棚卸を行った際、帳簿上の在庫数と実際の在庫数が合わず、困った経験はないでしょうか。
このような在庫数のズレを「棚卸差異」といい、記録ミスや数え間違い、商品の紛失など、さまざまな原因で発生します。棚卸差異を放置すると、正確な在庫状況を把握できないだけでなく、経営や会計にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、棚卸差異の意味や許容範囲、発生する原因、仕訳方法、差異を減らすための対策についてわかりやすく解説します。

棚卸差異とは?帳簿在庫と実在庫に生じるズレ

棚卸差異とは、帳簿上で記録されている在庫と、実際に数えた在庫との間に生じる数量や金額のズレのことです。まずは棚卸差異の基本的な意味や差異率の計算方法、プラス・マイナスそれぞれの考え方を確認しましょう。
棚卸差異とは「帳簿在庫」と「実在庫」の差
棚卸差異とは、帳簿や在庫管理システムに記録されている「帳簿在庫」と、棚卸によって実際に確認した「実在庫」との差を指します。例えば、帳簿上では商品が100個あるはずなのに、実際に数えると98個しかなかった場合、2個分の棚卸差異が発生していることになります。
棚卸差異は、入出庫時の記録漏れや入力ミス、棚卸時の数え間違い、商品の破損・紛失など、さまざまな原因で発生します。差異が大きくなると正確な在庫状況を把握できず、仕入れや販売計画、会計処理などにも影響するため、原因を特定して改善することが重要です。
棚卸差異率の計算方法
棚卸差異がどの程度発生しているかを把握する際には、「棚卸差異率」が用いられます。棚卸差異率を算出することで、帳簿在庫と実在庫のズレを割合で把握でき、過去の棚卸結果や拠点、商品ごとの比較もしやすくなります。
一般的には、「(実在庫-帳簿在庫)÷帳簿在庫×100」で計算できます。例えば、帳簿在庫が1,000個、実在庫が990個の場合、棚卸差異は-10個、棚卸差異率は-1%です。ただし、企業によって差異率の算出方法や管理基準が異なる場合もあるため、社内で計算方法を統一して継続的に確認することが大切です。
棚卸差異がプラスの場合は「棚卸差益」
実在庫が帳簿在庫より多い状態は、一般的に「棚卸差益」と呼ばれます。例えば、帳簿上では100個と記録されているにもかかわらず、実際には105個あった場合、5個分のプラスの差異が発生している状態です。
在庫が多く見つかったからといって、必ずしも良い状態とは限りません。入庫時の記録漏れや入力ミス、返品処理の漏れ、別の保管場所にあった在庫の記録ミスなどが考えられます。
棚卸差益が発生した場合も、単に帳簿上の数字を修正するだけではなく、「なぜ実在庫が多かったのか」を確認し、在庫管理の手順を見直すことが重要です。
棚卸差異がマイナスの場合は「棚卸差損」
実在庫が帳簿在庫より少ない状態は「棚卸差損」と呼ばれます。例えば、帳簿上では100個あるはずの商品が、実際には95個しか確認できなければ、5個分のマイナスの差異が生じていることになります。
棚卸差損が発生する原因としては、出庫時の記録漏れや棚卸時の数え間違い、商品の破損・廃棄、紛失、盗難などが挙げられます。マイナスの棚卸差異が継続すると、在庫不足による販売機会の損失や追加発注につながる可能性もあります。そのため、差異が生じた原因を確認し、記録方法や保管・管理体制を改善することが大切です。
棚卸差異の許容範囲はどのくらい?

