避難訓練の成否を左右するのは、意外にも「声かけ」です。火災や地震などの非常時、パニックを防ぎ、安全な行動へと導くためには、的確で落ち着いた指示が欠かせません。
本記事では、避難訓練の現場で使える声かけの意味や役割、具体的なセリフ例、さらには実践のポイントまでをわかりやすく解説し、いざという時に役立つ「伝える力」を高めるためのヒントをお届けします。
避難訓練における「声かけ」が重要な理由

災害時、人の行動を左右するのは“声”です。混乱を防ぎ、共通の動きへと導くには、適切な声かけが欠かせません。ここでは、避難訓練において声かけがなぜ重要なのか、その役割と効果を3つの視点から詳しく解説します。
混乱を抑え、安全行動を統一する“合図”になる
災害が発生すると、人は一瞬で「どうすればいいか分からない」状態に陥ります。とっさの判断が求められるなか、全員がバラバラに動けば、通路の詰まりや転倒などの二次被害につながる恐れもあります。
そこで有効なのが、行動を統一する「合図」としての声かけです。「姿勢を低く!」「ここを通って!」「走らないで!」など、誰が聞いても分かる短い言葉が、安全な避難行動へと導きます。とくに不特定多数がいる施設や職場では、声によって“次にすべき行動”の基準をつくることが、混乱を抑えるカギになります。
状況を正しく伝え、判断をサポートする
災害時は、視界が悪くなったり、音が聞こえにくくなったりと、情報が制限されがちです。そんな時、声かけは「今、何が起きているか」「どう行動すべきか」を補う重要な手段になります。
「○階給湯室で火災発生!」「揺れが収まったので、順番に外へ出てください」といった具体的な声かけは、現場の判断をサポートし、誤った行動や無駄な動きを減らします。特に、職場や施設では情報格差が生まれやすいため、誰かの“見えている情報”を“みんなに伝える”ことが、集団全体の安全を守ることに繋がります。
不安を軽減し、落ち着いた行動につなげる
大きな音や煙、揺れなど、災害がもたらす刺激は人に強い恐怖を与えます。とくに高齢者や子ども、体が不自由な方にとっては、その場にいるだけでも不安が高まるものです。
そんなとき、落ち着いたトーンでの「大丈夫です」「一緒に移動しましょう」といった声かけが、人の気持ちを和らげる効果を持ちます。心理的な安心があると、焦らず判断できるようになり、結果として全体の安全行動がスムーズになります。声には、人と人をつなぎ、落ち着かせる力がある、それを意識した訓練が大切です。
【地震】避難訓練で使えるセリフ例

地震発生時は、数秒の判断が命を守ります。避難訓練では、その“初動の動き”をいかに正しく再現できるかが重要です。
ここでは、地震時のフェーズごとに使える具体的な声かけ例を紹介します。繰り返しの訓練とセットで使うことで、いざという時に自然と口に出せるようになります。
揺れを感じた直後の声かけ(ダウン・カバー・ホールド)
「地震です!その場でしゃがんで!」
「頭を守って!机の下に!」
「動かないで!そのまま!」
地震の初動で必要なのは、まず“動かず・守る”こと。海外でも共通の基本行動「ダウン・カバー・ホールド(姿勢を低く・頭を隠す・動かない)」をシンプルな日本語で伝える声かけが重要です。
揺れの大きさによっては、立って歩くことすら危険になります。思わず立ち上がりたくなる人に対しても、「その場で!」と短く強い言葉で制止することで、不要な転倒や二次被害を防げます。声をかける側も、慌てず・大きく・はっきり伝えることが大切です。
揺れが収まった後の安全確認と誘導の声かけ
「揺れがおさまりました!順番に外に出ます」
「落ち着いてください!まわりに落下物がないか確認して」
「○○さん、そちらの扉は開きますか?」
地震が収まった後でも、気を抜くのは禁物です。余震が来る可能性があるほか、扉や棚の転倒、窓ガラスの破損など、思わぬ危険が残っていることがあります。
そのため、次のステップに進む前に、まず周囲の安全確認を促す声かけが必要です。避難誘導の際には「落ち着いて」「順番に」といった言葉を繰り返し伝えることで、焦りからの混乱を防ぎます。また、声をかけながら“目を合わせる”ことで、安心感を与えることもできます。
避難経路移動中に使える落ち着かせるセリフ
「走らないで!前の人について歩いてください」
「こっちのルートが安全です、案内に従って進んで」
「あと少しで外です、ゆっくりで大丈夫です」
移動中は気が緩みやすく、つい走り出してしまう人もいます。そんな時、走る人が出ると周囲にも動揺が広がり、転倒などのリスクが高まります。
大切なのは、“落ち着いて進むことが正しい”と示す声かけです。具体的な指示とともに、「安心していい」というメッセージを込めると効果的です。また、避難先が見えたときに「あと少し」と伝えることで、希望が持て、気持ちも落ち着きます。声かけは物理的な案内だけでなく、心理的な誘導でもあることを意識しましょう。
【火災】避難訓練で使えるセリフ例

