地震や火災、豪雨などの災害が発生した際、企業には従業員の安全を迅速に確認することが求められます。その中で見落とされやすいのが、「無事かどうか」だけでなく「今どこにいるのか」を把握する所在確認です。出社・外出・テレワークなど働く場所が分散する現在では、従来の連絡手段だけでは状況を把握しきれないこともあります。本記事では、災害時に従業員の所在確認が必要な理由や安否確認との違い、主な確認方法、BCPに活かすポイントまで解説します。

災害時に従業員の所在確認が必要な理由

災害発生時には、従業員が無事であるかを確認するだけでなく、どこにいるのかを把握することが初動対応を左右します。特に、避難誘導や取り残された人の確認、拠点ごとの被災状況整理を行うには、所在情報が欠かせません。このセクションでは、所在確認と安否確認の違いを整理しながら、企業が従業員の場所を把握する必要性や、確認が遅れた場合に起こり得る影響について解説します。
災害時の所在確認とは?安否確認との違い
安否確認は、従業員が「無事か」「けがをしていないか」「支援が必要か」といった状態を把握することを目的とします。メールや専用システムを通じて本人から回答を得る方法が一般的です。
これに対して所在確認は、「オフィスにいる」「外出先にいる」「自宅にいる」「避難場所へ移動した」など、従業員がどこにいるのかを確認するものです。安否と所在は似ていますが、得られる情報の性質は異なります。
例えば、「無事です」という回答だけでは、本人が建物内に残っているのか、すでに避難できているのかまでは分かりません。反対に、オフィス内にいることが分かっても、けがの有無までは判断できません。
そのため、災害対応では「安否」と「所在」を別の情報として整理し、必要に応じて組み合わせて確認することが望まれます。
従業員が「どこにいるか」を把握する必要性
所在が分かることで、企業は現場ごとに必要な対応を判断しやすくなります。例えば、あるフロアに従業員が残っている可能性があれば、そのエリアを優先して確認できます。
また、外出中の従業員が多い場合には、帰社させるのではなく最寄りの安全な場所で待機してもらうなど、状況に応じた指示を出せます。複数拠点を運営する企業では、被害が大きい拠点と比較的安全な拠点を切り分けるうえでも役立ちます。
特に大規模な施設や工場、病院などでは、同じ建物内にいても居場所が異なるケースがあります。建物単位だけでなく、可能であればフロアやエリア単位で状況を把握できると、初動の精度が高まります。
所在確認の遅れが避難・救助や事業継続に与える影響
所在情報が揃わないまま時間が経過すると、避難完了者と未確認者の区別がつきにくくなります。結果として、すでに避難済みの人を探し続けたり、本当に支援が必要な人の確認が遅れたりする可能性があります。
事業継続の観点でも影響は小さくありません。どの拠点に何人の従業員が残っているのか、誰が業務を継続できるのかが分からなければ、代替拠点への切り替えや要員配置の判断に時間がかかります。
災害発生直後は情報が混乱しやすいため、平時から所在確認の方法を整えておくことが重要です。確認スピードが上がれば、人命に関わる判断だけでなく、その後の復旧や業務再開も進めやすくなります。
災害時の従業員所在確認で起こりやすい課題

