「プロジェクトの採算が合っているのかわからない」「特定の社員に業務が偏っている」「工数管理表への入力や集計に時間がかかっている」といった課題を抱えている企業は少なくありません。
こうした課題の把握や改善に役立つのが「工数管理」です。本記事では、工数管理とは何かという基本から、工数管理を行うメリット、工数管理表の作り方、ツールを活用した効率化まで解説します。さらに、工数データだけでは見えにくい「実際の働き方」を可視化する方法についても紹介します。

工数管理とは?基本的な意味と目的

工数管理とは、業務やプロジェクトに「誰が・どの作業に・どれくらいの時間を費やしたか」を把握・管理することです。まずは工数の意味や勤怠管理との違い、企業が工数管理を行う目的について整理します。
工数とは「作業に必要な時間と人数」を表す指標
工数とは、業務やプロジェクトを完了するために必要な作業量を、時間と人数をもとに表した指標です。一般的には「作業時間×人数」で考え、1人で8時間かかる業務であれば「8人時」、2人で4時間ずつ作業する場合も「8人時」となります。
工数を把握することで、どの業務にどれくらいの人的リソースを使っているのかを数値で確認できます。プロジェクトの計画や進捗を管理するだけでなく、原価計算や適切な人員配置を考えるうえでも重要な指標といえるでしょう。
工数管理と勤怠管理の違い
工数管理と勤怠管理は、どちらも社員の「時間」を扱いますが、管理する目的が異なります。勤怠管理は、出勤・退勤時刻や休憩、残業、休日などを記録し、社員が「何時間働いたか」を把握するためのものです。
一方、工数管理では、その勤務時間の中で「どの業務に何時間使ったか」を把握します。例えば8時間勤務した社員が、Aプロジェクトに5時間、社内会議に1時間、その他の業務に2時間使ったといった内訳を管理します。勤怠管理が労働時間そのものを把握するのに対し、工数管理は労働時間の「使われ方」を把握するものといえるでしょう。
工数管理の目的は業務時間・コスト・人員配置の可視化
工数管理の主な目的は、業務に投入している時間や人的リソースを可視化し、業務改善や経営判断に役立てることです。プロジェクト別・業務別に工数を把握すれば、人件費を含めた原価や採算性も確認しやすくなります。
さらに、「特定の業務に想定以上の時間がかかっている」「一部の社員に仕事が集中している」といった課題の発見にもつながります。工数データをもとに業務の状況を客観的に捉えることで、業務効率化や適切な人員配置を検討しやすくなります。
工数管理を行う4つのメリット

工数管理は、単に社員の作業時間を記録するためのものではありません。プロジェクトの採算や業務効率、社員ごとの負荷などを把握し、組織全体の生産性を改善するための判断材料として活用できます。
プロジェクトごとの原価・採算を把握できる
プロジェクトごとの作業時間を把握することで、投入した人件費を算出しやすくなり、案件ごとの原価や採算を確認できます。売上だけを見ると利益が出ているように見えても、想定以上の工数が発生していれば、実際の利益率は低くなっているかもしれません。
予定工数と実績工数を比較すれば、採算が悪化しているプロジェクトの早期発見にもつながります。蓄積した工数データは、次回以降の見積もりや予算設定の精度を高める材料としても活用できるでしょう。
業務の無駄や非効率な作業を発見できる
工数を業務別に記録すると、社員がどのような作業に時間を使っているのかを可視化できます。例えば、資料作成や社内会議、情報検索などに想定以上の時間がかかっていることがわかれば、業務プロセスを見直すきっかけになります。
「忙しい」という感覚だけでは、どこを改善すればよいのか判断することは困難です。業務別の工数をデータとして把握することで、削減・自動化すべき業務や、反対に時間を増やすべき重要業務を判断しやすくなります。
社員の業務負荷を把握して適切な人員配置につなげられる
社員別の工数を確認すると、業務負荷の偏りを把握しやすくなります。特定の社員だけが複数のプロジェクトを抱えていたり、長時間を要する業務に集中していたりする場合には、他のメンバーへの業務移管や担当者の追加などを検討できます。
部署やチーム単位で工数を比較することで、人員に余裕がある部門と不足している部門を把握する材料にもなります。業務量をデータで捉えることにより、担当者の経験や感覚だけに頼らず、組織全体の状況を踏まえた人員配置を検討しやすくなるでしょう。
プロジェクト計画や見積もりの精度を高められる
工数管理を継続すると、「この作業には平均して何時間かかるのか」「この規模のプロジェクトには何人必要なのか」といった実績データが蓄積されます。過去の工数を参考にすることで、新しいプロジェクトに必要な時間や人員を予測しやすくなります。
担当者の経験だけに依存した見積もりでは、実際に必要な工数とのずれが生じる場合があります。過去の実績と予定工数を比較しながら計画を立てることで、より現実的なスケジュールや予算を設定できるでしょう。

