屋内位置情報サービスとは、オフィスやビル内、地下街など、屋内に特化した位置把握サービスのことをいいます。
GPSを使った位置情報サービスは、衛星を使った仕組みで屋外では高い精度で測位できますが、屋内では精度が下がることが知られています。
本記事では、GPS、Wi-Fi、ビーコン、RFID、超音波、地磁気、UWBの代表的な位置情報サービスの特徴や精度を紹介し、それらの特徴を知った上で、屋内位置情報サービスに適したビジネスでの活用法や成功事例について解説します。
屋内位置情報サービスの特徴と精度
屋内位置情報サービスは、屋内環境での人やモノの位置をリアルタイムに測位できる技術です。
本章では、屋内位置情報サービスの種類とその特徴、精度に焦点を当て、位置情報サービスとして日本で広く使われているGPS、Wi-Fi、ビーコン、RFID、超音波、地磁気、UWBの7つの特徴や具体的な使用範囲や使用例について詳しく解説します。
※ここで紹介する精度の範囲は一般的なものを指しています。製品や環境・条件によって異なるため、目安としてとらえましょう。
① GPS
GPSは衛星を利用した位置情報サービスで、地球を周回する複数の衛星からの電波を利用し位置情報を提供します。屋外での使用において高い精度で測位し、一般的には数〜十数mの範囲内で位置を特定できるとされています。
その一方で、地下や複雑な構造を持つビル内など、衛星の電波が届きにくい場所では、その精度は大幅に低下してしまうという注意点もあるのです。
GPSは屋内の位置情報サービスというよりも、長距離ドライバーや屋外での作業が多い職場など、屋外向けの位置情報サービスといえるでしょう。
② Wi-Fi
Wi-Fiを使用した屋内位置情報サービスは、Wi-Fiネットワークの基地局の信号を用いて測位します。このシステムでは、複数の基地局からの信号強度を分析し、デバイスの位置を割り出しているのです。
一般的に、Wi-Fiによる位置特定の精度は基地局の密度に大きく依存し、基地局が多く配置されている場合には、数mの範囲で位置を把握できます。しかし、基地局が少ない場合や、電波を遮る障害物がある場合には、精度が低下し屋内でも100m程度の誤差がでる可能性があるとされています。
Wi-Fiを用いた屋内位置情報サービスは、とくにビル内の商業施設や駅構内など、Wi-Fi基地局も密集している環境で、不特定多数の人の位置情報を把握したいときに効果を発揮するといえるでしょう。
③ ビーコン
ビーコンはBluetooth Low Energy(BLE)信号を用いた屋内位置情報サービスです。ビーコン端末は1秒に数回、半径約30m範囲内に信号を発信しており、アプリをインストールしたスマートフォンなどが、ビーコン端末の信号を受信し位置情報を取得します。
ビーコンの特徴は、ビーコンを設置した屋内での精度が高く、位置情報の精度は3〜5m前後とされています。一方で、ビーコンを設定した範囲内のみ位置情報を取得するため、プライバシーの保護という視点でも安心です。アプリ搭載のスマートフォンがビーコンのBLE信号を検知すると、独自のアルゴリズムによって利用者の正確な位置を判定できます。
オフィスに導入すれば、探している上司や部下がいる場所をすぐに把握できたり、入退室ログをデータとして活用し長時間労働を予防するという視点での勤怠管理サポートにも役立つでしょう。
④ RFID
RFID(Radio Frequency Identification)システムは、位置情報管理の精度が高く、安価で効率がよい位置情報といわれています。
この技術は、「パッシブタグ」と呼ばれる、電池を使用しないタグを利用します。発信用アンテナから、タグを持つ対象物に電波を送信すると、電波を受けた対象物が電波を電力に変えてレシーバーに情報を送信し、リアルタイムで位置を測定しているのです。
通常は1m前後の精度で位置情報を特定できるといわれています。安価に運用できるため、対象物が多い倉庫や製造工程での管理に活用されるケースが多いといえます。
⑤ 超音波
超音波を用いた位置情報サービスは、専用スピーカーから特定の情報を含む超音波が発信され、その超音波をスマートフォンのマイクが受信するという仕組みが一般的です。アプリを通じて、これらの信号から位置情報を読み取れます。人間の耳には聞こえない周波数であるため、人に不快感を与えません。
精度は非常に高く、一般的に数cm前後の精度を実現できるといわれていますが、壁などの障害物があると超音波が遮られ、精度が低下してしまうというデメリットもあります。
このような特徴から、障害物の少ない場所や吹き抜けのある建物で上下階の区別をつけて位置測位をしたい場合、また部屋ごとに分けて位置情報の取得をしたい場合に有効と言えるでしょう。
