オフィスで「誰がどこにいるのか」を把握するために、位置情報や座席管理の仕組みを自社で開発している企業もあります。最近では、AIを活用すれば自社でも作れるのでは、と考える方もいるかもしれません。実際に、Beacapp Hereをご提案する中でも、自社開発したシステムを利用している企業様からご相談をいただくことがあります。
自社に合った仕組みを作れることは魅力ですが、大切なのは開発時だけでなく、その後も無理なく使い続けられるかどうかです。本記事では、社員の使いやすさや運用負担、費用などの観点から、位置情報の仕組みを選ぶ際に考えておきたいポイントをご紹介します。

位置情報の把握を、自社開発で実現するという選択肢

位置情報や座席管理の仕組みを自社で開発する良さは、職場の事情に合わせて形にできることです。必要な機能や画面の見せ方を工夫でき、既存の設備や開発体制を生かせる場合には、費用面でもメリットが期待できます。
ここでは自社で開発する場合のメリットと注意点を解説します。
自社に必要な機能に絞って作れる魅力
自社開発の大きなメリットは、自社の業務や働き方に合わせて、必要な機能を自由に設計できることです。
既存のサービスでは、あらかじめ用意された機能や仕様に合わせて運用する必要がある場合もあります。一方、自社開発であれば、「誰がどの座席を利用しているかを確認したい」「部署ごとの出社状況を把握したい」など、自社が必要とする情報や機能に絞って仕組みを作ることができます。
また、社員が使い慣れた操作方法や社内のルールに合わせて設計できることも魅力の一つです。開発・保守を担う体制が整っていれば、実際に利用する社員の声を取り入れながら、機能の追加や改善を進めることもできます。さらに、既存の設備や社内の開発体制を活用することで、外部への開発委託などにかかる支出を抑えられる場合もあります。
必要な機能や利用範囲が明確で、開発後の運用・保守まで対応できる体制がある企業にとって、自社開発は自分たちに合った仕組みを実現するための有力な選択肢の一つといえるでしょう。
座席の利用と、今いる場所の把握はどう違う?
職場内の位置情報を可視化する仕組みは、大きく分けて「誰がどの座席を利用しているか」を把握するものと、「誰が今どこにいるか」を把握するものの2つがあります。ここで注意したいのは、もともと「誰が今どこにいるかを把握したい」と考えていたはずが、システムを検討するうちに「誰がどの座席を利用しているかを把握したい」という目的に変わってしまうことです。
確かに、「座席を利用している=その座席にいる」と考えることはできます。しかし、業務中ずっと同じ座席に座っていることは、意外と少ないのではないでしょうか。会議や来客対応はもちろん、ちょっとした相談のために席を離れることもあります。こうした座席を離れた後の移動も含めて把握できるのが、「その人が今どこにいるか」を可視化する仕組みです。
一方、座席の利用状況を可視化するシステムの多くは、出社時に座席を予約したり、利用する際に二次元コードを読み取ったりすることで、「誰がどの座席を利用しているか」を記録する仕組みです。二次元コードを座席に貼り付けるだけで運用を始められるものもあり、比較的低コストで手軽に導入しやすい点が特徴です。実際に、Beacapp Hereをご提案する中でも、自社開発したシステムで座席の利用状況を管理されている企業様にお会いすることがあります。
ただし、こうした仕組みで把握できるのは、基本的に「どの座席を利用していることになっているか」という情報です。座席を離れた後の居場所まで把握できるとは限りません。大切なのは、座席の利用状況を把握したいのか、それとも人の居場所を把握したいのか。何を可視化したいのかによって、必要な仕組みも変わってくるということです。
日々の移動を、どこまで登録してもらえるか

