一般企業では2019年から「働き方改革関連法」が適用され、各社今の働き方のニーズに合わせた働きやすい会社となるように努めています。コロナ禍でもその活躍が目をひいた医療従事者の働き方改革が2024年4月から推し進められます。
働き方改革においても医療DXの力は大きく影響します。
医療業界で進められる働き方改革と、そのサポートに利用できるデジタルツールについてご説明します!
医療現場の過酷な労働状況
新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに医療従事者の過酷な労働について取り上げられる機会が多くなりましたが、それより前からすでに、医療従事者の長時間労働などの過酷な労働状況は改善すべき課題とされていました。
少子化による労働人口の減少が問題視されていますが、それは医療業界も同様で、深刻な医師不足に悩まされています。反対に高齢化の影響で医療や介護のニーズは高まっています。医師一人当たりが抱える患者の数が増え、その対応のために長時間労働が生み出されてしまいます。
また医療機関を訪れる患者には「待ってください」ということができないことがほとんどです。容態が悪化した患者を前に、就業時間をすぎたので処置は明日にします。という医師や看護師はいないでしょう。診療時間外に診療が必要な患者、所定勤務時間内に対応しきれない長時間の手術、診療時間外の患者やその家族への説明、カルテなどの書類作りなど、医療従事者の業務は時間内の診察だけではありません。特に医師の抱える業務は多いので、業務移管を行うことが推奨されていますが、まだまだその整備は追いついていません。
医療業界は労働環境の整備が今求められる医療の実態に追いついておらず、医療従事者がとにかく頑張るという状況に陥っています。この状況を鑑みて医師ではない他のキャリアを目指すようになる人材も多く、離職率が高いのも医師不足に拍車をかける要因の一つとなっています。
2024年4月に向けて
2024年4月より、医師にも「働き方改革関連法」が順次施行されるようになります。これは一般企業ではすでに適用されているものですが、医師はその業務の特殊性を鑑みて猶予期間が設けられていました。
新型コロナウイルスの感染拡大の煽りを受けてひっ迫が叫ばれる医療の現場で、医師の働き方を改革するために医療業界はどのような動きを見せているのでしょうか。
働き方改革関連法とは
働き方改革関連法とは、正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。つまり「働き方改革を進めるための各種労働関連法の改正を進める法律」ということであり、施行に伴って労働基準法や労働安全衛生法などのさまざまな法律が改正されているのです。
そもそも政府が「働き方改革」を推進しているのは、日本が直面している課題を解決することが目的です。
<日本が直面している課題>
・少子高齢化による労働人口の現象
・長時間労働の慢性化
・正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差
・有給取得率の低迷
・育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化
・企業におけるダイバーシティの実現の必要性
これらの課題を解決するためには労働環境を取り巻く法律の改正が必要であり、改正後の法律がより「ワークライフバランス」を意識したものであることが重要でした。その法改正の指標となるように公布・施行されたのが「働き方改革関連法」なのです。この法律では主に、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の確実な取得、労働時間状況の客観的な把握などの改正が定められました。
働き方改革関連法は一般企業では2019年4月より順次施行されていますが、医師のような特殊な業務に従事している者については5年間の猶予期間が設けられました。そしてその5年後が2024年4月となります。来たる2024年に向けて、医療業界は準備をしている状況にあります。
医師の働き方改革のポイント
医師の働き方改革とは、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進する観点から、医師の健康確保と長時間労働の改善を行う一連の法改正」のことを指します。
現在の医療現場では、医療介護のニーズが増加している中での医師不足に悩まされています。医師不足の中で働く医師の長時間労働などの過酷な労働状況が問題となり、その過酷さから医師という職業を断念する人が増え、また医師不足と労働の過酷さを増進させるという負の連鎖が生み出されているのです。この負の連鎖を断ち切るため、働き方改革関連法は大きく3つのポイントを設けて定められました。(医師の働き方改革について|厚生労働省医政局医事課医師等働き方改革推進室)
<医師の働き方改革のポイント>
⑴時間外労働の上限規制
⑵追加的健康確保措置の実施
⑶医療機関勤務環境評価センターの設置
それぞれのポイントについて解説しましょう。
⑴時間外労働の上限規制
そもそも時間外労働の上限については、労働基準法の36協定にて「原則月45時間・年間360時間」と規定されているものの、医師は適用外とされていました。しかしこれが2024年4月から適用対象となります。
適用されると以下の通りとなります。
■36協定を締結した場合|原則として月45時間・年間360時間
■特別条項つきの36協定を締結した場合|月100時間・年間960時間