火災時の避難行動には、“早く・正確に・安全に”動くことが求められます。煙や炎が視界を遮る中、正しい行動を促すには、明確な声かけが不可欠です。
ここでは、火災訓練の流れに沿って使えるセリフを、初動から避難完了後まで段階的に紹介します。
火災発生時の初動声かけ(状況共有・指示)
「火事です!〇階給湯室から出火!」
「すぐに避難を開始してください!」
「階段を使って外へ!エレベーターは禁止です!」
火災の第一報では、“何が・どこで・どうすべきか”を一瞬で伝える必要があります。情報があいまいだと、人は動けません。「火事です」だけでなく、出火場所・避難行動・使用禁止事項(エレベーターなど)を短い文で区切って伝えるのがポイントです。
また、火災報知器の音が鳴っている場合は、聞こえづらくなるため、発声はできるだけ大きく・繰り返し伝えましょう。
煙・炎から身を守るための行動指示セリフ
「ハンカチで口を覆ってください!」
「かがんで、姿勢を低くして進んでください!」
「壁に沿って歩いて、出口を目指してください!」
火災で恐ろしいのは、炎だけではなく、煙による窒息や視界不良です。煙は上にたまるため、姿勢を低く保つことで呼吸がしやすくなります。また、壁に沿って移動するように伝えることで、出口が見えなくても方向感覚を保てるようになります。声かけは抽象的な表現ではなく、「どう動けばいいか」が明確に伝わる具体的な言葉を選びましょう。
屋外避難後の点呼・安全確認に使えるセリフ
「みなさん、無事に避難できましたか?」
「〇〇班、人数を確認してください!」
「ケガをした方はいませんか?気分が悪い人も教えてください」
避難完了後も、声かけの役割は続きます。点呼や健康状態の確認、再出火の可能性への備えなど、現場の状況を落ち着いて把握する必要があります。このときも、命令口調ではなく“声をかけ合う”スタンスで言葉を選ぶと、より協力が得られやすくなります。また、異変に気づいた人がすぐ声を上げられる雰囲気づくりにもつながります。

役立つ「声かけ」の作り方と実践ポイント

いざという時に伝わる声かけをするには、ただ“叫ぶ”だけでは不十分です。相手が理解し、動けるようにするには、言葉選びや伝え方に工夫が必要です。
このセクションでは、訓練の段階から取り入れたい声かけ設計のポイントを紹介します。
短く・明確に・命令形で伝える
「危ない!」「早く!」といった曖昧な言葉では、相手に伝わらないことがあります。声かけは、できるだけ短く・はっきり・命令形で伝えるのが基本です。
たとえば、「頭を守って!」「机の下に!」「外へ出て!」といったように、一文一指示を意識すると相手の理解度がぐっと高まります。混乱の中では、普段よりも聞き取りにくくなるため、発音・語尾を強調して話す練習も有効です。テンポと抑揚のある声かけは、聞く側の集中を引き出す効果もあります。
誰がどのセリフを言うか“役割”を決める
避難訓練を成功させるには、「誰が・どのタイミングで・何を言うか」を事前に決めておくことが重要です。全員が思いつきで声を出すと、かえって混乱を招いてしまいます。たとえば、「班長は避難の呼びかけ」「補助役は誘導と安全確認」など、役割ごとにセリフを分担することで、声かけの重複や抜け漏れを防げます。
実際の災害では一人ひとりが自発的に動けるとは限らないため、訓練の中で“声の責任者”を明確にしておくことが、安心につながります。
実際の声量・タイミングを訓練に取り入れる
声かけは、内容だけでなく“タイミングと音量”も大切です。
たとえば、警報が鳴っている状況では声がかき消されてしまうことがありますし、大きすぎる声が逆にパニックを誘うこともあります。訓練の中で実際に声を出し、「この距離では聞こえにくい」「ここで声をかけるのは早すぎた」といった感覚を身につけることで、より実践的なスキルが身に付きます。声の届く範囲や響き方は場所によって異なるため、複数のロケーションでテストすることも効果的です。
訓練後の振り返りで“使うセリフ”をアップデートする