座席の予約や二次元コードの読み取りによって所在を把握する仕組みでは、社員自身による情報の登録・更新が必要になります。出社時の登録は習慣化できても、業務中の移動まで同じように対応できるのでしょうか。実際のオフィスでの働き方を踏まえながら、手動登録による所在把握の課題を考えてみます。
「ちょっと5分」の移動にも登録は必要?
オフィスで働いていると、会議や来客対応など、予定されている移動以外にも席を離れる機会は多いものです。たとえば、隣の部署の社員にちょっと相談したいときや、立ち話から「せっかくだから、あそこのスペースで話そうか」と急な打ち合わせが始まることもあるでしょう。こうした移動のたびに、社員は忘れずに居場所を登録してくれるでしょうか。
出社時に座席を登録することは習慣化できても、数分の移動のたびにシステムを開いたり、二次元コードを読み取ったりするのは、意外と負担になるものです。特に、業務が立て込んでいるときほど、登録作業は後回しになりやすいのではないでしょうか。
もちろん、社員が忘れずに登録すれば解決する問題かもしれません。しかし、正確な所在情報を維持するためには、登録忘れを社員個人の問題として捉えるのではなく、そもそも日常の行動に合った仕組みになっているかを考えることも大切です。
登録された場所と、実際にいる場所のずれ
手動で情報を更新する仕組みでは、登録された場所と実際にいる場所が一致しないことがあります。出社時に座席を登録していても、その後の会議や打ち合わせで移動した際に情報が更新されなければ、システム上では「朝登録した座席」にいることになってしまいます。表示された場所へ行っても目的の社員に会えず、結局チャットや電話で居場所を確認することになるかもしれません。
また、登録情報が古いという問題だけでなく、そもそも必要な情報が登録されていないケースも考えられます。複数人でフリースペースを利用する際、代表者だけが二次元コードを読み取り、ほかの社員は登録しないまま利用することもあるでしょう。その場合、実際には複数人が利用していても、システム上では一人しか確認できません。登録方法によっては、利用人数や所在を正しく把握できなくなる可能性があります。
座席の利用状況を知りたいのか、社員の現在の居場所まで把握したいのかによって、必要な情報は異なります。位置情報の仕組みを検討する際は、位置を検知する技術そのものの精度だけでなく、登録された情報が実際の状況をどこまで反映できているのかにも目を向けたいところです。
導入企業が感じていた、手動更新の難しさ
実際に、Beacapp Hereを導入いただいた企業様の中にも、以前は社員自身が居場所を登録する仕組みを利用されていた企業があります。
トヨタ自動車株式会社様では、フリーアドレス化に伴い、社員が自分の居場所を入力するシステムを運用されていました。しかし、入力漏れや移動後の更新が追いつかず、登録された場所に本当にその人がいるのか分からないという課題がありました。特に、役職が高くなるほど移動が多く、細かな登録操作をする時間も取りづらいため、手動での所在把握には限界を感じていたといいます。
また、水道機工株式会社様では、二次元バーコードを読み取って所在を記録する仕組みを自社開発されていました。出社時や会議室の利用時にチェックインする運用でしたが、朝登録した場所から情報が更新されなかったり、退社後もオフィス内にいることになっていたりと、実際の人の動きを十分に反映できていませんでした。
同社では、こうした経験から、社員の操作に頼らず、自動で位置情報が更新されることを重視し、Beacapp Hereの導入を決定しました。
▶︎ トヨタ自動車様・水道機工様の導入事例全文を読む
https://jp.beacapp-here.com/case/form/
※上記ページから、2社の事例を含むBeacapp Hereの導入事例をまとめてダウンロードいただけます。