棚卸差異が発生した際、どの程度まで許容できるのか気になる方も多いでしょう。許容範囲に一律の基準はなく、業種や在庫量などによって異なります。自社に適した基準を設定し、継続的に確認・改善することが重要です。
棚卸差異を完全にゼロにするのは難しい
棚卸差異はできる限り小さくすることが理想ですが、完全にゼロにするのは簡単ではありません。在庫を扱う現場では、入出庫時の入力ミスや記録漏れ、商品の数え間違い、破損・紛失など、さまざまな要因によって帳簿在庫と実在庫にズレが生じる可能性があります。
特に、取り扱う商品数が多い場合や、日常的に在庫の移動が発生する現場では差異が生じやすくなります。そのため、差異をゼロにすることだけを目指すのではなく、差異率を継続的に把握し、原因を特定して改善につなげることが重要です。
棚卸差異率の許容範囲・目標値の考え方
棚卸差異率の許容範囲には、すべての企業に共通する明確な基準があるわけではありません。業種や商品の単価、在庫量、管理方法などを踏まえて、自社に適した基準を設定する必要があります。
例えば、差異率が小さくても高額な商品であれば損失額が大きくなることがあるため、割合だけで判断するのは適切ではありません。過去の棚卸結果と比較したり、商品や拠点ごとに差異率を確認したりすることも大切です。差異率と金額の両方に目標値を設定し、基準を超えた場合には原因を調査できる管理体制を整えましょう。
許容範囲を超える棚卸差異を放置するリスク
許容範囲を超える棚卸差異を放置すると、正確な在庫数を把握できなくなり、さまざまな問題につながります。例えば、帳簿上では在庫があるのに実際には商品がなく、販売機会を逃したり、反対に余分な在庫を発注して保管コストが増加したりする可能性があります。
さらに、在庫金額は売上原価や利益の計算にも関係するため、棚卸差異は会計上の数値にも影響します。差異が一定の基準を超えた場合は放置せず、どの工程でズレが発生しているのかを確認し、早めに対策を講じることが重要です。

棚卸差異が発生する主な原因

棚卸差異が発生する原因は一つではありません。代表的なものとして、商品の入出庫時における記録漏れや入力ミス、棚卸時の数え間違い、返品・廃棄処理の漏れなどが挙げられます。また、商品や備品を本来とは異なる場所に移動したまま記録していないことで、所在が分からなくなるケースもあります。
棚卸差異を減らすためには、単に差異の数字を確認するだけでなく、その原因を把握することが大切です。本章では、棚卸差異が発生する主な原因について、具体的に解説します。
入出庫時の記録漏れ・入力ミス
棚卸差異が発生する代表的な原因の一つが、商品の入出庫時における記録漏れや入力ミスです。実際には商品が移動していても帳簿やシステムに正しく反映されていなければ、帳簿在庫と実在庫にズレが生じます。
棚卸時の数え間違いや二重カウント
棚卸作業そのものにおける数え間違いや二重カウントも、棚卸差異が発生する原因です。例えば、一度数えた商品を別の担当者が再び数えたり、似た商品を取り違えてカウントしたりすると、実在庫を正確に把握できません。
特に商品数や保管場所が多い場合、複数人で棚卸を行うと確認漏れや重複が発生しやすくなります。作業範囲や担当者を明確にする、カウント済みの商品に印を付けるなど、統一したルールを設けることが大切です。また、バーコードなどを活用して作業を効率化することも、人的ミスの防止につながります。
返品・破損・廃棄などの処理漏れ
返品や破損、廃棄などが発生した際、在庫情報に正しく反映されていないと棚卸差異につながります。例えば、破損した商品を現場では廃棄していても、帳簿上で在庫を減らす処理をしていなければ、実在庫が帳簿在庫より少なくなります。
返品についても、顧客から戻ってきた商品を在庫に反映し忘れることで差異が生じる可能性があります。こうした処理漏れを防ぐには、返品・破損・廃棄が発生した際の対応手順を明確にし、速やかに在庫情報へ反映することが重要です。担当者によって処理方法が変わらないよう、社内ルールを統一することも有効です。
商品の紛失・盗難や保管場所の間違い
商品の紛失や盗難、保管場所の間違いも、棚卸差異を引き起こす原因となります。帳簿上では在庫が存在していても、決められた場所に商品がなく棚卸時に確認できなければ、実在庫が少ないと判断される可能性があります。
特に、商品や備品を頻繁に移動する現場では、移動先が記録されておらず「どこにあるのかわからない」という状況が起こりやすくなります。保管場所を明確にするとともに、移動時の記録を徹底することが重要です。また、位置情報を活用してモノの所在を把握できる仕組みを導入することも、探索時間の削減や管理の効率化につながります。
棚卸差異が発生した場合の仕訳方法