しかし現在の医療業界では時間外労働が年間1860時間を超える医療機関も多い中、このような規定が揉まられる可能性は極めて低いと考えられます。またもし守られた場合でも、医療現場の機能不全を引き起こす可能性が心配されます。これらの懸念点を考慮して、都道府県の指定を受けた「特別労務管理対象機関」であれば規制が緩和され、「月100時間・年間1,860時間」まで上限が引き上げられるようになっています。(医師労働時間短縮計画作成ガイドライン|厚生労働省|2022年4月)
なお改正法の施行後に時間外労働の上限規制に違反すると、一般企業と同様に罰金が科せられる恐れがあります。
⑵追加的健康確保措置の実施
医師の健康確保を確実なものにするため、新たな規制が定められました。
■連続勤務時間を28時間までにする
■勤務間インターバル(休息)は9時間確保する
■代償休息を付与する
(休息中に、やむを得ない理由により労働に従事した場合は、当該労働時間に相当する時間の代償休息を事後的に付与する)
これらの規定は、通常の医療機関では努力義務となりますが、特定労務管理対象機関においては法的義務とされています。また全ての医療機関に等しく定められているものは、月の上限を超えて勤務する医師に対しての面接指導です。面接の結果、必要に応じて労働時間の短縮や宿直の回数の減少などの必要な措置を講じることも求められています。
⑶医療機関勤務環境評価センターの設置
医療機関勤務環境評価センターは、現在公益社団法人日本医師会が指定され運営しています。同センター設置の主な業務内容は、病院や診療所などの医療機関に勤務する医師の労働時間短縮のための取組の状況等について評価を行うこと、またその取組について医療機関の管理者に対して必要な助言・指導を行うことです。
医療機関に在籍する医師の勤務状況について、第三者的な視点での評価・助言・指導を行うことで、より医師の働き方改革を促進させることを目的としています。
働き方改革に向けて取り組むべきこと
医師の働き方改革については、その業務の特殊性から改正法をそのまま施行することは難しいと考えられ、「医師の働き方に関する検討会」などでさまざまな議論が繰り広げられてきました。その中で取り組むべきことについても議論されています。
<取り組むべきこと>
①在院時間の把握
勤務実態を把握することで、改善点を見出すことができるようになります。医師がどれほどの時間を院内で過ごし、業務やまた自己研鑽に当たっているのか、適切に管理する必要があるでしょう。
勤怠管理としてタイムカードを導入している医療機関もありますが、忙しさのあまりあまりしっかり機能していないという実態もあります。勤怠管理や労務管理の重要性を医療従事者に認識してもらい、タイムカードなどの自身で行う勤怠登録の徹底を促すことはもちろんですが、それと同時に第三者的な客観的な管理もあわせて行うことで、その適切さを保つことができるでしょう。
②36協定の自己点検
36協定の定めなく、また36協定に定める時間を超えて時間外労働をしていないかを確認します。行っている業務の必要性や重要性を踏まえて、本当に時間外労働が必要なのか点検を行い、長時間労働とならないように業務の見直しを行います。
③産業保健の仕組みの活用
産業保健とは、産業医学を基礎として、働く人々の生きがいと労働の生産性の向上に寄与することを目的とした活動です。医師の良好な健康状態を維持・確保するために、医師一人ひとりの健康状態を確認して長時間労働者などに対して働きかけます。
④タスク・シフティング
タスク・シフティングとは、医師が担う業務を病院勤務の薬剤師や看護師などへ業務移管・共同化し、医師への業務集中を軽減しようとする働きかけのことです。
医師の業務は通常業務に加え、時間外の患者・家族への説明、緊急対応、長時間手術、夜間・休日対応など多岐にわたり、負担はどんどん増加しています。ICTの活用やタスク・シフティングで業務負担を軽減できるよう、業務内容の見直しが求められています。
⑤女性医師等に対する支援
女性医師の割合は増加し続けていますが、女性医師の多くは妊娠・出産・育児を機にキャリアの中断を余儀なくされることもあり、また一旦離職してしまうと復職を躊躇してしまうという現実があります。
ライフイベントとキャリアを両立できるよう、時短勤務などのさまざまな配慮、環境の整備が必要です。
在院時間の把握とBeacapp Here Hospital
医師の働き方改革に向けての取り組みは人の努力だけでは難しいところがあるでしょう。例えば「在院時間の把握」ですが、広い院内で特定の人物の勤務状況に常に目を光らせておくことは現実的ではなく、中でも医師は宿直などの特殊な勤務形態もあるため、特に勤怠管理がしづらくなることが想定されます。
また医師や医療従事者にタイムカードの登録や勤務時間の入力を徹底して行うように促したとしても、忙しさを極める中で忘れてしまうこともあるでしょう。そんな時にデジタルツールを使用して管理を並行して行うことで、適切な労務管理ができるようになるのです。
Beacapp Here Hospitalとは
Beacapp Here Hospitalとは、ビーコンというBLEを発信する端末とスマートフォンを連動させて、屋内における位置情報をリアルタイムで管理できるようにするサービスです。屋内の位置情報を取得することのメリットは、病院のような広い場所で人や機器を探す手間を削減することができるようになることです。
このサービス運用に使用するビーコンという端末は名刺サイズのとても小型のもので、例えば病棟の入口、病室の入口、ナースステーション、医局の入口などに設置します。設置は両面テープで貼り付けることで完了するため、大掛かりな工事は必要ありません。ビーコンの設置が完了したら、院内で持ち歩くスマートフォンにアプリをインストールしてログインします。これだけで病院施設内の位置情報を把握できるようになります。