災害時は、平常時と同じ連絡手段や情報管理が使えるとは限りません。通信障害やアクセス集中に加え、働く場所が分散していることで、従業員の状況を一元的に把握しにくくなる場合があります。ここでは、電話・メールに依存した確認の限界、勤務場所の多様化、建物内での所在把握という3つの課題を取り上げます。
電話・メールだけでは連絡が取れない可能性がある
大規模災害が発生すると、電話回線や通信網にアクセスが集中し、つながりにくくなることがあります。企業側が一斉に電話をかけても、すべての従業員へ短時間で連絡できるとは限りません。
メールも同様で、受信できたとしても本人が確認できないケースがあります。避難中でスマートフォンを見る余裕がない、端末のバッテリーが切れているといった状況も想定されます。
一つの手段だけに頼るのではなく、安否確認システム、チャット、緊急連絡網など複数の経路を用意しておくことが有効です。本人からの返信を待つ方法に加え、入退館情報や位置情報など別のデータを組み合わせることで、未確認者の絞り込みもしやすくなります。
出社・外出・テレワークなど勤務場所が分散している
働き方の多様化によって、災害発生時に全員が同じオフィスへいるとは限らなくなりました。営業担当者は訪問先、テレワーク中の社員は自宅、出張者は遠方など、所在はさまざまです。
この状態で単純に「出社しているかどうか」だけを見ても、実際の状況は分かりません。勤務予定と実際の居場所が異なる場合もあるため、勤怠データだけでは不十分なことがあります。
平時から勤務場所を把握できる仕組みや、災害時に本人が現在地を報告できる運用を用意しておくと、確認作業を効率化できます。勤務形態に応じて確認方法を分けることも有効です。
建物内のどこにいるのか把握できないケースがある
出社していることが分かっても、建物のどこにいるのかまでは分からないことがあります。特に、複数フロアを持つオフィスや工場、病院では、エリアごとの確認が必要になる場合があります。
避難後の点呼で人数が合わなかった場合、誰がどの場所にいたのか分からなければ、確認範囲が広がります。会議室や倉庫、休憩スペースなど、普段の席以外に滞在している可能性もあります。
このような場面では、フロア単位やエリア単位での在館状況を把握できる仕組みが役立ちます。平常時から人の所在が見える状態をつくっておけば、災害時の確認作業もスムーズになります。

災害時に従業員の所在を確認する主な方法

所在確認には、本人から状況を報告してもらう方法だけでなく、入退館履歴や位置情報を利用する方法があります。それぞれ確認できる範囲や精度、必要な設備が異なるため、一つの手段だけで完結させるのではなく、目的に応じて使い分けることが効果的です。このセクションでは、代表的な3つの確認方法と特徴を紹介します。
安否確認システムで本人から状況を報告してもらう
安否確認システムでは、災害発生時に従業員へ一斉通知を送り、無事かどうかや現在地などを回答してもらいます。管理者は回答状況を一覧で確認できるため、電話で一人ずつ連絡する方法よりも効率的です。
質問項目に「自宅」「会社」「外出先」「避難所」などを設ければ、安否だけでなく大まかな所在も確認できます。
ただし、本人の回答が前提になるため、スマートフォンを操作できない状況では情報が得られません。そのため、別の情報源と組み合わせることが現実的です。
入退館情報・勤怠情報から出社状況を確認する
入退館システムの記録を利用すると、災害発生時点で誰が建物に入っていたかを確認する材料になります。勤怠データと組み合わせれば、その日の出社予定者や勤務中の従業員を把握しやすくなります。
一方で、入館履歴があるからといって、その後も建物内にいるとは限りません。外出時に記録が残っていない場合や、別の出口を利用した場合など、実際の状況と差が生じる可能性があります。
そのため、入退館情報は在館者を推定する情報として使い、点呼や位置情報などと照合することが有効です。
GPS・ビーコンなどの位置情報を活用する
屋外ではGPSを利用することで、スマートフォンなどから現在地を取得できます。営業や出張などで社外にいる従業員の所在確認に適した方法です。
GPSと屋内位置情報は用途が異なるため、どちらか一方を選ぶのではなく、働く場所に応じて使い分けることが効果的です。災害時だけでなく、平常時の所在確認や業務効率化にも活用できます。
従業員の所在確認をBCP・防災対策に活かすポイント

