ハイブリッドワークやフリーアドレスが広がり、「あの人は今日出社している?」「今どこにいる?」と、人を探すことが以前より難しくなっています。こうした課題を解決する方法の一つが、屋内位置情報の活用です。
一方、位置情報サービスを導入しても、「自分は人探しに困っていないから必要ない」と感じる方もいます。では、自分自身が人探しに困っていなければ、位置情報は本当に必要ないのでしょうか。今回は、「探す人」だけではなく「探される人」という視点から、オフィスにおける位置情報の価値を考えてみます。

「自分は困っていないから、位置情報はいらない」と感じる人もいる

屋内位置情報サービスは、人探しの負担を減らす方法の一つです。一方で、すべての人が日常的に人探しに困っているわけではありません。実際の利用者からも聞かれる「自分には必要ない」という声について、まずはその背景を見ていきましょう。
人を探す機会が少なければ、必要性を感じにくいのは自然なこと
人を探す機会が多い人であれば、位置情報サービスを利用することで「探す時間が減った」「すぐに会いたい人を見つけられた」といった効果を実感しやすいでしょう。
反対に、個人で完結する業務が多い人や、普段から誰かを探す機会が少ない人にとっては、位置情報サービスを自分から利用する場面も少なくなります。
また、管理職や役員など、周囲から相談や確認を受けることが多い立場では、自分から誰かを探すよりも、周囲から自分が探される機会の方が多い場合もあります。しかし、本人からすると「自分は人探しに困っていない」という状況に変わりはありません。
そのため、位置情報を「自分が誰かを探すためのもの」と捉えていれば、「自分には必要ない」と感じるのは自然なことだといえます。
導入企業のアンケートにも「必要性を感じない」という声がある
Beacapp Hereを導入いただいている企業がそれぞれ実施した利用者アンケートを集計したところ、74%の方が効果を実感している一方で、26%の方は「効果を実感していない」、または利用に消極的な回答でした。
その理由を見てみると、
- 「必要性を感じない」 14%
- 「人探しに困っていない」 11%
- 「監視されているように感じる」などプライバシーに関する回答 6%
(複数選択可能)
となっています。
位置情報の活用にあたっては、こうしたプライバシーへの不安にも配慮が必要です。取得する情報や利用目的、誰が閲覧できるのかなどを明確にし、利用者が納得したうえで使えるよう、事前に十分な説明を行うことが大切です。
一方で、今回のアンケートでは「必要性を感じない」「人探しに困っていない」といった回答も見られました。こうした回答の背景には、単にサービスの機能や使い勝手だけでなく、「何のために位置情報を活用するのか」「自分が利用することで誰の役に立つのか」といった利用目的が、十分に伝わっていないケースもあるかもしれません。
たとえば、導入の目的を「人探しの負担を減らすため」とだけ説明されても、自分自身が人探しに困っていなければ、「自分には関係ない」と感じてしまうこともあるでしょう。しかし、位置情報は「自分が誰かを探すため」だけのものではありません。自分自身は人探しに困っていなくても、あなたを探している誰かがいるかもしれないからです。
だからこそ位置情報サービスを導入する際には、導入の目的だけでなく、一人ひとりが位置情報を共有することが、周囲の人探しの負担軽減にどうつながるのかまで伝えることが大切です。

