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2025/09/25

ファシリティマネジメントの国際規格「ISO41001」とは?仕組み化・IT活用の進め方を解説

働き方の多様化やDXの推進により、ファシリティマネジメントの重要性が高まっています。従来の施設管理にとどまらず、空間・人・業務を一体的に捉える視点が求められるようになりました。

本記事では、ファシリティマネジメントの基本的な考え方と、国際規格「ISO41001」の概要、さらにIT・ICTを活用した実践のヒントについてわかりやすく解説します。

Contents

ファシリティマネジメントとは?企業経営に欠かせない考え方

多様な働き方や企業競争の激化を背景に、オフィスや設備の使い方を見直す企業が増えています。その中核となるのが「ファシリティマネジメント」です。

ここでは、その基本的な考え方と役割について整理していきましょう。

空間や設備だけでなく“人・業務”を含む広い概念

ファシリティマネジメントは、単に建物や設備を管理する業務にとどまりません。オフィスや工場、病院などの空間だけでなく、そこで働く「人」や「業務の流れ」も含めて最適化を図るのが特徴です。例えば、会議室の利用状況を把握して無駄を省いたり、働く人が動きやすい導線を設計することも、ファシリティマネジメントの一環です。

だからこそ、ファシリティマネジメントは、企業活動を支える“環境づくり”そのものといえるでしょう。

なぜ今ファシリティマネジメントが注目されているのか(多様な働き方とDX)

近年、テレワークやフリーアドレスの導入が進み、「いつ・誰が・どこで・働いているか」が見えづらくなっています。それに伴い、オフィスの使われ方にも変化が起きており、以前のような固定席や部門単位のレイアウトでは対応しきれない場面も増えました。

このような課題を解決する手段として、柔軟かつ戦略的に空間を設計・運用するファシリティマネジメントが再評価されています。ファシリティマネジメントはDXとの親和性が高い領域でもあり、データを活用した改善にも注目が集まっています。

ファシリティマネジメントの目的と導入メリット

ファシリティマネジメントの最大の目的は、組織の業務をより効率的かつ快適に進めるための「環境づくり」です。コスト削減や設備の延命だけでなく、働きやすさやチームの生産性向上といった“人”に関わる効果も大きなメリットです。また、スペースの有効活用やエネルギー管理など、経営的な視点でも高い効果が期待されます。

経営戦略と連動させることで、企業の競争力向上にも貢献します。

ファシリティマネージャーの役割と企業への影響

ファシリティマネジメントを推進する上で重要なのが、「ファシリティマネージャー」の存在です。ファシリティマネージャーには、単なる設備管理ではなく、経営目標や働き方の変化を踏まえて空間設計やルールづくりを担う戦略的な役割が求められます。

近年では、データ分析やICTの活用スキルも必要とされており、総務や施設管理の枠を超えた人材として注目されています。企業全体の生産性や働きやすさを左右するポジションといえるでしょう。

ISO41001とは?ファシリティマネジメントを体系化・継続化する国際規格

ファシリティマネジメントを単なる実務対応ではなく、経営と連動した活動として定着させるには、共通の指針が欠かせません。その役割を担うのが、2018年に国際標準化機構(ISO)によって策定された「ISO41001」です。

ここでは、ISO41001の基本的な考え方や他規格との違い、導入による効果や導入ステップについて解説します。

ISO41001の概要と誕生背景

ISO41001は、ファシリティマネジメントに特化した世界初の国際規格として2018年に制定されました。建物や設備、人的資源、業務プロセスなど、組織を構成するさまざまな要素を「環境」として統合的に管理し、持続可能で効率的な運営を支援するためのマネジメントシステムを規定しています。

この規格の誕生背景には、世界的なオフィス変革の流れや、ファシリティ管理の質のばらつきへの課題意識がありました。

他のマネジメント規格との違いと位置づけ

ISO41001は、ISO9001(品質マネジメント)やISO14001(環境マネジメント)と同様に、PDCAサイクルを基盤としたマネジメントシステム規格です。ただし、ISO41001の対象は「施設・空間・環境」であり、ハードとソフトの両面を統合的にマネジメントする点が特徴です。

他の規格との相違点として、ISO41001は「働きやすさ」や「安全性」など、人に関わる要素を含む点が強調されています。つまり、物理的な管理に加えて、人や業務の流れも重視する“包括的マネジメント”を志向している点が特筆されます。