避難訓練は、ただの「シミュレーション」ではなく、実際に使える行動・言葉を育てる“学びの場”です。終わった後の振り返りで、どの声かけが効果的だったか、どこに改善の余地があるかを確認することで、次回の訓練・本番での精度が格段に上がります。
伝わりにくかった場面を共有する
訓練後に「思ったより聞こえなかった」「どう動けばいいかわからなかった」と感じた場面は、今後の改善ポイントです。
例えば、「階段へ行って」と言われたけれど、どこにあるか分からなかったという声があれば、「この非常階段を使ってください」と具体的に言う必要があると気づくことができます。振り返りは個人任せにせず、参加者全員で「うまく伝わらなかったところ」を出し合うことで、セリフの質が自然と上がっていきます。
行動と声かけのズレを見直す
実際の避難行動と、かけられた声の内容が合っていなかったケースも要注意です。「前へ進んでください」と言われても、目の前に障害物があった場合、それは“指示ミス”になります。あるいは、誘導の声が先行して聞こえてしまい、動き出しのタイミングを誤ることもあります。
こうしたズレを見直すためには、声をかけた側と動いた側の両方の視点から振り返ることが効果的です。録画やログなどがあれば、より客観的に確認できます。
次回の訓練に活かす改善ポイント
「今回の訓練で見つかった課題」をそのままにしておくのは非常にもったいないことです。次回に向けて、セリフの文言やタイミング、言う人の配置、使う用語の簡略化などを見直していくことで、避難訓練は“より使えるもの”になります。
また、改善点を「言語化して記録する」ことで、新しく参加する人や交代した担当者にも知見が引き継がれます。「避難訓練は回を重ねるごとに進化させていくもの」という意識を持つだけで、声かけの精度も格段に向上します。
声かけを支えるツール活用例

避難訓練や災害時の声かけは、対面での伝達だけに頼っていては限界があります。複数のフロアや大規模施設、出社者と在宅者が混在するハイブリッドな職場環境では、補助的なツールの活用が大きな助けになります。
ここでは、声かけを“支える”ツールの活用例をご紹介します。
点呼・名簿確認を効率化するデジタル活用
「全員避難できたか」を確認する点呼作業は、声かけだけで行うと時間がかかり、抜け漏れのリスクもあります。そこで活用されているのが、タブレットやスマホによるデジタル点呼ツールです。
避難所でのチェックリストをタップするだけで記録が残るため、紙や声のやりとりよりも正確かつ迅速です。また、出欠や出社状況と連動した名簿システムを使えば、「今日ここにいる人」だけを対象に点呼ができるため、訓練の効率も格段に上がります。
避難場所での到達状況を自動把握する仕組み
大規模施設や多拠点のオフィスでは、誰がどの避難場所にいるのかを声かけだけで把握するのは困難です。そこで注目されているのが、位置情報を活用した自動検知の仕組みです。
たとえば、Beacapp Here のようなビーコンを使ったツールでは、あらかじめ設定された避難場所に人が到着すると、自動で検知され、避難ができたことを把握できます。これにより、点呼ミスや確認遅れが減り、災害時の情報把握を“声に頼らず”行えるようになります。
メッセージ共有や状況周知を支援するツール
災害時には、複数の場所にいるメンバーへ一斉に情報を届ける必要があります。そんな時に役立つのが、グループチャット・一斉送信メール・安否確認アプリといったメッセージツールです。
「今どこが危険か」「どこに集合するか」といった情報を、音声ではなく文字で補完できると、聴覚的な声かけと合わせて“二重の安心”を提供できます。また、平常時から社内ツールとして定着させておくことで、非常時にも混乱なく使えるようになります。

まとめ
避難訓練における声かけは、人の命を守る“最初のアクション”です。正しい言葉・タイミング・言い方を意識することで、訓練の実効性も高まります。
さらに、デジタルツールを活用することで、伝達の“漏れ”や“遅れ”を補い、より安心な環境を整えることができます。実践と改善を重ねて、いざという時に「使える声かけ」を育てていきましょう。
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