でも、あなたを探している人がいるかもしれません
自分自身は人探しに困っていなくても、あなたに相談したい人や、確認したいことがある人が、社内のどこかであなたを探しているかもしれません。位置情報は、そんな「自分からは見えない人探し」の負担を減らすためにも役立ちます。
位置情報は「自分が誰かを探す」ためだけのものではない
オフィスでは、「○○さん、今日出社していますか?」「さっき見かけたけれど、今どこにいるんだろう?」「急ぎで確認したいことがあるけれど、会議中かな?」と、誰かを探す場面が日常的にあります。
相手の居場所が分からなければ、オフィス内を歩いて探す、周囲の人に聞く、チャットや電話で確認するといった行動が必要です。一つひとつは小さなことでも、そのたびに業務が中断されたり、相手からの返信を待ったりする時間が生まれます。
一方、探されている本人からは、こうした時間はなかなか見えません。いつもどおり仕事をしている間に、別の誰かが自分を探してオフィスを歩き回っていたとしても、それに気づかないこともあるでしょう。
だからこそ、位置情報の価値を「自分がどれだけ便利になるか」だけで考えると、見えなくなってしまう効果があります。自分の居場所が分かることで、周囲の人が探すために使っていた時間や手間を減らせることも、位置情報を活用するメリットの一つです。
「相談される人」「判断する人」ほど、実は探されていることも
管理職や役員、特定の業務に詳しい担当者などは、特に周囲から相談や確認を受ける機会が多い立場です。「この内容を確認してほしい」「少しだけ相談したい」「判断を仰ぎたい」と思っても、自分より目上の方に「今どこにいますか?」と聞くためだけにチャットや電話をするのは、少しためらってしまうこともあるでしょう。その結果、「○○さん、どこにいるか知っていますか?」と周囲に聞いたり、「さっき会議室の方にいた気がする」という情報をもとに探しに行ったりと、探されている人が知らないところで手間や時間が発生しているかもしれません。
実際にBeacapp Hereをご提案させていただく際も、「全社員ではなく、役員など特定の人の位置が分かるようにしたい」というご相談をいただくことがあります。役員や管理職は、会議や打ち合わせなどでオフィス内を移動する機会が多く、居場所を把握しづらいことがあります。それでも、確認や意思決定をしてもらわなければ業務を進められない場面は少なくありません。だからこそ、「今どこにいるのか」を相手に連絡せず確認できることが、探す側の負担軽減につながります。
こうした実際のご相談からも、位置情報の価値は、位置情報を共有する人自身が便利になることだけではなく、その人を探す周囲の人にも生まれることが見えてきます。


ハイブリッドワークやフリーアドレスで「人探し」は難しくなっている

働く場所の自由度が高まったことで、社員一人ひとりがその日にどこで働いているのかは、以前より分かりにくくなっています。多様な働き方が定着した今、人探しにもこれまでとは違った難しさが生まれています。
「いつもの席に行けば会える」が通用しなくなった
固定席が中心だったオフィスでは、会いたい人がいれば、まずその人のデスクへ向かうことができました。不在だったとしても、周囲の人に聞けば「会議に行っています」「少し席を外しています」といった情報を得られることも多かったでしょう。
フリーアドレスでは、その「いつもの席」がありません。座る場所は日によって変わり、会議室や集中スペース、ラウンジ、別フロアなど、オフィスの中でも働く場所の選択肢が増えています。
自由に働く場所を選べることはフリーアドレスのメリットである一方、「同じオフィスに出社しているのに、どこにいるのか分からない」という状況も生まれやすくなります。以前は当たり前にあった「この場所に行けば会える」という手がかりが少なくなっているのです。
人を探す前に「今日、出社している?」の確認も必要に
ハイブリッドワークを取り入れている企業では、探している相手がその日オフィスにいるとも限りません。以前であれば、出社している前提でまず相手の席へ向かうことができましたが、現在は「今日は出社しているのか」「出社しているなら、どこで働いているのか」と、二段階で確認しなければならないこともあります。
もちろん、チャットや電話を使って「今日出社していますか?」「今どこにいますか?」と直接聞くこともできます。しかし、メッセージを送ってから返信が来るまで待つこともあれば、相手が会議中で、すぐに確認できないこともあるでしょう。
人探しにかかる時間は、オフィスを歩き回っている時間だけではありません。相手の出社状況を確認したり、居場所を尋ねたり、返信を待ったりする時間も含めて考えると、目には見えにくい小さな負担が日々積み重なっています。
働き方が変わり、屋内位置情報を活用する企業も増えている
働く場所を自由に選べるようになった一方で、人の所在は以前より見えにくくなりました。こうした変化に合わせて、自由な働き方を維持しながら、必要なときに人とつながれる環境を整えることも求められています。
その方法の一つとして活用が広がっているのが、屋内位置情報です。実際、Beacapp Hereの累計導入企業数も継続して増えており、2026年1月時点で500社を超えています。こうした導入の広がりからも、オフィス内の人の所在を把握するニーズが高まっていることがうかがえます。
屋内位置情報があれば、相手が出社しているのか、オフィス内のどのエリアにいるのかを確認してから行動することができます。固定席という「人の居場所の目印」がなくなった今、その代わりとなる情報を得ることで、働く場所の自由度を保ちながら、人と人がつながりやすい環境をつくることができます。
位置情報は、単に「誰がどこにいるのか」を把握するためのものではありません。必要なときに必要な人とつながりやすくするための情報として活用することもできるのです。
位置情報サービスは「みんなで使う」からこそ価値が生まれる