⑥ 地磁気
地磁気を利用した位置情報サービスは、私たちの周囲に存在する地球の自然な磁気である「地磁気」を活用した技術です。
このシステムの特徴は、利用者がスマートフォンなどのセンサーと専用アプリで、特別な設備を設置する必要がない点ですが、事前に対象エリアの地磁気を測定し得たデータを、データベース化しなければならない点に注意が必要です。
この技術の精度は高く、一部のシステムでは2〜3mの範囲で正確な位置情報を提供するといわれています。しかし、地磁気の磁場が弱いエリアや磁気に影響するものがある施設では、精度が低くなってしまいます。
地磁気を用いた位置情報サービスは、屋内の倉庫や作業現場など広いエリアの中でも精度を発揮するといわれているため、工場内で資材の場所や作業機械を探す、動力車の稼働状況を把握するなどの活用が可能です。しかし環境や条件によって精度が変動するのを理解しておくことが大切です。
⑦ UWB
UWB(Ultra-Wide Band)は、超広帯域の周波数を使用して位置を特定します。特徴は高精度な位置測定が可能な点で、屋内に設置した複数のアンテナを利用して、専用タグが付けられた物体の位置を正確に測定します。精度は15cm前後と高いのが特徴とされています。
障害物による影響が少ない点や、他の通信に対して低干渉である点、高いセキュリティーという特性も持っています。
UWBは1960年代に軍事利用のレーダー研究から始まりましたが、現在では、スマートフォン(iPhone)の紛失防止機能などに活用されています。広域範囲で位置情報を把握する必要がある場合に検討したいサービスといえるでしょう。
屋内位置情報サービスの活用方法
位置情報サービスは、地図などの屋外での位置情報サービスに留まらず、ショッピングモールでエリア内にいるお客様へのポップアップ広告に活用されたり、フリーアドレス化したオフィスに導入されるなど、屋内での位置情報サービスの利用が活発化しています。
屋内で人やモノの位置を把握できる屋内位置情報サービスの具体的な活用法について見ていきましょう。
人・モノの所在の把握が円滑になる
屋内位置情報サービスを導入するメリットは、オフィスや現場での人やモノの所在把握が円滑になり大きく効率化できることです。
フリーアドレスのオフィス
従業員の居場所をリアルタイムで確認できるため、人を探す手間と時間を減らせます。また、入退室ログで勤怠管理をサポートしたり、在宅勤務時の出退勤管理にも活用できるのが特徴です。
工場・倉庫・建設現場
現場で働く社員の位置を確認し、緊急時には迅速に対応できる安全対策としての活用が可能です。万が一の、事故やケガのときにも、すぐに位置を把握し対応ができます。
AEDや消火器などのモノ
緊急時に必要なモノを、表示させるのもおすすめの活用法です。社員がそれらの位置を知っていれば、BCP(事業継続計画)の一つになります。
広い倉庫内や建設現場では、屋内位置情報サービスを活用することで在庫の正確な所在の管理ができます。これにより、迅速で効率的な物流対応が可能になるでしょう。
屋内位置情報サービスの活用は、業務の効率化はもちろん、安全管理にも大きく貢献します。
ヒートマップで「人の集まり」を分析・可視化
屋内位置情報サービスで取得したデータを活用して「ヒートマップ」を生成すれば、人の動きや集まりを視覚的に把握できます。
イベント会場
どのエリアに人が多く集まっているかを把握し、来場者の滞在時間をデータとして取得可能となり、ヒートマップ化したデータとして活用することで、事業戦略や施策の効果検証に活用できるでしょう。
オフィス
フリーアドレス化したオフィスの在席状況(稼働状況)や、会議室の利用状況、人が集まる・集まりにくい場所を分析して、運用の見直し・最適化へとつなげられます。
このように、屋内位置情報サービスを活用してヒートマップによる分析を行えば、効率的な空間利用やコスト削減、事業戦略の策定に大きな助けとなります。
移動経路の把握で効率化・最適化
屋内位置情報サービスを利用して人やモノの移動経路を動線として把握することで、業務の効率化や最適化が実現できます。
病院・工場・病院・オフィスなど
医師や社員、作業員の動きを行動ログを介した行動データとして取得できることで、人手が不足しているエリアなどを客観的に分析するなどして、人員の適切な配置につなげることができます。
とくに工場や倉庫、病院などでは、作業員の動線を追跡することで、無駄な移動を減らしたり、作業の効率を高めるための施策に役立ち、効率的な動線への改善施策につなげられるでしょう。
イベント会場
