2026/08/28

避難訓練のねらいとは?保育園で実践したい目的や進め方を具体的に解説!

保育園では毎月のように避難訓練を実施していますが、「毎回同じ内容になってしまう」「訓練が形だけになっている」と感じている保育士や園長先生も少なくありません。避難訓練は、法令に基づいて実施することだけが目的ではなく、子どもたちの命を守る力を育む大切な防災教育です。

本記事では、避難訓練の本来のねらいを整理するとともに、保育園で実践したい目的や子どもの成長につながる進め方について詳しく解説します。

避難訓練のねらいとは?保育園で実施する目的を解説

避難訓練は、保育園における安全管理の基本であり、災害発生時に子どもたちの命を守るために欠かせない取り組みです。しかし、「毎月実施すること」が目的になってしまい、本来の教育的な意味や防災効果が十分に発揮されていないケースも少なくありません。

近年では、地震や豪雨など自然災害の激甚化に加え、不審者対応や火災など、保育園が想定すべきリスクも多様化しています。そのため、避難訓練は単なる避難行動の練習ではなく、「子どもが自分の命を守る力を育てること」と「職員が適切に判断・行動できる体制をつくること」の両方を目的として考える必要があります。

避難訓練とは何か

避難訓練とは、地震・火災・風水害・不審者侵入などの緊急事態を想定し、安全な避難方法や初動対応を確認するために実施する訓練です。児童福祉施設では、消防法や児童福祉施設の運営基準などに基づき、定期的な避難訓練の実施が求められています。

しかし、避難訓練の本当の目的は、法律を守ることだけではありません。災害が発生した瞬間に、子どもたちが慌てず安全に避難できること、そして職員が状況に応じた適切な判断を行えるようになることが重要です。

「もし本当に災害が起きたらどう行動するか」を繰り返し体験することで、子どもも保育士も自然と安全行動を身につけることができます。

保育園で避難訓練を実施するねらい

保育園で避難訓練を実施する最大のねらいは、「子どもの命を守ること」です。しかし、それだけではありません。訓練には子どもの成長や保育の質を高めるという教育的な意味も含まれています。

例えば、保育士の話を最後まで聞くこと、落ち着いて行動すること、友達と協力することなど、日常生活にもつながる力を育むことができます。また、職員にとっては避難経路や役割分担、情報共有の方法を確認し、実際の災害時に混乱しない体制を構築する機会になります。

さらに、毎回異なる災害を想定することで、「どのような災害が起きても対応できる力」を園全体で養うことができます。単に避難経路を歩くだけではなく、「なぜその行動を取るのか」を理解しながら実施することが、効果的な避難訓練につながります。

子どもたちが身につけるべき力

避難訓練を通じて子どもたちに身につけてほしいのは、「自分の命を守るための行動力」です。災害が起きたときには、大人の指示を落ち着いて聞き、安全な場所へ避難することが最も重要になります。

そのためには、「お・は・し・も(押さない・走らない・しゃべらない・戻らない)」などの基本行動を理解するだけでなく、「なぜそうする必要があるのか」を年齢に応じて伝えることが大切です。

また、避難訓練は恐怖を与えるものではなく、「災害が起きても先生たちと一緒なら大丈夫」という安心感を育てる場でもあります。日頃から繰り返し訓練を行うことで、子どもたちは自然と安全行動を身につけ、災害時にも落ち着いて行動できるようになります。

結果として、避難訓練は防災教育であると同時に、子どもの主体性や判断力、社会性を育む重要な保育活動の一つとなるのです。

避難訓練で子どもたちに伝えたいこと

避難訓練は、決められた避難経路を歩いたり、点呼を行ったりすることだけが目的ではありません。本当に大切なのは、子どもたちが災害時に「自分の命を守るためにどう行動すればよいか」を理解し、年齢に応じた行動力を身につけることです。

命を守る行動を身につける

避難訓練で最も大切なねらいは、「命を守る行動」を自然に身につけることです。災害が発生すると、大人でも冷静な判断が難しくなります。幼い子どもにとっては、なおさら不安や恐怖を感じやすい状況です。そのため、日頃から安全な行動を繰り返し経験しておくことが重要になります。

例えば、地震の際には机の下に身を隠す、火災では煙を吸わないよう姿勢を低くするなど、災害ごとに必要な行動は異なります。保育士は「こうしなさい」と指示するだけではなく、「なぜその行動が必要なのか」を年齢に応じた言葉で伝えることが大切です。

また、「お・は・し・も(押さない・走らない・しゃべらない・戻らない)」などの約束を日常生活の中でも繰り返し確認することで、災害時にも自然と実践できるようになります。

保育士の指示を落ち着いて聞く

災害時には、一人ひとりが自由に行動してしまうと、大きな事故につながる可能性があります。そのため、子どもたちには「先生の話を最後まで聞くこと」が、自分自身や友達の命を守ることにつながると伝える必要があります。

