずに介護する方法をまず検討し、他に代替手段がないかを組織的・慎重に確認することが求められています。在宅で家族が行う制限も身体拘束に該当し得ます。
鍵を追加する前に、センサー、同行支援、生活環境の調整、介護サービスの追加などを検討し、地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談しましょう。施設では担当者個人で判断せず、組織的な手続きを踏む必要があります。
徘徊防止対策グッズとGPSの選び方

徘徊防止対策グッズには、ドアセンサー、連絡カード、見守りカメラ、GPS端末、スマートフォン、スマートウォッチなどがあります。目的や取得できる情報が異なるため、「玄関からの外出に気づきたいのか」「屋外の現在地を確認したいのか」を先に整理しましょう。
高機能でも本人が持たなければ役に立たないため、生活習慣や操作能力、充電のしやすさも重要です。導入後の運用や、通知を受ける体制まで含めて比較することが大切です。
自宅・玄関で使える主な徘徊防止対策グッズ
自宅や施設の玄関では、扉の開閉を検知するセンサー、玄関マット型センサー、人感センサー、チャイム、スマートフォンへ通知する機器などが利用できます。外出後の身元確認を助けるものとして、家族の連絡先を記載したカード、衣服や靴に付ける識別シールもあります。
見守りカメラやインターホンは、外出した人の服装や進行方向を確認する材料になります。ただし、グッズを設置するだけでは十分ではありません。通知を受けた後の確認担当者、地域や警察への連絡手順、本人へ声をかける方法まで一体で決める必要があります。
また、本人が監視されていると感じないよう、可能な範囲で目的を説明し、撮影範囲や情報を閲覧できる人を限定しましょう。
GPS・スマートフォン・紛失防止タグの違い
GPS端末は屋外の現在地を把握する用途に適しています。スマートフォンは位置共有に加えて通話もできますが、本人が持ち歩き、充電や操作を続けられるかが課題です。スマートウォッチは身につけやすい一方、本人が外してしまう場合があります。
紛失防止タグは小型で靴や杖、バッグに取り付けやすいものの、周囲のスマートフォンや通信環境を利用して位置を推定する製品もあり、GPS端末と同じ仕組みではありません。
警察庁の2025年統計では、GPS機器等の活用により所在確認・死亡確認された認知症行方不明者139人のうち118人、84.9%が届出受理当日に所在確認されています。端末を持っていることが前提となるため、日常生活へ自然に組み込む工夫が必要です。
徘徊対策グッズを選ぶ際の確認項目
グッズを選ぶ際は、本人が無理なく持てる大きさ・重さか、普段使う靴、杖、衣服、バッグなどに取り付けられるかを確認します。電池寿命や充電頻度、防水・防塵性能、通信エリア、位置情報の更新間隔も重要です。
家族や職員への通知方法、同時に通知できる人数、初期費用と月額料金も比較しましょう。位置情報を誰が閲覧できるか、どのくらい保存されるかといったプライバシー面の確認も欠かせません。
自治体によってはGPS端末の貸与や購入費への助成を行っている場合があるため、地域包括支援センターや自治体窓口へ確認するとよいでしょう。性能の高さだけでなく、本人が毎日使え、家族が継続して管理できる製品を選ぶことが重要です。
在宅・介護施設・地域で取り組む見守り体制

徘徊防止や行方不明対策を家族一人で担うと、心身の負担が大きくなります。在宅でも施設でも、本人の生活歴や行動パターンを把握し、家族、介護職、医療機関、自治体、地域、警察が連携することが重要です。
平常時の見守り、行方不明時の捜索、発見後の支援を個別の対策として分けず、一連の見守り・SOS体制として整えましょう。関係者が同じ情報を持ち、迷わず動ける状態を平時から準備することが重要です。
本人ごとの見守り・外出支援計画を作成する
まず、本人が外出しやすい時間帯、向かう方向、よく行く店や公園、駅、以前の自宅・勤務先などを整理します。生活歴や仕事歴を聞き取り、本人が何をしようとしているのかを理解することも重要です。
そのうえで、散歩や買い物へ同行する時間を設ける、室内で安心して取り組める日課や役割をつくる、GPSや連絡カードを自然に携帯できる方法を考えるなど、個別の支援計画を作ります。
本人の状態や生活環境は変化するため、計画は定期的に見直しましょう。家族、ケアマネジャー、介護職、医療職が同じ情報を共有し、禁止事項を並べるのではなく、本人の希望を尊重しながら安全に外出できる方法を検討することが大切です。
家族・介護施設・地域のSOSネットワークを整える
行方不明の発生に備え、自治体の事前登録制度やSOSネットワークがあるかを確認しましょう。本人の最近の写真、身体的特徴、服装、持ち物、よく行く場所、家族の連絡先などを事前に整理しておくと、捜索開始までの時間を短縮できます。
地域包括支援センター、介護施設、医療機関、警察、民生委員、交通機関、近隣店舗など、協力を依頼できる関係者も確認します。誰が警察へ連絡し、誰が自宅・施設内や周辺を確認するかを決め、連絡先リストを最新の状態に保ちましょう。
厚生労働省は、事前登録、個別支援・地域支援ネットワーク、SOSネットワーク、模擬訓練を組み合わせる体制づくりを示しています。
行方不明が発生した場合は早期に対応する
本人の所在が分からなくなった場合は、自宅や施設内、敷地周辺を確認するとともに、外出時刻、服装、持ち物、進行方向、よく行く場所を整理します。GPSや位置情報サービスがある場合は確認し、家族、施設責任者、自治体、警察など、事前に決めた連絡先へ速やかに情報を共有しましょう。
警察庁の2025年統計では、同年に所在確認・死亡確認された認知症行方不明者1万6,729人のうち、94.8%が届出受理から3日以内に確認されています。
時間の経過とともにリスクが高まるため、「もう少し待てば戻るかもしれない」と家族だけで抱え込まず、早期に捜索体制を立ち上げることが重要です。発見後は本人を責めず、安心を確保したうえで再発要因を振り返ります。
BeacappHereで施設内の見守り・所在確認を支援する方法