仕組みを作った後、誰が支えていくのか

自社開発したシステムは、完成すればそれで終わりというわけではありません。オフィスのレイアウト変更や社員の異動、利用する端末の変更など、職場の環境は少しずつ変化していきます。こうした変化に対応しながら、日々の問い合わせや不具合にも対応する必要があります。
では、その運用を誰が担っていくのでしょうか。
レイアウトや利用環境が変わったときの対応
オフィスのレイアウトは、一度決めたらずっと同じというわけではありません。組織変更や増員、フリーアドレス化などに伴い、座席の配置や会議室の用途が変わることもあります。
位置情報をマップ上に表示するシステムでは、こうした変更に合わせてマップ画像や座席情報を更新する必要があります。さらに、利用者の追加や部署異動に伴う登録情報の変更、スマートフォンやパソコンのOS更新への対応など、運用中に発生する作業は少なくありません。
もちろん、どのような対応が必要になるかは、システムの構成によって異なります。社内の既存システムと連携し、利用者情報を自動で更新できる仕組みであれば、担当者の負担を減らすこともできるでしょう。
一方、開発当初は問題なく利用できていたとしても、職場の変化に合わせた更新が追いつかなければ、実際のオフィスとシステム上の情報にずれが生じてしまいます。システムを構築する際には、現在の職場に合っているかだけでなく、今後の変更にも無理なく対応できるかを考えておきましょう。
社員への案内や問い合わせ対応も運用の一部
システムの運用というと、プログラムの修正や不具合への対応を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には社員が問題なく使えるようにするためのサポートも欠かせません。新しく入社した社員への利用方法の説明や、操作マニュアルの作成、利用者から寄せられる質問への回答なども、日々の運用業務の一つです。
「登録したのに表示されない」「画面の操作方法が分からない」といった問い合わせがあれば、原因を確認し、必要に応じて対応することになります。問い合わせを受けるのは情報システム部門だけとは限らず、総務や各部署の担当者が窓口になるケースもあるでしょう。
また、こうした業務は自社開発に限った話ではありません。外部サービスを導入した場合でも、社内への周知や利用者への案内など、企業側で対応する作業は残ります。だからこそ、自社でどこまで対応する必要があるのか、困ったときに誰に相談できるのかという点も、システムを比較する際の判断材料になります。
担当者が変わっても、使い続けられるか
自社開発したシステムで見落としたくないのが、開発を担当した社員が異動や退職をした後のことです。特定の担当者だけがシステムの構造や設定方法を理解している場合、その人がいなくなると、不具合の原因を調べたり、新しい機能を追加したりすることが難しくなる可能性があります。特に、開発当時の設計資料や操作手順が残っていなければ、後任者は仕組みを理解するところから始めなければなりません。日常的には問題なく動いていても、いざ修正が必要になったときに対応できる人がいない、という状況は避けたいものです。
近年、企業を標的としたサイバー攻撃や情報漏洩が問題となる中、位置情報システムにおいても、従業員の所在情報などを適切に管理する必要があります。例えば、システムの脆弱性への対応やソフトウェアの更新、アクセス権限の管理など、導入後も継続的な対応が求められます。自社開発の場合、こうした対策を誰が担当し、問題が発生した際にどのように対応するのかまで含めて、運用体制を整えておくことが重要です。
自社開発であっても外部サービスであっても、継続的な運用体制は必要です。ただし、自社開発の場合は、こうした保守や改修を誰が担うのかまで含めて、社内で考えておく必要があります。
自社開発と外部サービス、費用をどう考える?

