2026/11/04

オフィス縮小は本当に必要?メリット・デメリット・判断基準・大企業の事例を解説

リモートワークやハイブリッドワークの普及により、「出社する社員が減り、使われていない座席が増えた」「オフィス賃料を見直したい」と考える企業が増えています。そこで選択肢となるのが、利用しているフロアの返却、拠点の統合、より小規模な物件への移転などを行うオフィス縮小です。

オフィス縮小によって、賃料や光熱費、設備費などの固定費を削減できる可能性があります。一方、平均出社率だけを基準に面積を減らすと、出社が集中する日の座席不足や会議室不足、社内コミュニケーションの低下を招くおそれがあります。

実際に、現在のオフィス市場では一律の縮小が進んでいるわけではありません。2026年春の調査では、オフィスを縮小したい企業より、拡張したい企業の割合が高くなっています。求められているのは、単なる面積削減ではなく、働き方に合ったスペースへの再配分です。

本記事では、オフィス縮小の背景やメリット、失敗しやすいポイント、必要面積の判断方法、大企業のオフィス再編事例を解説します。さらに、Beacapp Hereを活用し、出社状況やスペース利用データに基づいてオフィス縮小を検討する方法も紹介します。

オフィス縮小とは?背景と現在の動向

オフィス縮小とは、使用するフロアの返却、拠点統合、小規模物件への移転などによって、企業が利用するオフィス面積を減らすことです。ただし、目的はコスト削減だけではありません。固定席を見直し、会議室や集中ブース、交流スペースなどへ面積を再配分する「オフィス機能の最適化」も含まれます。

オフィス縮小の基本的な意味

オフィス縮小には、現在より面積の小さい物件への移転、複数フロアの一部返却、分散している拠点の集約など、さまざまな方法があります。支社や営業所を小規模なサテライトオフィスへ切り替えたり、固定席を減らしてフリーアドレスやABWを導入したりする方法もあります。

重要なのは、単に賃借面積を減らすのではなく、利用実態に合わせてオフィス全体を適正化することです。日常的に利用されていない執務席を削減する一方、Web会議ブースや少人数会議室、コラボレーションエリアを増やすケースもあります。

オフィス縮小は「狭い場所へ移ること」ではありません。従来の固定席中心の環境から、仕事の目的に応じて場所を選べる環境へ転換するワークプレイス改革として捉えることが大切です。

リモートワークでオフィス縮小が検討される理由

リモートワークの普及によって、毎日すべての従業員が出社する前提が変わりました。出社人数が減ると、固定席の空席が目立ち、賃料や光熱費を負担しながら利用されていないスペースを維持する状態が生まれます。

また、在宅勤務やサテライトオフィスが定着し、働く場所に縛られない採用や勤務制度も広がっています。個人で集中して行う業務は自宅、対面での相談や共創はオフィスというように、出社の目的も変化しています。

2026年春の調査では、平均出社率は69.9%で、2023年春以降はおおむね7割前後で推移しています。完全なリモートワークではなく、出社とテレワークを組み合わせる働き方が定着しているため、オフィスをなくすのではなく、ハイブリッドワークに合う形へ再設計する視点が必要です。

現在は「一律縮小」から「機能最適化」へ変化している

コロナ禍の直後は、テレワークの急速な普及を背景に、オフィス面積を大幅に減らす動きが注目されました。しかし現在は、出社率が一定の水準で安定し、対面でのコミュニケーションや共創の価値も再認識されています。

2026年春の調査では、過去1年間にオフィスを「縮小した・する可能性がある」企業は6.2%である一方、「拡張した・する可能性がある」企業は14.4%でした。また、面積を縮小したい企業でも、会議室、集中スペース、オープンミーティングスペース、リフレッシュスペースなどでは、減らすより増やしたいという意向が上回っています。

この結果からも、現在のオフィス改革は一律の面積削減ではなく、利用率の低い執務席を効率化し、必要な機能を充実させる方向へ変化していると考えられます。

オフィス縮小によって得られるメリット

オフィス縮小の代表的なメリットは、賃料や光熱費、設備維持費などの固定費を抑えられることです。また、利用率の低い固定席や書庫を見直すことで、限られた面積を有効活用できます。削減するだけでなく、集中・交流・Web会議など、現在の働き方に必要な機能へ再配分することが重要です。

賃料・光熱費・設備費を削減できる

利用面積を縮小すれば、毎月の賃料や共益費を削減できる可能性があります。空調や照明にかかる光熱費、清掃費、警備費、設備保守費なども、対象面積や設備数の減少に応じて見直せます。

固定席を減らすことで、デスクや椅子、モニター、複合機、ロッカーなどの什器数を抑えることも可能です。削減した費用を、テレワーク環境、クラウドサービス、人材育成、福利厚生などへ再投資すれば、働き方改革をさらに進められます。