所在確認の仕組みを導入しても、災害発生時に誰が何をするのか決まっていなければ、十分に機能しません。BCPや防災対策へ組み込む際は、確認手順や責任者、未確認者への対応まで明文化しておく必要があります。ここでは、実際の災害時に運用できる体制を整えるためのポイントを紹介します。
災害発生時の確認手順と担当者をあらかじめ決めておく
災害が発生してから「誰が確認するのか」を決めていては初動が遅れます。拠点ごとの責任者や代理担当者を設定し、情報を集約する流れを事前に決めておきましょう。
例えば、フロア責任者が在館者を確認し、本部が全拠点の状況を集約するといった役割分担が考えられます。責任者自身が不在となる可能性もあるため、複数の担当者を設定しておくと安心です。
確認結果の報告先や使用するシステムを統一しておけば、情報が個人のメールやチャットへ分散することも防げます。
所在・安否・避難状況を分けて管理できる体制を整える
「無事である」「会社にいる」「避難済みである」は、それぞれ異なる状態です。これらを一つの項目で管理すると、実際にどの対応が必要なのか判断しにくくなります。
管理画面や一覧表も、この区分が分かる形にしておくと便利です。情報の粒度を揃えることで、複数拠点から報告が集まった場合でも状況を整理しやすくなります。
防災訓練で確認時間や未確認者への対応を検証する
仕組みが機能するかどうかは、実際に訓練してみなければ分かりません。安否確認の回答率だけでなく、全従業員の所在を把握するまでに何分かかったかを計測すると、改善点を見つけやすくなります。
未確認者が出た場合には、誰がどの手段で再確認するのかも検証します。電話、チャット、フロア確認など、代替手段が実際に機能するかを見ることが大切です。
位置情報・ツールを活用した災害時の所在確認

従業員数が多い企業や広い施設では、人手だけで全員の所在を確認するには限界があります。そこで、屋内位置情報を活用すると、平常時から在館状況やエリア別の滞在情報を把握でき、災害時の初動を支援できます。このセクションでは、位置情報による在館者確認の考え方と、Beacapp Hereを利用した活用例を紹介します。
屋内位置情報から在館者・避難状況を把握する
屋内位置情報を利用すると、従業員が建物内のどのエリアにいるのかを把握できます。例えば、災害発生直前に特定フロアで検知されていた従業員を確認できれば、点呼時の照合材料になります。
避難場所にも検知環境を整えておけば、避難前後の所在変化を確認する方法も考えられます。これにより、単純な出社人数だけでは分からない「建物内に残っている可能性がある人」を絞り込みやすくなります。
ただし、位置情報だけで避難完了や安全を断定することはできません。点呼や本人からの安否報告と組み合わせ、複数の情報から状況を確認することが適切です。
Beacapp Hereでできること(従業員の所在・在館状況・避難状況の可視化)
Beacapp Hereは、BLEビーコンなどを活用して、屋内にいる人やモノの所在を可視化できるサービスです。平常時には従業員の所在確認やフリーアドレス運用、設備の位置把握などに利用でき、蓄積した情報を災害時の確認にも役立てられます。
例えば、災害が発生した際に各エリアの在館状況を確認し、点呼結果と照らし合わせることで、未確認者の捜索範囲を絞る材料になります。避難場所側でも位置を検知できる環境を整えている場合には、避難後の所在把握を支援する活用も考えられます。
位置情報は安否確認システムを置き換えるものではなく、本人からの回答だけでは把握しにくい「どこにいるのか」という情報を補完する手段です。安否・所在・避難状況を組み合わせることで、より迅速な意思決定につなげられます。
▶︎ 導入事例はこちらをご参照ください。

まとめ
災害時の従業員確認では、「無事かどうか」という安否だけでなく、「どこにいるのか」という所在情報も把握することが重要です。安否確認システムや入退館履歴、GPS、屋内位置情報などを組み合わせれば、出社・外出・テレワークが混在する環境でも状況を整理しやすくなります。確認手順をBCPへ組み込み、防災訓練で実効性を検証しておくことで、災害発生時の初動や避難・救助、事業継続の判断をより迅速に行える体制づくりにつながります。
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