*Beacapp Here Hospitalについて、詳しくはこちら*
Beacapp Here Hospital|医療機関向け屋内位位置情報サービスの紹介と導入効果の解説
位置情報×在院管理[行動ログの取得]
位置情報取得の仕組みは、スマートフォンがビーコンの発する電波を受信することにあります。スマートフォンは、自分の今いる位置から一番近い場所のビーコンを検知します。またこのビーコン一つひとつには「どこに設置してあるか」という情報が登録されているため、その情報をもとに位置情報を特定しているのです。つまり院内を移動して検知するビーコンが変われば、自然と位置情報も変更されます。
検知されたビーコン情報、すなわち位置情報は全てログとして記録されます。このログを追うことでそのスマートフォンを所持していた人物の行動を見直すことができるようになるのです。
1日の初めのログは病院に入った「病院の出入口」に設置したビーコンの検知ログです。また最後のログも「病院の出入口」に設置したビーコンの検知ログです。ここだけをみてもそのスマートフォンを所持する医師もしくは看護師が、1日の何時間を病院内で過ごしたのかを把握することができます。
ビーコンは院内の至る所に設置できます。したがって院内におけるほとんどの行動記録をログとして確認することができます。Beacapp Here Hospitalではこの行動ログを利用して、あらゆる角度から分析をし、働き方改革に貢献できるようなレポートを作成することができます。院内のどの場所にどれぐらいの時間滞在しているかを「見える化」することで、その人物のおおよその業務の割合を把握することができるようになるのです。
位置情報×コミュニケーション[Microsoft Teams連携機能]
病院では、患者の容態が急変した時や患者が緊急搬送されてきた時など、1分1秒を争う場面が多くみられます。的確で迅速な対応をするためにもスタッフ間の円滑なコミュニケーション、すなわち情報伝達が重要となります。
医療機関での情報伝達の方法としてPHSが多く普及しておりましたが、最近ではPHSに変わりスマートフォンの導入も目立ちます。PHSでは主に内線電話しかできず、情報の伝達は個人対個人の電話もしくはメールとなっておりました。スマートフォンの導入が進んだことによる大きなメリットは、「チャット」が使えるようになったことです。一度に複数の人物に情報共有ができるチャットは、迅速さを求められる医療業界の伝達方法として有効な手段として考えることができます。
Beacapp Here Hospitalでは、Microsoft社が運営するMicrosoft Teamsと連携しているため、位置情報の取得とチャットを合わせて運用することができます。
例えば緊急で人工呼吸器が必要な場面に立ち会ったとしましょう。
すぐそばに人工呼吸器はなく、また人工呼吸器などの大型の医療機器は共有して使用しているため、どこにあるかもわかりません。そんな時にBeacapp Here Hospitalで人工呼吸器が今どこにあるのかを検索します。(Beacapp Here Hospitalでは、ヒトだけでなく、モノの位置情報を取得することもできます。)人工呼吸器がどこにあるかわかったら、そばにいるスタッフを探し出し、チャットで連絡を取ります。
機能が連携している上でのメリットは、これらの動作が全てTeams画面上で完結することです。他のデバイスやツールを挟まないので、動作がスムーズで、迅速に連携を取ることができるようになります。
プライバシーへの配慮
位置情報サービスと聞いてまず心配されるのが「プライバシー」の問題です。確かにプライベートを含む全ての時間の位置情報を勤務先に管理されているとすると、あまり前向きな気持ちには慣れないかもしれません。その点Beacapp Here Hospitalでは、位置情報が取得できるのはビーコン検知ができる勤務先内のみ、ひいてはビーコンが設置されている範囲のみとなるため、プライバシーはしっかり守られる仕組みとなっています。
また勤務時間中においても病院内の居場所はわかるだけで、実際になにを行っていたかまでは把握することはありません。全ての行動を開示しないということに関しても、プライバシーに配慮されていると言えるでしょう。
※労務管理を目的として、プライバシーの侵害とならないよう配慮しながら行うのであれば、勤務時間中の社員の位置情報を特定することは適法とされています。(参考:ツールを使って社員の位置情報を取得するメリットと注意点)
まとめ
医療従事者の業務内容はとても特殊で、「就業時間をすぎたから終了」ということはできません。そして医師の不足と患者の増加という、需要と供給があっていない状況が長時間労働などの過酷な労働状況を生み出しています。
2024年には猶予期間が終了し、ついに医師にも働き方改革関連法が適用されます。業務内容の見直しやそれに伴った業務移管が求められています。院内での位置情報を把握することで、勤務時間を把握できることはもちろんですが、医療従事者が勤務時間内にどこにいることが多いのかを分析することができます。場所と業務内容を関連づけることで、先にも述べた業務内容の見直しや業務移管に役立てることもできるでしょう。
働き方改革の第1歩として「屋内位置情報の取得」と「Beacapp Here Hospital」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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