ISO41001を導入するメリットと適用範囲

ISO41001の導入により、ファシリティマネジメントの方針や運用体制を組織全体で共有・継続できるようになります。属人化しやすい施設管理業務を標準化・文書化することで、品質のばらつきを防ぎ、効率的かつ安定した運用が可能になります。

適用範囲は、オフィスだけでなく、病院・工場・教育機関・研究施設など、あらゆる業種・業態に対応しています。グローバル展開を見据える企業にとっても、国際的な信頼性の獲得につながる規格です。

導入企業の事例や認証取得までの流れ

ISO41001の導入は、まず現状のファシリティマネジメント体制を評価し、課題や改善点を洗い出すところから始まります。その後、マネジメント方針の策定、運用体制の構築、教育・訓練、内部監査などを経て、第三者機関による審査を受けることで認証取得が可能になります。

国内外ではすでに多くの大手企業や公共機関が導入しており、施設管理の高度化・見える化に成功している事例も増えています。認証の有無にかかわらず、「ISO41001に準拠した考え方を採り入れる」だけでも十分に効果を発揮します。

ISO41001の導入プロセスと注意点

ISO41001を導入するにあたっては、単なる“認証取得”を目的にするのではなく、ファシリティマネジメントをいかに組織に定着させ、持続的に改善していくかが重要です。

ここでは、導入時に押さえておきたい基本ステップと、運用にあたっての注意点を整理します。

導入の基本ステップ:PDCAをベースに進める

ISO41001では、他のマネジメント規格と同様に「PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Act)」に基づいた継続的な改善が求められます。

まずは、現状のファシリティマネジメントにおける課題を洗い出し、改善すべき方向性や方針を策定(Plan)します。その後、方針に基づいて体制を整え、具体的な施策を実行(Do)し、結果を評価(Check)しながら、必要に応じて改善(Act)していきます。

この一連のサイクルを回すことが、ISO41001における重要な考え方です。

必要な体制整備とリーダーシップの重要性

導入をスムーズに進めるためには、責任者の明確化や組織横断的な体制づくりが欠かせません。特に、トップマネジメント(経営層)の関与は非常に重要です。

方針や目的が現場に浸透しないまま進めてしまうと、形だけの運用になりがちです。リーダーが明確なビジョンを持ち、関係部署と連携しながら推進していくことが、成功のカギとなります。

ファシリティ部門と他部門の連携がカギ

ファシリティマネジメントは、総務部門だけで完結するものではありません。人事部門やIT部門、各事業部門など、複数の部署と連携しながら進める必要があります。

たとえば、オフィスレイアウトの見直しを行う場合でも、社員の働き方やIT環境への理解が不可欠です。“現場を巻き込んだ対話”が、実効性のあるマネジメントにつながります。

内部監査や継続的改善への仕組みづくり

ISO41001では、運用開始後の「継続的な見直し」が重視されます。そのため、内部監査や定期的なレビュー体制をあらかじめ設計しておくことが大切です。

改善点を把握しやすくするためには、行動ログや利用状況データなど、“定量的な情報”の活用も効果的です。改善サイクルを仕組みとして定着させることが、持続的な運用と成果につながります。

ファシリティマネジメントにおけるICT・ITの活用

ISO41001を実効性のあるものとして運用するには、定性的な判断だけでなく、データに基づくマネジメントが求められます。その実現を支えるのが、ICT(情報通信技術)やITツールの活用です。

ここでは、ICT・ITの基本的な役割と、ファシリティマネジメントへの応用例についてご紹介します。

ICTとは?IoTやクラウドとの関係も整理

ICT(Information and Communication Technology)は、IT(情報技術)に加えて通信・ネットワーク技術を含んだ概念です。IoT(モノのインターネット)やクラウドと組み合わせることで、現場のデータをリアルタイムに収集・分析できるようになります。

ファシリティマネジメントにおいては、オフィス内のセンサー情報や利用ログなどをICTでつなぎ、空間の使われ方や人の動きを把握する基盤となります。

IT活用の具体例:設備管理・在席把握・空調制御など

ITツールを導入することで、ファシリティマネジメントの現場ではさまざまな業務の効率化が可能になります。例えば、オフィスの空調や照明をセンサーと連携して自動制御したり、社員の在席状況をリアルタイムで確認できる仕組みを構築することができます。