ただし、移転を伴う場合は、原状回復費、移転費、内装工事費、什器購入費、契約期間中の違約金などが発生します。賃料だけを比較するのではなく、3年や5年など一定期間の総コストを算出し、初期費用を含めても効果が得られるか確認しましょう。

使われていないスペースを有効活用できる

オフィス縮小を検討する過程では、どのスペースがどの程度利用されているかを見直すことになります。日常的に空いている固定席や、利用頻度の低いフロアを統合すれば、同じ人数でも効率的な運用が可能です。

大人数用の会議室が少人数で使われている場合は、複数の小会議室やWeb会議ブースへ分割する方法があります。紙資料を電子化して書庫を縮小し、その場所を集中席や打ち合わせスペースへ転換することも考えられます。

ただし、利用率が低い場所がすべて不要とは限りません。騒音、温度、照明、通信環境、アクセスの悪さなどが原因で使われていない可能性もあります。面積を削減する前に、「なぜ使われていないのか」を確認し、環境改善で利用率を高められないか検討することが重要です。

働き方に合わせてオフィス機能を再編できる

オフィス縮小は、働く場所の役割を見直す機会になります。個人で集中する業務は自宅で行い、オフィスではチームでの相談、アイデア創出、顧客との打ち合わせなど、対面の価値を生かすという役割分担が可能です。

固定席を減らした面積に、コラボレーションスペース、集中席、フォンブース、Web会議室、リフレッシュエリアなどを設ければ、従業員は業務内容に応じて場所を選べます。部署を越えた交流が生まれやすい動線を設計することもできます。

また、縮小や移転を契機に、ペーパーレス化、クラウド化、フリーアドレス、ABWなどを同時に進める企業もあります。オフィス縮小を「席数を詰め込む施策」にせず、出社する意味を再定義する取り組みとして活用しましょう。

オフィス縮小のデメリットとよくある失敗

オフィス縮小では、コスト削減を優先するあまり、座席や会議室、収納など必要な機能まで減らしてしまう失敗が起こります。平均出社率だけで必要面積を計算すると、特定曜日の混雑に対応できない可能性があります。さらに、対面交流の減少によって、組織文化やエンゲージメントへ影響が及ぶこともあります。

出社が集中する日に座席が不足する

平均出社率が70%だからといって、座席数を在籍人数の70%にすればよいとは限りません。月曜日や定例会議日、全社会議、研修、月初・月末など、特定の日に出社が集中する企業もあります。

部署ごとに出社曜日を自由に決めると、複数部署の出社日が重なり、平均値では足りているはずの座席が不足する場合があります。予約だけされて実際には利用されていない席や、人気エリアだけが混雑し、別の場所には空席がある状況も起こります。

必要席数は、平均出社人数だけでなく、曜日・時間帯別のピーク人数を確認して算出しましょう。全社員分の固定席を残す必要はありませんが、突発的な出社や来客、異動にも対応できる予備席や多目的スペースを設けることが大切です。

会議室やWeb会議スペースが不足する

執務席の削減だけに注目すると、会議室やWeb会議スペースの不足を見落としやすくなります。ハイブリッドワークでは、出社している従業員もオンライン会議へ参加するため、一人用ブースや少人数会議室への需要が高まります。

2025年秋の調査では、メインオフィスに課題を感じている企業のうち、「会議室やリモート会議用スペースなどが不足している」という回答が57.7%で最も高くなりました。特に、一人用ブースや2~4人用会議室の不足がみられています。

大会議室を1~2人で使う状況や、オープンスペースでオンライン会議を行い騒音が生じる状況を防ぐには、総面積だけでなく、人数別の部屋構成と実際の利用率を確認することが必要です。

コミュニケーションや組織文化が弱まる

オフィスの面積や出社機会を減らしすぎると、偶発的な会話や気軽な相談が減少する可能性があります。リモート勤務者と出社者の間に情報格差が生じたり、新入社員が人間関係や組織文化を理解しにくくなったりすることも考えられます。

2025年秋の調査では、社内コミュニケーションを活性化できていないと感じる企業のうち、65.1%が「オンラインではコミュニケーションが不足しがち」と回答しています。オフィスでのリアルなコミュニケーションが活性化していないという回答も61.8%でした。

縮小後も、チームで集まれる場所、部署を越えて交流できる場所、短時間の相談ができる場所を確保し、出社日を目的に合わせて設計することが重要です。

オフィス縮小を失敗せずに進める手順

オフィス縮小を成功させるには、最初に目標面積を決めるのではなく、現在の利用状況を把握することから始めます。出社人数、座席・会議室の利用率、曜日別の混雑状況を確認し、残すべき機能を整理します。そのうえで、将来の人員計画を反映した複数案を作り、小規模な試験運用を経て移行することが重要です。

