2023/08/28

【2024年4月施行!】医師の働き方改革を推進する上での課題と取り組み事例をご紹介

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2024年4月から法令が適用される「医師の働き方改革」ですが、人材不足から長時間労働が常態化しており、尚且つ様々な勤務体系で24時間の運営を求められる医療現場では推進のためにいくつかの課題を抱えています。

本記事では医師の働き方改革を推進する上での課題を解説するとともに、そんな課題に立ち向かう取り組み事例をご紹介します。

医師の働き方改革とは

医師の働き方改革は、長時間労働の改善と医師の健康確保を目的に行われる法改正のことです。2021年5月に公布された「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」を根拠として、2024年4月より施行されます。

日本の医療現場では医師の長時間労働が常態化しており、その勤務体制から休日の確保が難しいなど、現在の医療提供体制は医師の自己犠牲の上で成り立っているといっても過言ではありません。

長時間労働は慢性的な睡眠不足や疲労によりストレスが増加し、モチベーションや集中力の低下を招き、長期的には労働力の低下につながる恐れがあるとされています。こうした勤務体制が常態化していることも影響し、近年では医師の離職や休職も相次ぎ、医師不足を加速させています。また2025年には団塊世代が75歳をむかえ、今後、医療介護のニーズが最大化されることも予想されています。日々進歩する医療技術への対応、細やかな患者への対応などが求められ、医療のニーズが増加するとともに、現場の医師への負担も急増することが予想されます。

良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するためには、その軸となる医師の健康を確保する必要があります。このような背景から、医師法・医療法を改正し、「医師の働き方改革」に取り組むことになりました。

(医師の働き方改革について|厚生労働省医政局医事課医師等働き方改革推進室)

医師の働き方改革のポイント

 2024年4月から施行される医師の働き方改革のポイントは次の3つです。

医療 課題
  1. 時間外労働の上限規制
  2. 追加的健康確保措置の実施を義務化
  3. 医療機関勤務環境評価センターの設置

以下でそれぞれについて解説します。

 ⑴時間外労働の上限規制

時間外労働時間の上限は一般の業種では年720時間ですが、医師においては医療の公共性や、医療提供体制の確保の必要性等を考慮した上限設定がされています。上限設定は、医療機関の特性に伴い、3つの水準に分類した上でそれぞれ定められています。

◆ 医師の時間外労働の上限規制 ◆

医師の働き方改革_時間外労働時間上限

医師の時間外労働時間は原則として年960時間、月100時間未満に制限されますが、B水準とC水準に該当する医療機関では、上限が年1,860時間まで緩和され、原則の上限時間である年960時間より長い時間外労働が認められます。※B水準は2035年度末を目標に終了予定

⑵追加的健康確保措置の実施を義務化

追加的健康確保措置の実施は、月の上限時間を超えて働く医師がいる場合に義務化されます。

◆ 法改正後に義務化されること ◆

  1. 連続勤務時間を28時間までにする
  2. 勤務間インターバル(休息)は9時間確保する
  3. 代償休息を付与する

(休息中に、やむを得ない理由により労働に従事した場合は、当該労働時間に相当する時間の代償休息を事後的に付与する)

医師の働き方改革_追加的健康確保措置

A水準では努力義務に留まりますが、B水準・C水準では医師の休息確保のための取り組みが義務化されます。また他にも面接指導を行ったり、必要に応じて労働時間の短縮や宿直回数の削減を行ったりなど、就業上の措置を講じる必要があります。面接指導と就業上の措置はA水準を含む全ての医療機関で義務化されるので、該当する医師がいる場合、2024年4月から対応が必要です。

⑶医療機関勤務環境評価センターの設置

医療機関勤務環境評価センターは、現在公益社団法人日本医師会が指定され運営しています。同センター設置の主な業務内容は、病院や診療所などの医療機関に勤務する医師の労働時間短縮のための取組の状況等について評価を行うこと、またその取組について医療機関の管理者に対して必要な助言・指導を行うことです。医療機関に在籍する医師の勤務状況について、第三者的な視点での評価・助言・指導を行うことで、より医師の働き方改革を促進させることを目的としています。

(医療機関勤務環境評価センター|公益社団法人日本医師会)

また時間外労働の上限を1,860時間にするには、B水準・C水準の指定を受けなければならず、そのためには医師の労働時間短縮のための計画を作成し、医療機関勤務環境評価センターによる第三者評価が必要です。

医師の働き方改革に取り組む上での課題

時間外労働時間の管理や勤務実態に応じた勤務間インターバルの確保などが求められる医師の働き方改革に取り組むためには、医師の不規則な勤務実態を適正に把握する必要があります。しかし、そもそも医療機関は、緊急時への柔軟な対応や24時間体制が必要となるため、当直や宿直、呼出当番など一般企業と比べて勤務形態が複雑です。

そのため、医療業界で働き方改革を推進する上で、以下のような課題があると考えられています。

◆ 医師の働き方改革を進めるうえでの課題 ◆

  1.  労働時間の実態を把握しにくい
  2.  勤務形態が複雑で労務管理に手間がかかる
  3.  医師の人材不足が顕著になる
医療 課題

労働時間の実態を把握しにくい

改正された働き方改革関連法によって、次の方法で始業・終業時刻を確認することが事業主側に義務付けられており、これは医療機関にも該当します。

(出典:厚生労働省|労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

勤怠管理として上記(イ)にあたるタイムカードなどを導入している医療機関や、紙やExcelなどの日報で勤怠管理を行なったりしている医療機関が多く見られます。しかしこの場合、勤務時間の管理を医師の自己申告に委ねていることとなるため、客観的なデータがなく、労務担当者が実態を把握できないことも捉えることもできます。