人の流れを分析することで、人気のブースを客観的に把握したり、今後のブース配置や、緊急時の避難経路などの施策作成にも役立ちます。
屋内位置情報サービスで得られるデータは、さまざまな分野やシーンで役立ちます。単なる位置情報を知るという視点ではなく、ビジネスプロセスの見直しや改善に役立つ重要なツールといえるのです。
【成功事例】屋内位置情報サービスの活用例
ビーコンを活用したBeacapp Hereを使った屋内位置情報サービスの導入事例を紹介します。
フリーアドレスを目的に導入した事例
オフィスのフリーアドレスとは、固定の席を持たずに、出社した社員がそのときの好きな場所で仕事ができる体制を指します。
屋内位置情報サービスをフリーアドレスオフィスの導入に活用し、従業員が働きやすい環境づくりを実現した事例を紹介します。
導入して成功したポイント
業務の効率化
広いフロアや階が違うオフィスでは、誰がどこにいるか探すのに無駄な時間や労力を要しますが、いまいる場所が高い精度で分かるため、業務の効率化が図れるようになりました。
コミュニケーションの活性化
Beacapp Hereのアプリをダウンロードしたスマートフォンには、各社員のアイコンと名前が出るため、他部署の社員でも話かけやすくなるなど、コミュニケーションツールとしても活躍しています。
操作しないでも位置情報サービスを受けられる
ビーコンの特徴のひとつとして、ビーコンが設置されたエリアにアプリを持った人が入るだけで位置情報の取得がはじまるという点があげられます。ボタンを押したり、オンオフにするといった面倒な作業がないため、利用する社員に負担をかける必要がありません。
▼Beacapp Hereの導入成功事例はこちら▼
位置情報サービスで効率化とコミュニケーションの活発化を実現
労働時間の最適化を目指した事例
医師の出勤と退勤の時間を自動で把握し、勤務間のインターバルを正しく管理するのがとくに重要な課題になっている中、自己申告制ではなく客観的なデータとして入退室を把握できるBeacapp Hereを導入。
医師の働き方改革を準備する過程で、労働時間の上限規制に対応するためのシステムとして導入し成功した事例です。
導入して成功したポイント
働き方改革を促すツールとして
屋内位置情報サービスにより、医師が病院にいる時間を自動で記録できるようになります。医師の適切な労働環境を守り健康を保護するためのツールとして活躍しています。
屋内位置情報サービスは医療分野に限らず、目の届かない現場や支店、別フロア、深夜シフト時に、社員を見守るという視点で役立つでしょう。
▼Beacapp Hereの導入成功事例はこちら▼
働き方改革を成功に導くツールとして
Beacapp Hereで屋内位置情報サービスを手軽に導入
Beacapp Hereを利用した屋内位置情報サービスは、手軽さと柔軟な運用ができることが大きなメリットです。
設置には、大きさ8×5cm、重さわずか17g(500円玉2枚強)のビーコン端末を、希望するエリア、希望する個数を設置するだけで利用開始できます。大規模な工事は不要で、簡単に設置できるため、導入が容易です。
利用者はスマートフォンに専用アプリをインストールするだけでOK。スマートフォンを持ち込めない現場や、子どもが対象となるような環境でも、利用者がビーコン端末を持つことで同様のサービスを受けられるため、活用範囲は多岐に渡ります。
まずは他社の活用事例を参考にして自社への導入を検討してみましょう。
<ビーコンによる位置情報サービスBeacapp Hereの導入事例>
最適な屋内位置情報サービスを選ぶために
最適な屋内位置情報サービスを選ぶためには、サービスの特徴や機能を理解し、自社や施設のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。サービス選びのポイントとして、利用シーンの多様性や設置の容易さ、精度の高さなどを熟考し選ぶことが不可欠といえるでしょう。
ビーコンを使った位置情報サービスのBeacapp Hereは、その手軽さや多機能性はもちろん、位置情報把握の精度の高さが特徴です。屋内位置情報サービスを検討する場合は、一度は検討したいサービスのひとつといえるでしょう。
自社にあった屋内位置情報サービスを見つけ、オフィスや施設運営をより効率的で最適化していきましょう。
▶︎株式会社ビーキャップ
https://jp.beacapp-here.com/corporate/
▶︎Beacapp Here|ホームページ
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