縮小の目的と評価指標を明確にする

まず、なぜオフィスを縮小するのかを明確にします。賃料削減が主目的なのか、複数拠点を統合して組織連携を強化したいのか、ハイブリッドワークに適した環境へ変更したいのかによって、取るべき施策は異なります。

「面積を20%減らす」といった目標だけを設定すると、必要な会議室や交流スペースまで削減するおそれがあります。削減額や面積だけでなく、座席稼働率、会議室稼働率、従業員満足度、出社時の生産性、コミュニケーションの状況なども評価指標に含めましょう。

また、「何を削るか」より先に、「縮小後も何を残すべきか」を決めることが重要です。集中作業、共同作業、オンライン会議、来客対応など、オフィスで必要な活動を整理すると、面積配分を検討しやすくなります。

出社状況とスペース利用率を可視化する

縮小前には、曜日・時間帯・部署別の出社人数を把握します。入退館データ、座席予約、勤怠情報などを確認し、平均値だけでなくピーク時の人数も調べましょう。

座席については、固定席とフリーアドレス席の利用率を測定します。会議室は、予約時間だけでなく実際に利用されたか、何人で使用されたかを確認することが重要です。集中ブース、休憩スペース、収納などの利用状況も対象にします。

「見たところ空席が多い」といった印象だけで判断するのは危険です。繁忙期を含む一定期間のデータを取得し、従業員アンケートや現場観察も組み合わせましょう。曜日、時間帯、部署、スペース種別に分けることで、余っている場所と不足している場所を正確に区別できます。

必要面積を算出し、段階的に移行する

必要面積を算出する際は、平均出社人数とピーク出社人数の両方を使用します。固定席が必要な職種を整理し、フリーアドレスを利用できる部門と分けて考えます。

執務席だけでなく、会議室、応接室、Web会議ブース、受付、収納、休憩室、通路など、用途別に面積を積み上げましょう。将来の採用や組織再編、出社方針の変更に対応できる余裕も必要です。

全員固定席、一部フリーアドレス、完全フリーアドレスなど、複数のレイアウト案を比較します。可能であれば、一部のフロアや部署で試験導入し、座席不足や騒音などの問題を確認してから、本格的な移転・返却へ進みましょう。縮小後に不足が判明すると、追加工事や再移転によってかえって費用が増える可能性があります。

大企業のオフィス縮小・再編事例から学ぶポイント

大企業の事例からは、オフィス改革が一方向に進み続けるわけではないことが分かります。コロナ禍に大幅な面積削減を掲げた企業がある一方、現在は対面交流や共創を重視し、新たなオフィスを整備する企業もあります。他社の縮小率をそのまま参考にせず、自社の働き方や事業環境に応じて見直せる柔軟性を持つことが重要です。

富士通|テレワークを前提にオフィス面積を見直した事例

富士通は2020年に、新しい働き方のコンセプト「Work Life Shift」を打ち出しました。テレワークを基本とする働き方へ移行し、当時はオフィス面積を50%削減する方針を含む改革を発表しています。また、約8万人の在宅勤務を支えるインフラ整備も進めていました。

現在も富士通では、自宅、オフィス、社外のサテライトオフィスなどから、業務内容やライフスタイルに応じて働く場所を選ぶ考え方が示されています。オフィスではフリーアドレスを採用し、オンラインツールと対面コミュニケーションを使い分けています。

この事例からは、面積だけを先に削減するのではなく、テレワーク環境、IT基盤、コミュニケーション方法、評価制度などを一体で見直す必要があることが分かります。

パナソニック コネクト|面積よりオフィス機能を重視した事例

パナソニック コネクトは2025年1月、本社浜離宮ビルと大阪拠点に、社員のコラボレーションを促進するスペース「COMMONS」を開設しました。「つながるワークプレイス」をコンセプトに、ABWを推進しています。

COMMONSには、複数人で打ち合わせる場所、食事や休憩に使える場所、イベントを行える場所、一人で集中する場所など、目的の異なるスペースが用意されています。社員の反応や生産性・創造性を確認しながら、継続的に改善する方針も示されています。

この事例が示しているのは、オフィス改革を座席削減だけで考えないことの重要性です。限られた面積でも、集中、交流、休憩など複数の行動を支える機能を配置することで、出社時の価値を高められます。

LINEヤフー|働き方の変化に合わせてオフィスを再評価した事例

LINEヤフーは2026年4月、組織を超えた共創の活発化を目的に、新たな赤坂オフィスを開設しました。開設に伴い、リモートワークの利点を残しながら、原則週3回出社へ段階的に移行する方針を示しています。