棚卸差異が発生した場合は、実在庫に合わせて帳簿上の在庫を修正し、適切な会計処理を行う必要があります。ここでは、棚卸差異がマイナス・プラスになった場合の基本的な仕訳の考え方を解説します。
棚卸差異がマイナス(棚卸差損)の場合の仕訳
帳簿在庫より実在庫が少ない場合は、マイナスの棚卸差異が発生している状態です。例えば、帳簿上の商品在庫が100万円、実際の商品在庫が98万円であれば、2万円の差異が生じています。
このような場合、差異の内容に応じて「棚卸減耗損」などの勘定科目を用いて処理します。棚卸減耗損2万円を借方に、商品2万円を貸方に計上するのが仕訳の一例です。ただし、企業の会計方針や差異が発生した理由などによって処理方法は異なるため、自社のルールに沿って適切に処理しましょう。
棚卸差異がプラス(棚卸差益)の場合の仕訳
帳簿在庫より実在庫が多い場合は、プラスの棚卸差異が発生しています。例えば、帳簿上の商品在庫が100万円であるのに対し、実際には102万円分あった場合、2万円分の差異を帳簿に反映する必要があります。
仕訳では、実在庫に合わせて商品などの資産を増加させ、差額を適切な勘定科目で処理します。ただし、プラスの差異についても、入庫時の記録漏れや返品処理のミスなど、原因によって必要な処理が変わる可能性があります。差益として一律に処理するのではなく、原因や自社の会計方針を確認したうえで判断することが重要です。
仕訳だけで終わらせず差異の原因を確認する
棚卸差異が見つかった場合、帳簿を実在庫に合わせて修正するだけで終わらせないことが大切です。原因を特定しなければ、次回の棚卸でも同じような差異が発生する可能性があります。
入出庫の記録漏れや数え間違い、返品・廃棄の処理漏れ、商品の紛失など、差異が発生した工程を確認しましょう。また、差異が繰り返し発生する商品や拠点を記録しておくことで、問題の傾向も把握しやすくなります。仕訳による数字の修正と、現場における原因究明・再発防止をセットで行うことが重要です。

棚卸差異を減らすための5つの対策

棚卸差異を減らすためには、差異が発生してから修正するだけでなく、日頃から正確に在庫を管理する仕組みづくりが欠かせません。具体的には、入出庫記録の徹底、棚卸ルールの統一、保管場所の整理、定期的な棚卸の実施、ITツールの活用などが挙げられます。
特に、人の手による記録や確認作業が多いほど、入力漏れや数え間違いなどが発生する可能性があります。自社で差異が生じやすい工程を把握したうえで、運用ルールとツールの両面から改善していくことが大切です。
入出庫の記録を正確かつ迅速に行う
棚卸差異を減らすには、商品や備品の入出庫を正確に記録することが重要です。移動後にまとめて入力すると記録漏れやミスにつながるため、入出庫が発生したタイミングで速やかに情報を更新する仕組みを整えましょう。
棚卸・在庫管理のルールを統一する
棚卸や在庫管理の方法が担当者によって異なると、数え間違いや記録漏れなどが発生しやすくなります。そのため、誰が作業しても同じ方法で管理できるよう、社内のルールを統一することが重要です。
例えば、入出庫を記録するタイミングや入力方法、棚卸の手順、差異が見つかった場合の対応などを明確にしておきましょう。マニュアルやチェックリストを作成するほか、担当者への教育を定期的に実施することも有効です。属人的な管理を減らし、共通のルールに沿って運用することで、棚卸差異の発生を抑えやすくなります。
在庫の保管場所を整理・明確化する
在庫の保管場所が決まっていなかったり、同じ商品が複数の場所に分散していたりすると、棚卸時の確認漏れや二重カウントにつながる可能性があります。商品や備品ごとに保管場所を定め、誰でも所在を把握できる状態にしておくことが大切です。
棚や保管スペースに番号や名称を付けるなど、管理しやすい環境を整えましょう。また、モノを別の場所へ移動した際には、その情報を速やかに記録するルールも必要です。「どこに何があるか」を把握しやすくすることで、棚卸時の探索や確認にかかる手間も減らせます。
定期的に棚卸を実施して差異を早期発見する
棚卸を定期的に実施することも、棚卸差異を減らすための対策です。棚卸の間隔が長くなるほど、差異が見つかった際に「いつ・どこで・なぜ発生したのか」を特定することが難しくなります。
年に一度の決算時だけでなく、月次や週次など自社に適した頻度で在庫を確認すると、差異を早い段階で発見しやすくなります。すべての在庫を一度に確認することが難しい場合は、商品やエリアを分けて定期的に確認する方法もあります。差異を早期に把握し、その都度原因を改善していくことが重要です。
ITツールを活用してモノの管理を効率化する
棚卸やモノの管理を効率化するには、ITツールの活用も有効です。在庫管理システムやバーコード、RFIDなどを導入すれば、手作業による入力や確認を減らし、記録漏れや数え間違いの防止につなげられます。
また、備品や機器などの管理では、位置情報を活用してモノの所在を可視化する方法もあります。どこにあるのかを把握しやすくなれば、棚卸時に対象物を探す手間の削減にもつながります。管理するモノの種類や業務上の課題に合わせて、適切なツールを選ぶことが大切です。
棚卸業務の効率化には「モノの所在の見える化」も重要