工数管理表を使った工数管理の方法

工数管理を始める際は、ExcelやGoogleスプレッドシートなどを使って「工数管理表」を作成する方法があります。必要な項目を整理して日々の作業時間を記録すれば、比較的手軽に工数の可視化を始められます。
工数管理表に必要な基本項目
工数管理表には、「日付」「社員名」「部署」「プロジェクト名」「業務・タスク名」「作業時間」などの項目を設定するのが基本です。必要に応じて予定工数や進捗率、備考などを追加すると、計画と実績を比較しやすくなります。
大切なのは、工数管理を行う目的に合わせて項目を決めることです。採算管理が目的ならプロジェクト単位、業務改善が目的ならタスク単位など、分析したい内容に合わせて記録します。ただし、項目が多すぎると入力負担が増えるため、必要な情報を見極めることも重要です。
Excel・スプレッドシートで工数管理表を作成する方法
ExcelやGoogleスプレッドシートを利用する場合は、日付、社員名、プロジェクト名、業務内容、作業時間などを入力できるフォーマットを作成します。SUMIFやSUMIFS、ピボットテーブルなどを活用すれば、社員別・プロジェクト別・業務別の工数を集計できます。
専用システムを導入せずに始められるため、少人数のチームや、工数管理を試験的に始めたい企業にも取り入れやすい方法です。最初から複雑な管理表を作るのではなく、必要最低限の項目からスタートし、実際の運用に合わせて改善していくとよいでしょう。
工数管理表を運用するときに注意したいポイント
工数管理表では、表を作成すること以上に、継続して正確なデータを蓄積することが重要です。入力方法やタイミングが社員によって異なると、データにばらつきが生じ、正確な分析が難しくなってしまいます。
「毎日退勤前に入力する」「30分単位で記録する」など、社内で一定のルールを決めておきましょう。入力されたデータを定期的に確認し、実際の業務改善に活用することも欠かせません。何のために工数を記録するのかを社員に共有し、管理すること自体が目的にならないよう注意が必要です。
工数管理ツールを導入するメリットと選び方

プロジェクトや社員数が増えるほど、Excelなどを使った手作業の工数管理には限界が生じます。入力や集計の負担を抑えながら工数データを活用するには、専用の工数管理ツールを導入することも有効です。
Excelによる工数管理で起こりやすい課題
Excelは手軽に工数管理を始められる一方で、社員数やプロジェクト数が増えると管理が複雑になりやすい点に注意が必要です。社員ごとにファイルを作成している場合には、管理者によるデータの集約が必要となり、転記ミスや集計漏れが発生する可能性もあります。
入力ルールが統一されていないと、同じ業務が異なる名称で登録され、正確に集計できないケースも考えられます。複数人でファイルを扱う場合は更新や版管理も煩雑になるため、管理する人数やデータ量が増えてきた段階で運用方法を見直すことが大切です。
工数管理ツールなら入力・集計・分析を効率化できる
工数管理ツールを導入すると、社員が入力した工数を自動で集計し、プロジェクト別・社員別・業務別など、さまざまな切り口から確認できます。製品によっては、勤怠管理やカレンダー、プロジェクト管理システムなどと連携し、入力作業を効率化することも可能です。
予定工数と実績工数の比較や稼働状況の可視化、レポート作成などに対応したツールもあります。管理者がExcelを集計して資料を作成する時間を削減できれば、データをもとに課題を分析し、改善策を検討する業務に時間を充てやすくなるでしょう。
工数管理ツールを選ぶ際に確認したいポイント
工数管理ツールを選ぶ際は、機能の多さだけでなく、社員が無理なく使い続けられるかを確認することが重要です。入力画面のわかりやすさやスマートフォンへの対応、既存システムとの連携、分析機能、権限設定など、自社の運用に必要な条件を整理しましょう。
あわせて、工数管理を行う目的を明確にしておくことも大切です。採算管理、業務改善、人員配置など、目的によって必要な機能は変わります。無料トライアルが用意されている場合は、実際の業務で操作性や入力負担を確認したうえで導入を判断するとよいでしょう。

