リモートワークが定着し、多様な働き方が可能になった一方で、企業にとって新たな懸念となっているのが「情報漏洩」のリスクです。特にセキュリティ体制が十分でないまま業務が個人の空間に広がったことで、これまで想定していなかった経路からの情報流出が発生するようになっています。
本記事では、具体的な事例や対策を交えながら、リモートワーク時代に必要な情報漏洩対策について解説します。
リモートワークで情報漏洩が起こる背景とは?
リモートワーク環境では、オフィス勤務時とは異なるセキュリティリスクが生じやすくなります。物理的な管理の甘さやネットワーク環境の違い、ツールの使い方、人為的ミスなど、さまざまな要素が情報漏洩のきっかけになり得ます。
ここでは、その主な背景を4つの視点から整理してみましょう。

物理的管理が難しくなる在宅勤務環境
オフィスでは入退室管理や監視カメラの設置など、物理的セキュリティが担保されていますが、自宅ではそのような環境を再現することは困難です。例えば、自宅に同居家族がいる場合、業務中に第三者が画面をのぞき見する可能性もあり、機密情報の取り扱いに注意が必要です。また、印刷物の保管や廃棄ルールが曖昧になり、紙媒体からの漏洩リスクも無視できません。
在宅勤務の普及により、従来の“会社任せ”の管理体制では不十分になってきています。
私用端末・フリーWi-Fiなど、見落としがちなセキュリティリスク
社用端末ではなく、私物のパソコンやスマートフォンで業務を行うケースも少なくありません。これらの端末にはセキュリティソフトがインストールされていないことも多く、マルウェア感染や不正アクセスのリスクが高まります。
また、外出先での作業時にフリーWi-Fiを利用することもリスクの一因です。暗号化されていないネットワークでは、通信内容が第三者に盗み見られる可能性があり、メールやチャットの内容、添付ファイルが漏洩する恐れもあります。
クラウドツールの利便性の裏にある危険性
リモートワークでは、クラウドベースのファイル共有やコミュニケーションツールが不可欠です。しかし、その設定ミスや誤操作によって情報漏洩が発生するケースもあります。たとえば、社内限定で共有するつもりが「全体公開」設定のままリンクを送ってしまい、外部から誰でもアクセスできてしまう事態が実際に起きています。
便利なツールほど慎重な運用が求められ、アクセス権や通知設定、ログ管理といった細かい部分まで意識する必要があります。
「人」の不注意が最大のリスクになる
テクノロジーでカバーしきれない最大のリスク要因が「人」です。たとえば、メールの宛先間違いやチャットでの誤送信といった些細なミスが、大きな漏洩事故に発展することもあります。また、家族との共用パソコンで業務を行う、ID・パスワードを紙に書いて机に貼るなど、不注意な行動も少なくありません。
リモートワークでは個人の判断に任される部分が多く、教育や意識づけの継続が不可欠です。
実際に起きたリモートワーク下の情報漏洩事例
リモートワークにおける情報漏洩のリスクは、単なる「可能性」にとどまりません。むしろ、実際に企業や自治体などで発生した事例からも、その深刻さが明らかになっています。
このセクションでは、具体的な情報漏洩事例を4つ取り上げ、どのような原因で発生し、何が問題となったのかをひもといていきます。

クラウド共有ファイルの誤公開による顧客情報流出
ある企業では、社内向けのファイル共有ツールを使って資料を外部メンバーと共有する際、誤って「公開リンク」の設定を「誰でも閲覧可能」にしてしまったことから、顧客の個人情報が第三者に閲覧される事態が発生しました。このような設定ミスは、一見些細に見えても大きな信頼損失に繋がります。
クラウドサービスは利便性が高い一方で、アクセス権や通知設定などの「初期設定」に無意識の落とし穴があることを理解し、常に確認する意識が重要です。
カフェでの作業中にPC画面を覗き見される
在宅勤務の延長として、外出先で作業する人も増えていますが、カフェなどの公共空間では「のぞき見」による情報漏洩が問題となります。たとえば、画面に映った顧客名や価格表が隣席の来店者に見られてしまった、という事例もあります。
特に業務内容が画面にそのまま表示される営業職や人事関連の職種では、情報の取り扱いには細心の注意が必要です。プライバシーフィルターの使用や、作業環境の選定といった工夫が求められます。
家庭用PCで業務を行い、ウイルス感染で社内ネットワークに被害
ある社員が、自宅にある個人用PCでリモートワークを行っていた際、気づかないうちにマルウェアに感染しました。その個人用PCで社内ネットワークにアクセスしたタイミングでウイルスが拡散し、サーバー内の一部データが暗号化・使用不能になるインシデントが発生しました。
私用端末はセキュリティソフトが入っていない、OSが古いなどの理由でリスクが高く、業務端末としての利用には注意が必要です。社用PCの支給やVPN接続の義務化など、企業側の対策も欠かせません。
チャットツールの誤送信で社外に機密情報が漏れる
ある営業担当が、社内用チャットで資料を送る際に、送信先を間違えて取引先のチャットルームにファイルをアップロードしてしまったという事例があります。中には価格表や契約交渉中の社内メモなどが含まれており、先方との信頼関係に影響を与える結果となりました。
チャットやメールでは、相手が誰なのかを確認する一手間が、情報漏洩を防ぐ最後の砦となります。利便性を追い求めるあまり、確認作業を省略することのリスクは決して小さくありません。
リモートワークにおける情報漏洩対策の基本
リモートワークの普及に伴い、情報漏洩リスクは身近な脅威となっていますが、適切な対策を講じることで未然に防ぐことが可能です。
ここでは、組織として取り組むべき基本的な情報セキュリティ対策を4つの視点からご紹介します。