避難訓練では、「静かに話を聞く」「先生の近くで行動する」「勝手に列を離れない」といった基本的な行動を繰り返し練習します。こうした経験を積み重ねることで、実際の災害時にも慌てずに行動できるようになります。

また、保育士自身も落ち着いた声掛けや行動を心掛けることで、子どもたちは安心して指示に従うことができます。

災害への恐怖を減らし安心感を育む

避難訓練のねらいは、子どもの年齢によって大きく異なります。そのため、すべての園児に同じ内容を求めるのではなく、発達段階に応じた目標を設定することが重要です。

例えば、0~2歳児では「保育士に抱っこされても泣かずに避難する」「非常ベルの音に慣れる」といった安心感を育むことが中心になります。一方、3~5歳児では、「避難の約束を理解する」「先生の指示を聞いて自分で行動する」「なぜ避難するのかを理解する」といった主体的な行動を促すことがねらいになります。

このように年齢に応じて目標を変えることで、子どもたちは無理なく防災意識を身につけることができます。また、毎月の避難訓練に少しずつ新しい要素を取り入れることで、子どもの成長に合わせた継続的な学びにつながります。

災害別に考える避難訓練のねらい

保育園で実施する避難訓練は、「避難する」という行動だけを練習するものではありません。災害の種類によって危険性や避難方法は大きく異なるため、それぞれの災害に応じた行動を身につけることが重要です。

地震を想定した避難訓練

地震を想定した避難訓練では、「揺れから身を守ること」と「揺れが収まった後に安全に避難すること」の二段階を身につけることが目的です。

地震は予告なく発生するため、子どもたちは突然の大きな揺れに驚いてしまいます。そのため、まずは机の下に隠れる、頭を守る、窓や棚から離れるなど、自分の身を守る行動を繰り返し練習することが重要です。

また、揺れが収まった後は、慌てて走り出さず、保育士の指示を聞きながら落ち着いて避難することを学びます。特に保育園では、乳児や歩行が不安定な子どももいるため、職員同士の役割分担や避難経路の確認も重要なねらいとなります。

地震訓練では、「まず身を守る」という意識を子どもたちに自然に身につけてもらうことが最も大切です。

火災を想定した避難訓練

火災を想定した訓練では、「煙から身を守ること」と「迅速に安全な場所へ避難すること」が大きなねらいです。

火災では炎よりも煙による被害が大きくなることが多いため、子どもたちには「姿勢を低くする」「口や鼻をハンカチや手で覆う」といった基本行動を伝えます。年齢が低い子どもには難しい内容もあるため、保育士が実演を交えながら分かりやすく伝えることが重要です。

また、火災時は避難経路が使えない可能性もあるため、毎回同じルートではなく、複数の避難経路を確認しておくことも効果的です。

火災訓練を通じて、「煙は危険」「先生の指示に従って静かに避難する」という行動を習慣化することが、子どもの命を守ることにつながります。

不審者・風水害・土砂災害への対応

近年は、不審者侵入や台風、集中豪雨、土砂災害など、地震や火災以外の災害を想定した訓練も重要になっています。

不審者対応では、子どもたちを安全な場所へ避難させることに加え、保育士が冷静に役割分担し、警察への通報や保護者への連絡を行う体制を確認します。子どもには、不審者を怖がらせるのではなく、「先生と一緒に安全な場所へ行くこと」が大切だと伝えることが重要です。

風水害や土砂災害では、避難だけでなく「園内待機」という判断が必要になる場合もあります。そのため、気象情報の確認方法や、保護者への連絡体制なども含めた訓練を行うことで、実際の災害時にも落ち着いて対応できるようになります。

災害の種類ごとに対応が異なることを職員全員が理解しておくことが、安全な園運営につながります。

複合災害を想定した訓練

実際の災害では、地震の後に火災が発生したり、大雨による停電や通信障害が同時に起こったりするなど、複数の災害が重なるケースも少なくありません。

そのため、近年では複合災害を想定した訓練の重要性が高まっています。例えば、「地震発生後に停電し、保護者との連絡が取れない」といった状況を想定することで、職員の判断力や連携体制をより実践的に確認できます。

保育園における避難訓練は、想定する災害の幅を広げることで、どのような状況でも子どもたちの命を守れる園づくりへとつながっていきます。

避難訓練をより効果的にするポイント

避難訓練は、毎月実施しているだけでは十分とはいえません。形式的に同じ内容を繰り返してしまうと、子どもたちは「いつもの行事」と認識し、防災への意識が薄れてしまいます。また、職員側も訓練に慣れてしまい、本来確認すべき課題を見落とす可能性があります。

避難訓練を本当に意味のあるものにするためには、「実施すること」ではなく、「災害時に命を守る行動につながること」を目的に考えることが重要です。そのためには、毎回の訓練内容に変化を持たせること、訓練後の振り返りを徹底すること、保護者との連携を図ること、そして継続的な改善につなげることが欠かせません。