赤坂オフィスには、少人数の打ち合わせからチーム単位のディスカッション、ワークショップまで対応するスペースや、部門を越えた交流に使えるオープンスペースが設けられています。オンライン会議や集中作業に対応する設備も整備されています。

この事例から、働き方や事業環境は時間とともに変化することが分かります。縮小後に出社方針が変わる可能性もあるため、将来の拡張や用途変更に対応しやすい契約やレイアウトを選ぶことが重要です。

Beacapp Hereでオフィス縮小を成功させる方法

オフィス縮小の判断には、在籍人数やアンケートだけでなく、実際の出社人数とスペース利用状況を把握することが重要です。Beacapp Hereでは、オフィス内の人やモノの所在を可視化し、蓄積したデータから座席・エリアの利用傾向を分析できます。感覚ではなく、実態に基づいて縮小できる場所と残すべき機能を判断する材料になります。

実際の出社人数と所在を可視化する

Beacapp Hereでは、ビーコンとスマートフォンなどを活用し、オフィス内の座席利用状況や従業員の出社状況をリアルタイムに近い形で確認できます。「現在どの席が使われているか」「誰がどのエリアで働いているか」を可視化することで、フリーアドレス環境での座席利用も支援します。

曜日・時間帯・部署ごとの出社傾向を分析すれば、平均値だけでは分からないピーク出社人数を把握できます。特定の部署だけ出社率が高い場合や、全社的な出社日に混雑する場合も確認しやすくなります。

実際の利用人数をもとに必要席数を算出することで、過剰な固定席を減らしながら、座席不足を避ける計画を立てられます。位置情報の利用目的や閲覧範囲を明確にし、監視ではなく環境改善のために活用することも重要です。

Beacapp Hereで取得したデータを活用したオフィスの稼働分析について、以下の記事で詳しく紹介しています。
オフィスの稼働分析とは?データ活用で生産性向上を実現する方法を解説

混雑エリアと利用されていない場所を把握する

オフィスのスペース利用を継続的に分析すると、利用が集中するエリアと、ほとんど使われていない場所を把握できます。座席だけでなく、会議室、フォンブース、ロッカー、複合機、リフレッシュエリアなども分析対象になります。

例えば、会議室が予約で埋まっている一方、実際には利用されていないケースや、少人数で大きな会議室を占有しているケースを発見できます。フォンブースの利用率が高い場合は増設し、利用率の低い共有スペースは用途変更を検討できます。

ただし、「使われていない面積をすべて削る」という判断は避けましょう。設備、騒音、温度、動線などを改善すれば利用率が上がる可能性もあります。縮小すべき場所と改善すべき場所を区別することが大切です。

縮小・レイアウト変更前後の効果を検証する

オフィス縮小やレイアウト変更の前には、出社率、座席稼働率、会議室や共有スペースの利用状況を記録します。変更後に同じ指標を測定すれば、座席不足や混雑が発生していないか、新設した交流スペースが実際に利用されているかを比較できます。

Beacapp Hereでは、蓄積したデータを活用し、エリアごとの利用率や出社率の推移を分析できます。レイアウト変更、座席数の見直し、出社ルールの改善などを検討する際の判断材料として活用できます。

位置情報だけで結論を出すのではなく、従業員アンケート、会議室予約、入退館データ、現場観察も組み合わせましょう。組織変更や採用によって利用状況は変わるため、縮小後も定期的に再評価し、PDCAを回すことが重要です。

まとめ

オフィス縮小とは、使用する面積を減らしてコストを抑えるだけでなく、リモートワークやハイブリッドワークに合わせて、オフィスの機能を再設計する取り組みです。

賃料や光熱費を削減し、利用率の低い固定席や書庫を見直せる一方、平均出社率だけを基準に面積を減らすと、ピーク時の座席不足や会議室不足、コミュニケーションの低下を招く可能性があります。

2026年春の調査では、オフィスを縮小したい企業より拡張したい企業の割合が高く、面積を縮小する企業でも、会議室や集中スペース、交流スペースなどを充実させようとする傾向がみられます。現在は一律の縮小ではなく、必要な機能を残しながら面積を適正化することが重視されています。

オフィス縮小を検討する際は、目的を明確にし、曜日・時間帯別の出社人数、座席や会議室の利用率、将来の採用・組織計画を確認したうえで必要面積を算出しましょう。試験運用を行い、実際の従業員の声を確認してから本格的に移行することも大切です。

Beacapp Hereのような屋内位置情報サービスを活用すれば、出社状況やスペース利用をデータで把握し、縮小できる場所と残すべき機能を判断できます。縮小前後の効果を継続的に検証し、働き方の変化に合わせて改善を続けることが、オフィス縮小を成功させるポイントです。


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