また、会議室やフリーデスクの予約システムを導入すれば、スペースの利用率を可視化し、ムダのない運用が実現します。こうした仕組みは、快適性と省エネを両立させるうえでも有効です。

ファシリティマネジメント×行動データ=“戦略的マネジメント”への進化

最近では、行動ログや利用傾向のデータを収集・分析し、空間設計や運用ルールの改善に活かす企業も増えています。単なる「見える化」にとどまらず、実際の人の動きや利用パターンを可視化することで、より本質的な課題の発見が可能になります。

たとえば、「混雑して使われていない会議室」や「人気のないエリア」などを定量的に把握できれば、配置変更や用途見直しにもつながります。これにより、ファシリティマネジメントはより“戦略的”な領域へと進化していきます。

Beacapp Hereなど可視化ツールの活用シーン

ファシリティマネジメントに役立つツールのひとつが、社員の出社状況や位置情報を可視化できる「Beacapp Here」です。Beacapp Hereではビーコンやスマートフォンの情報を活用して在席状況を自動で記録し、取得したデータを分析することで滞在時間・接触傾向など可視化することができます。

これにより、出社率の把握やエリアごとの利用傾向が見えるようになり、レイアウト変更や設備投資の判断にも活用可能です。複数拠点にまたがる管理や、施設全体の稼働率を見える化したい企業にも適したソリューションといえるでしょう。

ファシリティマネジメントを成功させるためのポイント

ファシリティマネジメントは、制度やツールを導入するだけで自動的にうまくいくものではありません。「実際に使われ、運用され、継続される」状態をいかに作るかが成否を分けるポイントです。

ここでは、現場でファシリティマネジメントを根付かせ、効果を実感するために意識したい視点を整理します。

“使われる”仕組みを設計する(運用ルール・教育)

まず重要なのは、システムやルールが使われることを前提に設計されているかという点です。例えば、予約システムやチェックイン機能を導入しても、使い方が複雑だったり、周知が不十分だったりすると活用されません。

活用を定着させるためには、利用者目線での設計と、現場への丁寧な説明・教育が重要です。ツール導入と同時に、運用ルールやマニュアルの整備、社内説明会などをセットで行うことが理想です。

ツールを活かすには「目的」と「運用」がセットで必要

ファシリティマネジメントの取り組みが形骸化してしまう原因の一つが、“導入がゴール”になってしまうことです。「なぜこの仕組みを取り入れるのか」「どんな効果を期待しているのか」という目的が明確でなければ、現場もモチベーションを持ちづらくなります。

また、目的に応じて運用方法を柔軟に見直す姿勢も大切です。目的と運用をセットで考え、PDCAを回しながら継続的に改善する姿勢が、成功につながります。

ログ活用と可視化による定量的な評価

効果を実感するためには、感覚や印象だけでなく、数値に基づく評価=“見える化”が欠かせません。出社率、会議室の利用率、稼働率などの定量データを活用することで、現状の課題や改善点が明確になります。特に、ツールから取得できる行動ログや接触履歴などは、働き方や空間設計を見直すうえで有効な指標となります。

「見えるから改善できる」というサイクルを回すことが、ファシリティマネジメントの質を高めます。

ISO認証取得の有無にかかわらず使える考え方

ISO41001の認証を取得するかどうかに関係なく、そこで示されている考え方やフレームワークは、あらゆる組織にとって有効です。特に、「方針の策定」「体制の整備」「継続的改善」の3点は、どの規模・業種の企業にも応用できます。

認証を目指す場合も、まずは日々の業務にファシリティマネジメントの視点を取り入れることから始めるとスムーズです。形式にとらわれすぎず、自社にとって意味のある運用を模索する姿勢が何より重要です。

まとめ

ファシリティマネジメントは、オフィスや設備の管理にとどまらず、組織の戦略や働き方を支える重要な取り組みです。ISO41001の考え方を参考にすることで、活動の方向性を明確にし、継続的な改善にもつなげやすくなります。

まずは、自社にとって最適な環境とは何かを見直し、小さな改善から始めることが成功への第一歩です。ICTやITツールを取り入れた「見える化」により、定量的な判断に基づいたマネジメントをしてみてはいかがでしょうか?


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