人材が不足する中で診察や患者への説明、カルテの入力など、あらゆる業務に携わる医師は、忙しさのあまり、この勤怠入力を忘れてしまうということもあるでしょう。医師の働き方改革では、時間外労働の上限や連続勤務時間制限、勤務間インターバルの確保が求められており、医師の自己申告に頼った勤務実態管理のみでは、適正な管理を行うことが難しくなっていくでしょう。

勤怠管理や労務管理の重要性を医療従事者に認識してもらい、タイムカードなどの自身で行う勤怠登録の徹底を促すことはもちろんですが、それと同時に客観的な管理もあわせて行うことで、その適切さを保つことができるでしょう。

勤務形態が複雑で労務管理に手間がかかる

医療機関では、医師だけでなく看護師や介護士、一般職員など、様々な職性が混在しています。また働き方も、日勤や夜勤、宿直、3交代制など多種多様であり、勤務形態についても、フレックスタイム制や変形労働時間制など複数を管理することになります。そのため勤怠管理の方法の統一化を図ることが難しく、それぞれの働き方に応じて勤務データの管理をしなければならず、労務管理業務の負荷が重くなりがちです。

時間外労働の上限規制を守るためには、月の累積残業時間をリアルタイムに把握する必要がありますが、手書きやExcel、タイムカードで勤怠管理では集計作業に時間がかかるため、リアルタイムに把握することが困難です。リアルタイムで把握できなければ、「いつの間にか時間外労働の上限を超えてしまっていた」という事態に陥りかねず、医師の超過労働を防ぐことのできない原因となってしまいます。労務管理が不十分だった医療機関は、労務管理体制の見直しが必要でしょう。

医師の人材不足が顕著になる

医療業界では兼ねてより不足している人材分の労働を、他の医師や看護師の自己奉仕的な労働で補っていることが問題視されています。2024年4月以降、時間外労働の上限規制などが行われることでこういった自己奉仕的な労働の継続ができなくなるため、医療機関は以前と同じクオリティの医療を提供するために医療従事者の確保に奔走することとなるでしょう。しかし、少子高齢化や労働環境の劣悪さ、出産や育児などのライフイベントによるキャリア転向などの要因から、医療業界の人材不足は加速傾向にあり、新規の人材確保は困難を極めることが予想されます。

人材確保が難しい中で、医療機関は、シフト体制の見直しや人材の適正配置が求められます。そのためには「この時間に何人の勤務が必要なのか」「同じ時間帯に最低何人のスタッフが勤務しなければいけないのか」など、その適正値を把握することが必要です。

位置情報サービスを活用した取り組み事例

芳賀赤十字病院

栃木県にある芳賀赤十字病院では、医師の働き方改革を見据えて、屋内位置情報サービス「Beacapp Here Hospital」による勤務実態の把握を行っています。芳賀赤十字病院はB水準に該当するため、労働時間の上限規制に加えて、追加的健康確保措置の遵守も義務化されます。

「医師が何時に出勤して、何時に退勤したのか」という管理について、国からは勤怠管理システムの利用を推奨されたとのことですが、以前より使用していた出退勤システムでは医師の意思によって入力する(出退勤の際にICカードで打刻)ものだったため、当時の打刻率のを考えると、これだけで良いのかと不安を感じていたとのことです。

Beacapp Here Hospitalの活用では、病院から医師に支給したスマートフォンにBeacapp Here Hospitalアプリをダウンロードし、院内にはビーコンが設置されています。医師の持ち歩くスマートフォンが病院内に設置されたビーコンの電波を受信することで、自動で出退勤記録が取れるので、医師からの自己申告による勤怠報告の確認のために運用できるているとのことです。あくまでも医師の健康確保のために、医師に負担のない形で運用できていることが良い点とのことです。

★芳賀赤十字病院様の詳しい取り組み事例はこちら

 Beacapp Here Hospital活用事例_芳賀赤十字病院

勤務実態の把握に活用「Beacapp Here Hospital」

BeacappHere Hospital

Beacapp Here Hospitalは、ビーコンというBLE(Bluetooth Low Energy)を発信する端末とスマートフォンを連動させて、病院内における位置情報をリアルタイムで管理できるようにするサービスです。衛星電波を利用し、屋外での位置情報を測位するGPSとは異なり、病院内に設置されたビーコン電波を受信することでしか位置情報を取得できないため、病院以外での位置情報の検出は不可能です。したがって、1日の初めに検知された時間が出勤時間、最後に検知された時間が退勤時間と捉えることができます。

またこのビーコン端末は名刺サイズのとても小型のものなので、例えば病棟の入口、病室の入口、ナースステーション、医局の入口などのあらゆる場所に設置できます。(※設置は両面テープで貼り付けることで完了するため、大掛かりな工事は必要ありません。)ビーコンを設置した場所と、その場所で行われるであろう業務の特性を紐付けて管理することで、勤務中、自己研鑽の時間、などの割り出しを行うことも可能です。

★「Beacapp Here Hospital」について詳しくはこちら

 Beacapp Here医療向けカスタムサービス|Beacapp Here Hospital

まとめ

医師の働き方改革に取り組むためにはいくつかの課題があり、人力に頼る形だけでの解決策では労務管理などの面で新たな業務負担を増やしかねません。ICTツールの活用も視野に入れつつ、適切な医師の働き方改革を推し進めていきましょう。


▶︎株式会社ビーキャップ

https://jp.beacapp-here.com/corporate/

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