介護施設や病院などの建物内では、GPSだけでは部屋やフロア単位の位置を把握しにくい場合があります。BeacappHereは、ビーコンとスマートフォン、またはビーコンと受信機を使い、屋内の人やモノの所在地をマップ上に可視化するサービスです。
屋外の追跡ではなく、ビーコン等を設置した施設内の所在確認や、通知後の初動対応を補助する仕組みとして活用を検討できます。GPSや人による見守りと役割を分け、施設内の初動支援として位置づけることが大切です。
施設内にいる人の所在をマップで確認する
BeacappHereでは、施設内にビーコンを設置して利用者が対応スマートフォンを持つ方式、利用者がビーコンを持って施設側に受信機を設置する方式、両者を併用する方式があります。取得した位置情報をフロアマップ上に表示し、対象者がどのエリアにいるかを確認できます。
広い施設で本人を探す時間を減らし、居室、廊下、共用部などの所在確認を補助できます。また、近くにいる職員の位置を確認し、声かけや対応を依頼する運用も考えられます。
ただし、位置情報の把握には誤差があり、公式サイトでも精度を100%保証するものではないとされています。目視、点呼、職員同士の連絡と組み合わせ、補助情報として活用することが重要です。
玄関センサーや通知システムと位置情報を組み合わせる
玄関のドアセンサーで開閉を検知し、職員へ通知した後、BeacappHereで対象者の直近の所在を確認する運用が考えられます。対象者がどのエリアから玄関へ向かった可能性があるかを確認できれば、近くにいる職員へ対応を依頼し、施設外へ出る前の声かけや同行につなげやすくなります。
ただし、これはBeacappHereだけで玄関の開閉を検知したり、施設外をGPS追跡したりするという意味ではありません。ドアセンサーやナースコールなど、別の通知機器との連携設計が必要です。
システム間の自動連携にはAPI利用や個別開発が必要となる場合があるため、技術的な可否や費用を導入前に確認しましょう。通信障害時の代替連絡手段も用意しておく必要があります。
GPSとの違い・プライバシー・運用上の注意点
GPSは主に屋外で広い範囲の位置を把握する仕組みであるのに対し、BeacappHereはビーコンや受信機を設置した屋内エリアでの所在把握を中心とします。そのため、施設外へ出た後の追跡には、GPS端末など別の手段を組み合わせる必要があります。
位置情報を導入する際は、利用目的、閲覧できる職員、保存期間、緊急時の利用方法を明確にし、本人や家族へ分かりやすく説明しましょう。
BeacappHereには、管理者が位置情報の公開範囲を指定する機能や、利用者が一定時間位置情報を非表示にする機能があります。ただし、見守りを名目に過度な監視や行動制限を行わないよう、本人の意思と尊厳に配慮した運用ルールを整えることが重要です。

まとめ
徘徊防止で大切なのは、認知症のある人を外へ出られないようにすることではありません。本人が外出しようとする背景や生活歴を理解し、安全に外出でき、万が一迷っても早期に発見できる環境をつくることです。
玄関では、生活動線や照明の見直し、ドアセンサー、チャイムなどを活用できます。ただし、本人が開けられない鍵によって行動を一律に制限すると、尊厳や自立を損ない、緊急避難を妨げる可能性があります。鍵だけに頼らず、家族や専門職と代替策を検討しましょう。
屋外の行方不明対策には、GPS、スマートフォン、スマートウォッチ、紛失防止タグなどが役立ちます。本人が日常的に持てるか、充電や通知への対応を継続できるかを含めて選ぶ必要があります。
介護施設や病院の屋内では、BeacappHereを使って人の所在をマップ上で確認する方法があります。屋外GPSとは役割が異なるため、玄関センサー、SOS通知、職員の目視、地域の見守りネットワークと組み合わせることが重要です。
本人の意思を尊重しながら、普段の見守り、外出支援、早期発見、捜索、発見後の再発防止までを一連の体制として整えることが、実効性のある徘徊防止・行方不明対策につながります。
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