位置情報の仕組みを自社開発するか、外部サービスを利用するかを考える際、大きな判断材料になるのが費用ではないでしょうか。自社開発であれば外部への支払いを抑えられる可能性がある一方、社内での開発や運用には時間も手間もかかります。
では、それぞれの費用をどのように比較すればよいのでしょうか。
外部への支払いと、社内でかけている手間
自社開発の魅力の一つは、既存の設備や社内の開発体制を活用することで、外部への支払いを抑えられる可能性があることです。特に、すでに開発を終えているシステムであれば、新たな費用をほとんどかけずに運用できているように見えるかもしれません。
しかし、前のセクションで紹介したマップの更新や利用者情報の管理、社員からの問い合わせ対応などには、担当者の時間が使われています。
仮に、担当者がシステムの運用に毎月10時間を費やし、1時間あたりの人件費を3,000円とすると、月3万円、年間では36万円に相当します。これはあくまで仮の計算ですが、外部への支払いが発生していなくても、社内では一定のコストがかかっていることが分かります。
また、外部サービスには、その仕組みや運用に詳しい提供会社に相談できるというメリットもあります。自社であれば原因の調査や対応方法の検討に何時間もかかる問題でも、同様の課題に対応してきた提供会社に相談することで、解決までの時間を短縮できるかもしれません。
もちろん、外部サービスを導入しても社内の対応がすべてなくなるわけではなく、相談できる範囲もサービスによって異なります。費用を比較する際には、こうしたサポート体制や、社内担当者の負担をどこまで減らせるかという点も考慮したいところです。
その費用で、どの課題を解消したいのか
では、社内の運用に時間がかかるからといって、外部サービスを利用した方がよいのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。自社開発で必要な機能を十分に実現でき、無理なく運用できる体制が整っているのであれば、有力な選択肢になるでしょう。すでに自社開発したシステムを利用している場合も、目的を果たせているのであれば、無理に変更する必要はありません。
一方、社員の登録負担が大きく、必要な情報を正しく把握できなかったり、担当者が日々の問い合わせや修正作業に追われていたりする場合は、仕組みを見直す余地があるかもしれません。外部サービスの利用には費用がかかりますが、自社だけでは対応が難しい課題を解決できる可能性もあります。
大切なのは、初期費用や月額料金の安さだけで判断しないことです。自社で実現したいことは何か、そのためにどれだけの費用や手間がかかるのか。開発・導入後の運用まで含めて比較することで、自社に合った仕組みを選びやすくなるでしょう。

自社に合う位置情報の仕組みを選ぶために

自社開発と外部サービスのどちらを選ぶ場合でも、導入後の運用をすべて自社で抱える必要があるのか、どこまで外部のサポートを受けられるのかは確認しておきたいポイントです。必要な機能だけでなく、社内の体制や提供会社との役割分担も踏まえて、自社に合った仕組みを考えてみましょう。
自社で担いたいこと、外部に任せたいことを整理する
位置情報の仕組みを運用するには、システムの保守だけでなく、社員への周知や利用ルールの整備、利用者情報の管理など、さまざまな対応が必要です。
自社開発であれば、こうした運用を自社の判断で柔軟に進められる一方、システムの改修や不具合への対応も社内で担うことになります。外部サービスの場合は、サービスそのものの保守や機能改善を提供会社が担うため、社内の担当者は利用環境の整備や社員への案内などに注力しやすくなります。もちろん、提供会社によってサポートの範囲は異なります。
自社で対応したいことと、専門的な知識を持つ提供会社に任せたいことを整理しておくと、サービスを比較する際にも判断しやすくなるでしょう。
Beacapp Hereで検討できること
Beacapp Hereは、社員の居場所を自動で可視化する仕組みに加え、企業ごとの利用環境や運用方法に応じた柔軟な活用をご提案しています。たとえば、既存の社内システムとの連携や、オフィスの規模・働き方に合わせた導入方法の検討など、標準機能を活用しながら、自社の環境に合った運用を目指すことができます。
また、導入後の運用や機能に関するご相談にも対応しています。実際に、トヨタ自動車株式会社様では、運用中に生じた要望に対し、社内のシステム部門とも連携しながら機能や運用方法を調整してきました。
「自社で開発しようとしている仕組みを、既存のサービスで実現できないか」「現在の運用負担を減らす方法はないか」といった段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ
位置情報の仕組みを自社開発することには、必要な機能を自由に設計できたり、外部への支出を抑えられたりするメリットがあります。一方で、開発した仕組みが社員の働き方に合っているか、必要な情報を正しく把握できるか、無理なく運用を続けられるかという視点も欠かせません。
大切なのは、自社開発と外部サービスのどちらが優れているかではなく、自社が実現したいことに合った仕組みを選ぶことです。導入時の費用や機能だけでなく、日々の使いやすさや運用にかかる手間も含めて、長く活用できる方法を考えてみてはいかがでしょうか。
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