位置情報サービスは、人を探す側だけが利用しても十分に活用できません。探される側も位置情報を共有し、それぞれが異なる形で参加することで、人探しに役立つ仕組みになります。ここでは、位置情報をみんなで活用する意味について考えていきます。
探す人だけが使っても、人探しは解決しない
位置情報サービスで人を探すとき、実際に画面を開いて検索するのは「探す側」です。一方、「探される側」は自分で検索機能を使わなくても、自分の位置情報が確認できる状態にしておくことで、人探しに参加しています。
もし、探したい相手の位置情報が確認できなければ、検索しても居場所は分かりません。結局、オフィス内を探したり、周囲の人に聞いたり、本人に連絡したりと、これまでと同じ方法で探すことになります。「検索しても見つからない」という状況が増えれば、位置情報サービス自体が使われなくなることにもつながります。
だからこそ、導入後は「人を探したい人に使ってもらう」だけではなく、探される側にも、自分の位置情報を確認できる状態にしておく意味を理解してもらうことが大切です。
自分自身は人を探さないから検索機能をほとんど使わない。それでも、自分の位置情報を共有することで、誰かが自分を探す時間を減らすことができます。位置情報サービスの定着を考えるうえでは、こうした「探される側」の役割まで共有していくことが重要です。
「あなたのため」だけではなく、「あなたと働くみんなのため」に
人を探す機会が多い人もいれば、ほとんどない人もいます。それぞれの業務や立場によって、位置情報サービスとの関わり方は異なります。大切なのは、「人探しに困っている人が使えばいい」と考えるのではなく、位置情報を共有することもサービスを活用する一つの形だと理解してもらうことです。
また、位置情報を共有することは、周囲の人のためだけではありません。「今日出社していますか?」「今どこにいますか?」といった確認の連絡を受ける機会が減れば、探される側もその都度対応する必要がなくなります。人探しに困っていない人にとっても、こうした形でメリットが生まれることがあります。
だからこそ、位置情報サービスの利用を促す際には、導入の目的を伝えるだけでなく、一人ひとりが位置情報を共有することが、その目的の実現にどうつながるのかまで伝えることが大切です。自分自身は人を探さなくても、自分の位置情報が分かることで、あなたと話したい人や相談したい人がスムーズに会いに来ることができます。こうした一人ひとりの協力が、探す側・探される側双方の小さな負担を減らし、必要なときにコミュニケーションを取りやすい環境につながっていきます。

まとめ
「自分は人探しに困っていない」という方にとって、位置情報サービスは必要性を感じにくいかもしれません。しかし、自分が誰かを探していなくても、社内にはあなたと話したい人、相談したい人、判断を仰ぎたい人がいる可能性があります。
位置情報を共有することで、そうした人たちがあなたを探すために使っていた時間や手間を減らすことができます。そして、自分自身も「今どこにいますか?」といった確認に、その都度対応する必要が少なくなります。
位置情報は、「自分が使って便利か」だけで価値が決まるものではありません。自分の居場所が分かることが、一緒に働く誰かの助けになる。そんな視点も、位置情報を活用する意味の一つとして知っていただけたらと思います。
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