工数管理を成功させるためのポイント

工数管理表やツールを導入しても、入力作業が社員の負担になったり、集めたデータが活用されなかったりすれば十分な効果は得られません。工数管理を形骸化させず、業務改善につなげるためのポイントを押さえましょう。
工数を細かく分類しすぎない
正確なデータを集めようとして業務やタスクを細かく分類しすぎると、社員の入力負担が増えてしまいます。「メール対応」「資料確認」「社内チャット」など、すべての行動を細分化すると、工数を記録すること自体に時間がかかる可能性があります。
まずはプロジェクトや主要業務など、改善に必要な単位で分類しましょう。「このデータを使って何を判断したいのか」という目的から必要な項目を決めることで、入力のしやすさと分析に必要な情報量のバランスを取りやすくなります。
入力・記録の負担をできるだけ減らす
工数管理を定着させるには、社員の入力負担をできるだけ小さくすることが大切です。毎日の入力に多くの時間が必要になると、記録が後回しになったり入力忘れが増えたりして、実態と異なるデータが蓄積される可能性があります。
選択式の項目を活用する、勤怠管理やカレンダーと連携する、スマートフォンから入力できる環境を整えるなど、記録しやすい仕組みを検討しましょう。管理側の分析だけでなく、「現場が無理なく続けられるか」という視点を持つことが工数管理の定着につながります。
集めた工数データを分析し業務改善につなげる
工数管理は、データを記録すること自体が目的ではありません。蓄積したデータから課題を見つけ、改善につなげて初めて効果を発揮します。予定より工数が多いプロジェクトがあれば、その原因を確認し、業務プロセスや人員配置を見直すことが重要です。
改善策を実施した後は、工数がどのように変化したかを確認することで施策の効果も検証できます。「記録・分析・改善・効果検証」というサイクルを繰り返し、工数データを継続的な業務改善や経営判断に活用していきましょう。
工数管理だけでは見えない「実際の働き方」も可視化しよう

工数管理によって「何の業務に何時間かかったか」は把握できます。一方、自己申告された工数だけでは、社員が実際にどこでどのように働いているのかまでは見えません。業務や働く環境を改善するためには、実際の行動データを組み合わせる視点も重要です。
自己申告の工数データだけでは働き方の実態を把握しにくい
一般的な工数管理では、社員自身が「A業務に3時間」「Bプロジェクトに2時間」といった形で作業時間を入力します。そのため、どの業務に時間を使ったかは把握できても、その時間に「どこで働いていたのか」といった実際の行動まではわかりません。
例えば、同じオフィス勤務でも、自席での個人作業が中心なのか、会議室や他部署のエリアを行き来しているのかによって働き方は異なります。工数だけでは捉えにくい実態を把握するには、ほかのデータと組み合わせて分析することも有効です。
位置情報や行動ログを組み合わせて働き方を可視化する
工数データに位置情報や滞在データなどを組み合わせることで、社員の働き方をより多面的に捉えられます。例えば、「どのエリアの利用が多いのか」「部署によってオフィスの使い方に違いがあるのか」といった状況を確認することで、工数だけでは見つけにくい課題を発見できる可能性があります。
こうしたデータは、ABWやフリーアドレスの運用改善、オフィスレイアウトの見直しなどを検討する際にも役立ちます。自己申告のデータだけではなく、実際のオフィス利用状況を客観的に捉えることで、働き方の実態に即した改善策を検討しやすくなるでしょう。
Beacapp Hereなら従業員の所在地・滞在状況を可視化できる
Beacapp Hereは、ビーコンなどを活用し、オフィス内における従業員の所在地を可視化できるサービスです。「誰が・どこにいるのか」を確認できるほか、蓄積した位置情報データから、エリアごとの利用状況や滞在傾向などを分析できます。
工数管理による「何の業務に時間を使ったのか」というデータに、実際のオフィス利用状況を組み合わせることで、働き方をより多面的に捉えられます。ABWやフリーアドレスの運用状況の把握、オフィスレイアウトの見直しなど、データに基づいた職場環境の改善にも活用できます。

まとめ
工数管理とは、社員がどの業務にどれくらいの時間を費やしているのかを把握し、プロジェクトの採算管理や業務効率化、人員配置の最適化などに役立てる取り組みです。ExcelやGoogleスプレッドシートを使った工数管理表から始めることもできますが、社員数やプロジェクト数が増えた場合には、専用の工数管理ツールを活用することで入力・集計・分析を効率化できます。
一方、工数データだけでは、社員が「どこで、どのように働いているのか」という実態までは把握できません。工数に加えて実際のオフィス利用状況を可視化することで、働き方をより多面的に捉えられるようになります。Beacapp Hereでは、従業員の所在地やオフィスの利用状況を可視化できます。データを活用した働き方やオフィス環境の改善をご検討の際は、ぜひ資料請求・お問い合わせください。
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