ここでは、避難訓練の効果をさらに高めるための4つのポイントをご紹介します。

毎回シナリオを変える

避難訓練が形骸化する大きな原因の一つは、「毎回同じ訓練」を繰り返してしまうことです。避難する場所や経路、想定する災害が毎回同じでは、子どもたちは手順を覚えるだけになり、実際の災害への対応力は育ちません。

例えば、「午睡中に地震が発生した場合」「園庭遊び中に火災が発生した場合」「給食中に地震が起きた場合」など、日常のさまざまな場面を想定することで、子どもも職員も実践的な判断力を養うことができます。

また、保育士ごとに担当役割を変更したり、避難経路を変えたりすることで、新たな課題を発見しやすくなります。実際の災害は想定どおりには起こらないため、「いつもと違う状況」を経験することが重要です。

訓練後の振り返りを行う

避難訓練は、実施後の振り返りまで含めて一つの活動です。訓練後には、子どもたちと「今日はどうだったかな」「先生のお話は聞けたかな」と振り返る時間を設けることで、防災への理解を深めることができます。

職員間でも、避難開始までに時間がかかった場面や、情報共有が不足した場面などを具体的に話し合うことが大切です。「問題はなかった」で終わらせるのではなく、小さな気づきも共有することで、次回以降の改善につながります。

特に園長や主任保育士は、訓練全体を客観的に評価し、運営面や役割分担に改善点がないか確認することが重要です。

保護者とも情報共有する

避難訓練は園内だけで完結するものではありません。保護者に対しても、訓練の実施状況や目的を積極的に伝えることで、防災への理解と協力を得ることができます。

例えば、おたよりや園のホームページで「どのような訓練を実施したのか」「子どもたちがどのようなことを学んだのか」を共有することで、家庭でも防災について話し合うきっかけになります。園と家庭が同じ意識を持つことが、子どもの防災力向上につながります。

記録を残し改善につなげる

避難訓練は実施するだけではなく、必ず記録を残すことが重要です。実施日時や想定災害だけでなく、避難時間、子どもの様子、職員の対応、課題や改善点などを具体的に記録することで、次回の訓練計画に活かすことができます。

また、年間を通して記録を蓄積することで、「どのような訓練を実施したか」「改善が進んでいるか」を客観的に確認できます。記録をPDCAサイクルの「Check」と「Act」に位置付け、継続的な改善につなげることが、安全性の高い園運営には欠かせません。

避難訓練は「やること」より「伝わること」が重要

避難訓練は、法律で定められているから実施するものではありません。本来の目的は、災害が発生した際に、子どもたち一人ひとりが落ち着いて行動し、自分の命を守る力を育むことにあります。そのため、訓練の回数や実施実績だけを重視するのではなく、「子どもたちに何が伝わったのか」「職員は何を学び、次にどう改善するのか」という視点を持つことが重要です。

形だけの訓練にしない

避難訓練は毎月実施することが目的ではありません。大切なのは、子どもたちが「なぜ避難するのか」「どう行動すれば自分の命を守れるのか」を理解し、実際の災害時に行動へ移せることです。

そのためには、毎回同じシナリオを繰り返すのではなく、子どもの成長や季節、園の状況に応じて内容を工夫することが重要です。また、訓練後の振り返りや職員同士の意見交換を通じて、改善を積み重ねることで、訓練はより実践的なものになります。

「実施した」という記録を残すためではなく、「子どもたちに何が伝わったか」を評価することが、本当に意味のある避難訓練につながります。

子ども・保育士・保護者が一体となる防災教育へ

子どもの安全を守るためには、保育園だけでなく家庭との連携も欠かせません。園で学んだ避難行動や防災の知識を家庭でも話題にすることで、子どもの理解はさらに深まります。

また、保護者へ訓練内容や目的を共有することで、園の防災への取り組みに対する安心感や信頼感にもつながります。さらに、職員も「子どもを避難させる立場」としてだけでなく、自らが防災について学び続ける姿勢が重要です。

避難訓練は、一人ひとりが防災を自分ごととして考えるきっかけをつくる教育活動でもあります。園全体、そして家庭を含めた地域全体で防災意識を高めていくことが、子どもたちの未来を守ることにつながります。

まとめ

避難訓練のねらいは、単に法律で定められた訓練を実施することではなく、子どもたちが「自分の命を守る力」を身につけることにあります。そのためには、年齢に応じた目標設定、災害ごとのシナリオ設計、訓練後の振り返りと改善、そして保護者との連携までを含めた継続的な取り組みが欠かせません。

毎月の避難訓練を「やらなければならない行事」ではなく、「子どもたちの未来を守る防災教育」として捉え直すことが、保育の質と園全体の安全性向上につながります。日々の積み重ねこそが、いざという時に子どもたちの命を守る大きな力となるでしょう。


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