情報管理のルール整備と運用徹底
まず重要なのは、企業としての情報管理ルールを明確にし、それを全社員に周知・徹底することです。たとえば、「社外への持ち出し禁止データの定義」「自宅での印刷可否」「USBメモリ使用の制限」など、ルールの曖昧さがトラブルの引き金になることもあります。
また、定期的にチェックリストを使った自己点検や、内部監査を行うことで、形骸化せずに運用を継続できます。ルールはつくって終わりではなく、運用まで含めた仕組み作りが不可欠です。
ゼロトラストを前提としたセキュリティ体制の構築
近年注目されている「ゼロトラスト(Zero Trust)」とは、「すべてのアクセスを信用しない」ことを前提にセキュリティを設計する考え方です。たとえば、社内ネットワークにいるからといって自動的に信頼せず、ユーザーやデバイスごとに細かく認証・認可を行います。
リモートワークではネットワークの境界が曖昧になるため、ゼロトラスト型のセキュリティ体制が効果的です。アクセスログの取得や、利用端末のコンプライアンスチェックなどとあわせて導入する企業も増えています。
端末・ネットワーク・ツールの選定と統制
業務に使用する端末やネットワーク環境、クラウドツールの選定も重要です。理想的なのは、企業が管理する社用PCと専用ネットワーク(VPN)を使い、必要最低限のセキュアなツールに限定して業務を行う体制です。また、SaaSの利用状況を管理・統制する「シャドーIT対策」も欠かせません。
業務と無関係なツールのインストールや、個人アカウントでの業務利用はセキュリティホールとなるため、IT部門が使用状況を把握し、リスクを最小化する体制づくりが求められます。
社員教育と定期的なセキュリティ研修
どれだけシステムを整えても、最終的に情報を扱うのは「人」です。情報漏洩の多くがヒューマンエラーによって引き起こされていることを踏まえると、社員教育の重要性は明白です。
たとえば、年1回のセキュリティ研修に加え、実際の事故事例をもとにしたミニワークショップやeラーニングの導入など、継続的な取り組みが効果を発揮します。また、新入社員や中途入社者に対しても、リモート環境特有のリスクと対処法を初期教育で伝えることが欠かせません。
情報漏洩リスクを「見える化」するという新しいアプローチ
従来のセキュリティ対策は、「起こらないように守る」ことに重点が置かれてきました。しかしリモートワークの広がりにより、誰がどこで・どんな業務をしているのかが見えづらくなり、リスクの予兆を察知するのが難しくなっています。
そこで注目されているのが、情報漏洩リスクそのものを“見える化”するという新しいアプローチです。

どの端末が・いつ・どこで・何をしたかを可視化
見える化の第一歩は、「誰が」「いつ」「どこで」「どの端末を使って」「どのデータにアクセスしたのか」を把握することです。これにより、普段とは異なる行動や、業務時間外の不審な操作をすばやく発見できます。
リモートワークでは、社員の働く場所がオフィス、自宅、外出先と多様化するため、ログを収集しなければ実態を把握できません。行動ログや端末情報を定期的に確認する仕組みを取り入れることで、万が一の漏洩発生時にも迅速な原因特定が可能になります。
リスクの高い操作や行動を自動検知・アラート
「見える化」は、単なるモニタリングだけでなく、自動でリスクの高い行動を検知し、アラートを出すところまで進化しています。
たとえば、深夜の時間帯に大量のファイルをダウンロードしたり、普段アクセスしないデータに突然アクセスした場合、自動でシステムが警告を発することで、早期対応が可能になります。こうした仕組みは、担当者がすべての動きを目視で監視する必要をなくし、リスクが顕在化する前に“兆し”を察知する助けになります。
ハイブリッドワーク時代の新しいリスクマネジメント
リモートワークと出社が混在する「ハイブリッドワーク」では、働く環境や行動が多様化し、従来のセキュリティ対策だけではカバーしきれなくなっています。だからこそ、行動データやアクセスログの可視化は、リスク把握とマネジメントの両面で欠かせません。
たとえば、出社状況や位置情報をリアルタイムに把握できる「Beacapp Here」などのツールは、働き方の“見える化”を通じて、人的ミスやリスクの兆候を早期に察知する基盤づくりに貢献します。
まとめ
リモートワークの普及により、情報漏洩リスクはより身近な課題となりました。技術的な対策はもちろん、「人」や「働き方」への視点も欠かせません。
大切なのは、リスクを未然に察知できる環境づくりと、日々の意識づけです。安全で柔軟な働き方を実現するために、今こそ対策の見直しが必要といえるでしょう。
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