棚卸業務では、数量を正確に確認するだけでなく、管理対象となる備品や資産がどこにあるのかを把握することも重要です。モノの所在を見える化することで、棚卸時の探索や確認にかかる負担を軽減できます。
備品や資産の「どこにあるかわからない」が棚卸の負担につながる
オフィスや工場、倉庫などでは、PCや工具、機器、台車といった備品・資産が日常的に移動することがあります。保管場所や移動先が適切に記録されていないと、棚卸時に「あるはずのモノが見つからない」という事態が発生し、担当者が探し回らなければなりません。
特に管理するモノの数や拠点が多いほど、一つひとつ所在を確認する作業は大きな負担になります。棚卸を効率化するには、数量の管理に加えて、備品や資産の所在を把握しやすい環境を整えることが重要です。
位置情報を活用してモノを探す時間や確認作業を削減する
備品や資産の所在管理には、位置情報を活用する方法があります。モノの位置をシステム上で確認できる環境を整えることで、担当者がフロアや倉庫内を歩き回って探す時間や、ほかの従業員に所在を確認する手間を削減できます。
また、日頃からモノの位置を把握しやすくしておけば、棚卸時にも対象物を見つけやすくなり、確認作業の効率化が期待できます。特に、社内で頻繁に移動する備品や複数人で共有する機器などは、位置情報を活用した管理と相性がよいでしょう。
Beacapp Tagで備品や資産の所在を見える化
備品や資産の所在管理を効率化する方法の一つが、Beacapp Tagの活用です。位置情報を利用してモノの所在を見える化することで、「必要な備品がどこにあるかわからない」といった状況を減らし、探索や確認にかかる時間の削減につなげられます。
棚卸時だけでなく、日常的な備品・資産管理を効率化できる点もメリットです。PCや機器、工具など、移動するモノの管理に課題を感じている場合は、位置情報を活用した管理方法を取り入れることで、より効率的な運用を目指せます。

まとめ
棚卸差異は、帳簿在庫と実在庫のズレによって発生し、記録漏れや数え間違い、紛失などさまざまな原因が考えられます。差異を減らすには、入出庫の記録や管理ルールを徹底するとともに、定期的に棚卸を実施することが重要です。
また、備品や資産の所在を見える化することも、棚卸業務の効率化につながります。Beacapp TagなどのITツールも活用しながら、モノを適切に管理できる環境を整え、棚卸にかかる負担を軽減しましょう。
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